ラウンド2 準決勝終了後の夜 2~決勝戦前一騒動 1
レディはまだゾン教官と話しているのでお礼を言ったのは無意識にだろうか? 少しはレディに気に入られたかと安心してこの場を離れた。会場で食事をしていても話しかけてくる人はいない。パーラの姿もまだ見ていない。リオは帰れる雰囲気ではない会場の空気に当てられたのでトイレに向かった。一階は混んでいたので二階にあがる。リオはそこで悔し涙を流し続けているパーラに偶然出会ってしまった。彼に茶色い瞳でにらまれる。
「やっ……やあ、パーラ」
「ボクの無様な姿を中傷したいか? しろよ」
リオは人にされて嫌なことをする気はない。思うだけなら数えきれほどなのは、黙っていてもらいたい。
「少し前ならいざ知らず、今は絶対という約束は無理だけど、中傷する気は起きないなあ」
「なら俺が負け犬のくせにパーティに出ていることを馬鹿にするがいいさ」
今のパーラは情緒不安定のようである。リオはパーラが誰の意見だとしても悪い方へ考えてしまう危うさがあると感じた。
「あれは悪あがきとは違うのに……。家のメンツが潰れた? あの会心の一撃を受けてなお立ち上がった根性を俺の親兄弟には認めて欲しかった」
パーラはやり場のない悔しさをぶちまけていた(仮に誰もいなかったとしても、独り言のように言っていた可能性が高い)
「リオ、君にだけは今の俺の姿を見せたくなかった。残念だよ」
リオはパーラの感情的な姿に彼を能面だと思い込んでいたことを恥じる。リオはパーラに悔しさで眠れない日が続いたこともあると話すと、パーラがリオの才能を認めた上に血豆で痛痛しい手を見ても努力家の手じゃないかと褒めてくれた。パーラが心情を語る。ファーディとの闘いでやりたかったことをリオに伝えてくる。リオも気持ちはわかる。
「泣くといいよ。でも最後は前を見て」
「リオ……、ああ。そうしてみるよ」
パーラは、はにかんでリオを祝福した。
「大金星、おめでとう。次も勝ってくれよ」
「パーラ。うんっ、最善を尽くすよ」
リオはパーラと友人になれた気がすると感じる。そんなパーラにこのパーティについていろいろと聞く。
『パーティからどう抜けるの?』→マナーとエチケットを守って食事を楽しめばいつでも大丈夫。
『社交的なお誘いがあったら?』→興味がなければ次の機会にと断れば良い等を教わった。
それからパーラに君らと仲良くなりたかったんだと本音を聞いて、リオの「君が僕らを敵視していた感じ」に対する疑問は「他の級友の手前、組の変わり種にしてしまった君らに急な歩み寄りは不可能になってしまったから」と理由を話し、今までの謝罪をされる。パーラの損な性格に自分を重ね合わせたリオはパーラが本気で友達になりたいと思っているのを感じ取った。リオはパーラと一旦パーティ会場に戻って社交テクを見せてもらう。パーラのお陰でパーティを楽しめた。
パーティ終了後 自宅にて
リオは母親にうんざりする程、パーラとのパーティでの仲直り話を続けている。一方的に話し続けたことを謝罪して自室に帰った。リオはポケットの中に入れっぱなしだったお守りを見て残念な気持ちに襲われる(お守りをあのお兄ちゃんが忘れていたから)お守りを投げ捨てる八つ当たりで嫌な気分は減った。リオは無理矢理眠りにつく。
決勝戦の前 一騒動 1
この日、リオは寝過ごしを心配していて外の騒がしさに目が冴える。ドア越しで母親の鼻歌が聞こえたので焦らなくても大丈夫かと安心した。窓の外に貧民の子どもが物乞いしている姿がないのは朝である証なのだ。
「クシで髪の毛を整えるだけでいい?」
「あらまっ、変! 鏡を見てみなさい」
リオにとって容姿なんてものはそこまで言われるものではない。優先順位が低いのである。
(女の子じゃないんだから身だしなみって!?)
髪の逆立ちに驚いたが、リオは知識にある髪を寝かせる方法『ニット帽をかぶる』をいつもしているので今日もした。そんな中、母親の服をチェックして休みではないはずが、仕事に行く格好をしていないのに気付く。
もう残り少ないのですが、いろいろと見直そうかなと思っているので1ヶ月以上この作品の更新が止まってしまう予定。
その間は、他作品を中心に書きますよ。
読んでいただいている方には申し訳ないのですが、苦渋の決断でした……




