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格闘家の卵  作者: 霜三矢 夜新
リオが大会に出るまで
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ラウンド0 Ⅱ

 今日は時間が取れた

 リオはからかうように笑いかけ、手提げをしっかり握りなおした。

「いってきます。ボクは卒業したいから」

「一週間後地区のアマチュア大会がある」

 お父さんが後ろに何かを隠し持っている。何かを考えて(良いこと)いるとわかりやすい。

「勇気のないお前の変わりに申し込みしておいたぞ。嬉しいか? ん?」

 大会には相応の武器がいるのだ。木を削った槍では話にならない。息子の気持ちがわかっていない気がする。


「僕を笑いものにする気なの?」

「おいおい、まだ話は終わってないぞ」

 嫌がって半泣き状態のリオの頭をお父さんが乱暴にくしゃくしゃにする。

「俺が息子を裏切る? そんな訳ないだろう、これを見ても同じことがいえんのか?」

 鉄製の槍が目の前に突き出された。

「これ、まさかもらったの?」

「今の時代にそんな奴はいない。買ったんだ」

 

 お父さんが突きの動作をしてみせた。僕は武術スクールに入るのに大会優勝すると宣言する。

「僕が強いってわかればスクールもお金の件を含めて取りたがるよね。やってみるよ」

「よしっ、賢者のような頭の良さだ。俺の自慢の息子だって近くのやつに言ってやりたいぜ」

 お父さんの愛し方は乱暴だがリオには何でか優しさも伝わっていた。そのときばかりはブランド服なんて着ていなくても、貧民街の子であることも気にならなかった。


 しかし、一日経てばやはり気になる。国は国家的に誰もがチャンスを掴める自由の国だと自慢しているが、貧民街の住人を数に入れていないのだ。今でこそ国の八割を占める勝ち組のものは百五十年前にやってきた移民なのである。根本的な部分から平等ではない。勝ち組の子どもは両親に高額なお金で武術スクールに入学させてもらえばいい。勝ち組通りは中立通りの東側にある。西側の小さな区画だけが貧民街の者が使用許可してもらった場所だ。貧民の子は目前の近くて遠い勝ち組通りを見つめた。何か光の道でも見えないかと。でも現実には下を向くしかなかった。


 さて、リオが父親に大会受付をしてもらったアマチュア地区大会―――


 予約制の試合、結果は良いところなしだった。一回戦で敗北。相手は緑毛の少し大柄な子だった。武器を使わない格闘タイプの選手。スピードにかなり自信がありそうだった。リオには相手の動きが見えてはいた。長槍で受け流すはずだったが、槍の柄を折られてしまった時点で勝負あったようだ。気づいたときには控え室のベッドで夢物語は終わっていた。長槍もなかった。係の人の対応も冷たかった。


「槍!? どうせ欠陥品だろ? 錆びた槍ならやるが」

 勝ち組の子どもならまともに相手したんだろうなと思う。それでもリオは必死だった。

「あれはお父さんが店で買ってきたものです!」

「知らねえよ。誰かに捨てられたんだろ」

 リオはあきらめずに粘った。壊れた長槍でも修理すれば使えるからだ。しかし、係りの人に切り札を出された。


「大会役員を呼ぶぞ。彼らにブラックリストに入れてもらえばチャンスは完全になくなる」

 これが差別する連中のやり口だ。やつらは貧民街の者を黙らせる方法を熟知している。リオは自己嫌悪に陥っていた。お父さんにどう説明しよう? アマチュア大会で負けた上に長槍を捨てられたなんて話せない。前に進む道もふさがった期待した分、むなしさもつのる。夢を現実に? したくても力が……。

「おう、お前!」

 乱暴な男の子の声が届いた。勝ち組通りの方からである。リオは周囲を見渡すが、

「おまえしかいないだろ。耳が聞こえないか?」

 


 久しぶりの投稿です。


できるだけ早く更新したいのですが・・・

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