リオ1回戦後 ファーディの話 1
記者の多さに圧倒されてビックリする。
しかし、リオは嬉しさよりも恥ずかしさが勝った。照れのあまり、選手用通路まで逃げる。驚くことにそこでもマスコミ各記者達が警備員に止められていた。
「ここでの仕事は禁止だ。早く控え部屋にいけ!」
記者達が気にせず、矢継ぎ早に質問してくる。 <試合の感想><ファーディとの関係><選手として無名だった理由>等を聞かれた。
記者達が気にせず、矢継ぎ早に質問してくる。 <試合の感想><ファーディとの関係><選手として無名だった理由>等を聞かれた。リオが困っていると、エレガントな紳士についてくるように言われる。
「一度支度をし直したらプレスルームに」
リオはとにかく控え室に戻った。何だか家が恋しくなる。一息ついてお守りの置き忘れを思い出した。一大事と控え室全体を探しまわる。パニックになりかけた時、控え室のドアが開いた。そこにはマギーの姿が!
「僕のお守り! 何で君が持っているんだ!?」
試合後のアドレナリン分泌が異常だったので、一時的にその状況を忘れているのが原因。
マギーが悲しそうにお守りに呟いた。
「リオの代わりに祈ってやったんだが。盗人扱いか? 勝利の祈りは必要なかったみたいだ」
「ごめんよ。ただ、落ち着かなかったからさ」
マギーがリオの気持ちを察する。
「気にするな。それより数秒とは!」
数秒!? 何が数秒なんだろうか?
「デカックを数秒だぞ。逆なら予想ついたが」
対戦相手名がデカックだと判明した。
今、そいつだったのかと納得がいく。
「満足そうにしちゃってよ。次はプレスルームに呼ばれているんだろ。そのままでいいのか?」
リオに緊張が走った。
「でも公式の場に出て恥ずかしくないのはこの服くらいだよ? どうしよう」
「一番お気に入りの服が良かったとでも? なんにせよ服装より汗を流せよ」
マギーがわざとリオの服を嗅いで顔をしかめた。
「汗くさいぞ! さっさとキレイにしてこい」
リオを快く思っていない新聞社なら昨日のマグレの一戦は貧民街特有の体臭のせいだったなんて書くかもよ? ←実際書きかねない そうマギーにちゃかされてリオはシャワールームで汗を流した。シャワーを浴びながら観客の声援を思い出して良い気分に浸る。少しでも未来に光を感じれたかもしれない。近い将来、現実になるかもよ!
ラウンド1 5節
ファーディは立派な馬車の中で窓から高級マンションのドアマンに手を振っていた。彼との立ち話も有りかと考えたが、ファンにそんな行動は紛らわしいので見せられない。メッレンがこの勝ち組街に住んでいるのを知られたくないし、知っているのは一部の人だけなのだ。“現王”が着ていく服に迷うとは思えないので遅い理由を考えた。とても子持ちの男とは思えない。メッレンは短髪の銀毛も、ぴっちりした赤ジャケットも、全て彼を魅力的に見せた。ファーディ自身も※カジュアルなタキシードがよく似合った(※そんな服ないかもだが、そう表現するのがしっくり来る) メッレンが“決定戦一回戦突破”なんて当然の結果である。敗北していたら大ニュースだ。そんなことを思いながらファーディはパーティー用タキシードを改めて袖を通し直す。そうしながら少し昔の話の出来事を思い出し始めた。
二年前。
パトリ・オープンで優勝した貧民街っ子が最初にした事は、優勝賞金で中立街の高価な家を購入・一般人の食事を満足いくまで食べて、良い服を大量に買うことであった。どうも街の人が優しく接してくれている気はしたのだが、下心を感じて善意の誘いはなかった。貧民街十丁目生まれのせいでまだ犯罪者予備軍だと思われていた。失礼な話だが派手な髪の色(地毛にも関わらず)を中傷される始末である。結局は孤独だった。 一般人と同じくらいには扱って欲しかったが、貧民街育ちを理由に裏切られ続け、十五歳の時は誰だろうと敵と考えるようになる。そしてファーディが十六歳のある日、ゲルト・オープン決勝直前の控え室にメッレンが現れる。彼はファーディに気さくな声で話しかけてきた。
タイトルを少しだけ変えました。
こっちの方が何かしっくり来たから。。