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故国に捧ぐカタナ  作者: 数札霜月
第二章 忠
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第六話 再びレキハへ

 座禅を組み、忠継は意識を己の底の底、体の中心を思い描いたその底へと落としていく。

 揺れる床の感覚や周囲の喧騒を意識の外へと追いやり、ただただ自分の中にあるその感覚へと集中していく。

 体を流れるその感覚には、少々不本意なものもあるがだいぶ慣れてきた。魔力と異国の者達が呼ぶそれを肉体の隅々までいきわたらせるその感覚は、自身が素振りなどをする際に頭の中に思い浮かべる感覚と通じるものがあり、習得するのはさほど難しくもなかったのだ。

 だが今回行うのは、これまで行ってきたそれとは少し違う。以前妖魔退治を行っていた際に偶然起きてしまったその現象を、なんとか自力で再現できないかと考えていたのだ。


「フゥゥゥゥゥゥ」


 大きく息を吐き、忠継は自分のへその下、丹田のあたりに魔力の流れを集中させる。

 思い浮かべるのは、まばゆく輝く力が腹の中で渦巻く光景。

 そしてその感覚がひときわ強くなった、その瞬間、


「――!!」


 腹に貯めた魔力を一気に右手へと流し込み、それによって強化された右腕が握っていた二つの胡桃を粉々に握りつぶした。


「うわっ!?」


 近くに座っていたライナスが驚きの声を上げ、それに応じるように忠継が閉じていた眼を開く。


「お前、何をやっているのかと思えば……。っていうか、胡桃ってそんなに勢いよく割れるものだっけ……?」


「……いや、たぶん違うと思うぞ。……ふむ。やはり普通に魔力を流すより効果はあるようだな」


 隣でほかの騎士たちと札遊びに興じていたらしきライナスに適当な返事を返し、忠継は自身の今の試みの成果を手の中の胡桃を観察しながら考える。

 以前カマキリの妖魔と立ち会った際、一度足に回そうとした魔力を使う機会を逸し、そのあと追加の魔力とともに足に込めたら普段以上の力が出たことがあった。忠継が今回行ったのはその応用で、一度体内で魔力を集めてから、その魔力を瞬間的に手に込めて強化したのだ。

 どれほど効果があるものかは今しがた試してみるまでわからなかったが、思いのほか簡単に硬い胡桃が割れたことでその効果が一応実証できた。


「ったくお前は、こんな馬車の中でまで鍛錬かよ。せっかくやばい化け物との斬った張ったから解放されたんだ。少しは羽を伸ばしたらどうなん……、って、こういう言い方はゼインクル出身の奴の前で言うのは不味かったな。悪い、嬢ちゃん」


「え? 私ですか!? い、いえ。とんでもないです!!」


 ライナスの言葉に、忠継を挟んでその反対側でほかの侍女たちと並んで座っていたアネットがあわてたような声を上げる。

 十四という年齢のせいか、ほかの侍女たちと比べてもひときわ小柄なこの娘は声を上げたことで周囲の注目を集めてしまいすぐさま真っ赤になって縮こまってしまった。

 アネット・モランというこの少女は、ゼインクル直轄領でクロフォード家の当主であるエルヴィスが雇い入れた使用人のうちの一人だ。エルヴィスは彼女のほかにも十人ほどゼインクルで難民と化した人々を雇い入れており、ほかの者たちもここやここ以外のほかの馬車に分かれる形で乗り込んでいる。


 現在忠継たちは、以前ゼインクルに向かった時よりも多少多い人数でいくつかの馬車に分かれてのり、一路首都であるレキハを目指している最中だった。

 幸いなことに今回忠継はエルヴィスやエミリアの乗る馬車とは別れることができており、手の空いた騎士や使用人たちが乗る馬車に一緒に乗っている。荷物も積まれているうえ人数が人数なので少々手狭な印象があるが、故郷の籠を知る忠継にとってはむしろ広いとすら感じるほどだった。なによりあれこれと知識を絞られないのが素晴らしい。


「そう言えば嬢ちゃん、いきなりの首都行きだったけど嬢ちゃんやほかの奴らは大丈夫だったのか? あんなになっちまったとはいえ、一応故郷を離れるわけだろう?」


「……ええ。でも私も、ほかの人たちももう身寄りがいない人ばかりですし、未練がないとは言いませんけど、あそこにいてもどうしようもありませんから。私自身このお屋敷に拾っていただかなければどうなっていたかわかりませんし」


 俯き、弱々しく笑うアネットの言葉に、忠継たちの乗る馬車の中がしばし静寂に包まれる。

 そのことにアネットが気付き、あわてて顔を上げるのと、その彼女の前に忠継の手が差し出されるのはほとんど同時のことだった。

 唐突に目の前に差し出された手を見て目を丸くするアネットに、忠継は手の中の胡桃を見せて静かに告げる。


「……食え」


「え……?」


「割ったはいいが別に食べたといういわけではない」


「あ、……はい。」


 忠継の言葉に何を思ったのかはわからなかったが、アネットは少しの間忠継の手を見つめた後、おずおずと手を伸ばして胡桃のみを一つ手に取った。

 なぜか皆が見つめる中、アネットは手に取った胡桃を口に運ぶ。

 沈んでいた少女の表情が、わずかだが綻んだのが周囲にも見て取れた。


「数はまだある。どのみち鍛錬に使った後食べるものが必要なのでな。言ってくれれば――、なんだライナス。そのニヤけた締まりのない表情は?」


「いやいや、お前もここ来た時と比べて、ずいぶん変わったなと思っただけですよ」


「……どういう意味だ?」


「いい意味だよお前の場合。ここに来たばっかのころのお前っていや、そりゃあ近寄りがたかったんだぜ。とげとげしいっていうか、警戒心がにじみ出てるっていうか。間違ってもこんな風に誰かにやさしく接してる姿なんて想像できなかったもん」


「そう、だろうか……」


 口ではそう言いながらも、忠継にはライナスの言うことに少しばかり、否、かなりの割合で思い当たる節があった。

 というかそもそもの話、忠継はこの家の者たちと暮らすようになってからも、しばらくこの国の人々を化け物か何かのように見ていたのだ。相手の厚意をある程度推察していながらも、忠継はどこか人外の妖怪と接するような思いで彼らに接していた。


「あの、そういえば忠継さんって、やっぱりこの国の方ではないんですか? 噂ではエルヴィス様の実験でどこかの国からいきなり現れたとか、実はもといた場所は別の国じゃなくて魔界だとか、人によってはエルヴィス様がお作りになった改造人間だと噂する方もいたんですが……」


「待て、二つ目も気にはなるが、なんだその改造人間というのは!?」


「ん? タダツグの国にはそういうおとぎ話はないのか? 人間に直接魔方陣を刻んでありえない魔術を使うトンデモ理論だとか、人間の体に動物の死骸をつなぎ合わせて作られた化け物のお伽話とか、結構こっちじゃ数も多いんだが」


「そんな化け物を見るような目で俺は見られていたのか!?」


「大丈夫だって、ただの噂だ噂。確かに人間離れした膂力や脚力は持ってるし、魔方陣も使わずに魔力操って妖魔ぶった斬ってるけど……、お前本当に人間だよな?」


「不安になるな、自分の考えに自信を持て!!」


「いや、でも実際お前って結構人間やめてるしな……。普通に暮らしててもやることなすこと滅茶苦茶だし。ここ最近なんて、エルヴィス様が大人しかったせいか起きる騒動の大半はお前が原因だったしな」


「……むぅ」


 それを言われれば反論のしようもない。しいて言うなら国の違いによる避けようのない衝突だったともいえるが、それでも迷惑をかけたことは言い逃れのできない事実だ。

 相手のことを同じ人と認め、それでもなおこれだけの衝突が生まれるのだから、国の違いというものはなかなか侮れない。


「あの、私は以前のタダツグさんについてあまりよく知らないんですけど、そんなに変わられたんですか?」


「ああ変わったよ。そうだな……。たとえばこいつ、前はあんまり肉とか牛乳とか飲み食いしなかったんだよな。タダツグの国では食わないらしくてさ」


「正直今でも抵抗がないわけではないがな」


 それでも、飢えている人間を目の当たりにした後で、食べ物だと出された代物を無下にできるほど忠継も無神経ではない。特に目の前にいる少女など、まさに餓えに倒れたことのある身なのだ。


「ほんとタダツグは変わったよ。今のタダツグなんて昔とは真逆に、出されたものは何だろうと食べるからな」


「ふん。もはや破れかぶれだ。毒を食らわば皿までだ」


「まあ正直、普通食わないもんを出して食った時はさすがに驚いたけどな」


「今聞き捨てならないことをぬかしたなっ!?」


 唐突にライナスが漏らした言葉に、思わず忠継は怒鳴り声を上げる。実のところ疑わしい料理には、いやというほど心当たりがあったのだ。


「どれだ、どれのことだっ!? 三日前のあれか? それともその前の晩の黒い汁か!?」


「いやぁ、十日前の夜に食わせたのもそうだし、今までゲテモノ食わせたことなんて七回くらいあるぜ? 最近ネタ切れになってきたんだけど、そういやアネットちゃんなんかいいもんない?」


「え、えっと……」


「言わんでいいわっ!! ……ライナス貴様、次の立ち合いの時は覚えていろ。三階の屋根まで飛ばしてやるからなっ!!」


「そう怒るなよタダツグ。大丈夫だって。腹下すようなものなんて二回しか出してないから」


「おのれ貴様星まで飛ばしてくれるぅっ!!」


 ムキになって掴み掛る忠継の反応に対し、掴み掛られたライナスは周りの男たちと共にゲラゲラと笑いだす。否、男たちだけではない。同じ馬車に乗っていた侍女たちも、一人オロオロするアネットを除いて皆面白がってクスクス笑っていた。


「くぅ、くそっ!! いったい貴様ら何を食わせたというんだ!!」


「え? あれ、それ聞いちゃう? 聞かない方が間違いなく幸せだよ?」


「そんな身の毛もよだつようなものを俺に食わせたのか!?」


 恐ろしい話だった。

 いや、そもそもの話、忠継にとっては獣の肉を食らうという時点で身の毛もよだつような話なので、実のところ何を食わされていても抱く感情に大差はないのかもしれない。だがそれでも、『この国では普通に食われているもの』と『この国の者ですら食わないもの』では受ける衝撃の強さが違う。


「まあでもそもそもの話、お前に食わせたのって調理場の奴らが飢饉対策の料理として作った試作品なんだけどな」


「……そうなのか?」


「ああ。エルヴィス様の、というかその先代からの知り合いにマレット辺境伯っていう人がいてな。その人がまあ、なんというか、エルヴィス様とは違う方向性の同類なんだ」


「同類、ですか……」


 ライナスの言い回しに、横で聞いていたアネットが複雑そうな顔をする。忠継としてもその気持ちはわからなくはない。エルヴィスの同類など、どんな性格をしているか容易に想像がつくからだ。


「で、そのマレット辺境伯なんだが、領主としての責務とは別に料理にご執心の貴族でな、その趣味が高じて飢饉のときの非常食の製法を研究してたんだ」


「非常食、ですか?」


「ああ。飢饉のときに人が死ぬ理由ってのは、餓死よりもどちらかというと食中毒の方が死因としては多い。飢えて弱った体で消化できないものを食って腹を下して死に至るって形でな」


「……確かに。私もお腹が空きすぎて手近な草や木の皮なんかを食べようとしたことがありました……」


 ライナスの言葉に、アネットが切実な経験とともにそう同意する。元々彼女は食うに困っていたところをエミリアたちに拾われた身だ。彼女自身飢えた人間の心理は嫌というほど知っている。


「ま、まあそういうわけなんだが、このマレット辺境伯の研究した調理法なら、普通なら消化できないようなものでも時間をかければ食えるようになる。今回のゼインクルの件で必要になるかもしれないってエルヴィス様がマレット辺境伯に連絡を取ってな。その試作品を忠継に試食してもらったってわけだ」


「なるほどな。……それで、なぜ俺だったのだ?」


「え? そんなの俺たちが食うの嫌で、お前ならうまいこと言えば食いそうだったからに決まってんじゃん」


「やはり貴様ら覚悟しておけ……」


 忠継が顔の筋肉を痙攣させながらそうつぶやくと、同乗する騎士の間から『おお怖い』などと呟く声が聞こえてくる。なにかあるごとに、忠継とクロフォード家の騎士たちが真っ向からぶつかり合う『訓練』は、最近のクロフォード家ではすでにお決まりになり始めている。毎回忠継が騎士たちに取り押さえられて終わるこの訓練だが、実は騎士たちの間でも『あれをやってたから化け物相手でもうまく立ち回れた』と大変に“不評”だった。成果を実感しても騎士たちが好感を覚えないことからもこの訓練の内容がうかがえる。


「まあ俺たちをブッ飛ばすのも悪いけどよ。首都についたらお前にはまずやってもらわなきゃならないことがあるんだよ」


「む? なんだ、やらなくてはならないこととは?」


「馬だよ馬。お前馬乗れないだろう。確かに走らせたら馬と勝負できるくらい早いみたいだけど、馬の利点ってそれだけじゃないし、レキハに行ったらそれなりに余裕もできるだろうから今のうちに覚えておけ」


「馬術、か。確かにそちらについては少し興味はあるな」


 実は忠継は馬に乗ることができない。旗本八万“騎”などと呼ばれ、馬に乗れてしかるべき家柄に生まれながら、忠継はこれまでの人生の中でついぞ馬に乗る機会に恵まれなかった。この国に来る過程で馬よりも早い足を手に入れたには手に入れたのだが、それでも持久力ではさすがに馬に劣るし、何より忠継自身颯爽と馬に跨る姿に憧れるものがある。


「一応聞いておくけど、お前の国では魔術だけじゃなく、馬術まで禁じられてるってわけじゃないよな?」


「それこそまさか、だ。まあ、こちらの馬術と祖国の魔術はだいぶ違うようだが、それならそれでいいだろう。この国の馬術を習得し、祖国への土産とするのも悪くない」


「祖国への、土産……」


 わずかに高揚した気分で忠継がそう話していると、不意に隣に座るアネットが小さくタダツグの言葉を反芻する。その声を聞きつけ、気になって忠継が視線を向けると、こちらを向いていたアネットと目が合い、アネットは驚いたように目をそらした。


「どうしたというのだ? ああ、また胡桃でも割るか?」


「い、いえ。そういうわけではなく……。あの、やっぱりタダツグさんはご自分の国に帰ってしまうのですか?」


「む? まあ、当然そのつもりなのだが、何か問題があるのか?」


「い、いえ。別にそういうわけではないのですが……」


 そういってアネットが何やら言いよどんでいると、反対方向からライナスが『馬鹿だなぁお前は』と少々心外な言葉とともに横やりを入れてくる。


「っていうか嬢ちゃんには誰も言ってなかったっけ? こいつが自分の国に帰ろうとしてるって話」


「いえ、その、噂に位は聞いていたんですが……」


「実際に確認してみるまで信じられなかった。信じたくなかったってところか」


「どういうことだ? 信じたくなかったというのは?」


「この朴念仁……。そんなの決まってんだろ。この嬢ちゃんがおまえのこと――」


「そッ、そういうわけじゃないんですっ!!」


 ライナスが何かを言いかけた途端、顔の色を真っ赤に変貌させたアネットが前後の馬車の者たちまで目を向けるような叫びをあげる。一瞬遅れてアネット自身自分が出した声大きさに気づくと、またも縮こまって消えそうな小声でどうにか話し始めた。


「そういう訳じゃないんです……。タダツグさんには、その、何度も助けていただいて、いろいろお世話にもなって、それに……」


「それに?」


「あの時、お屋敷に拾っていただいて、タダツグさんにお礼を言いに行ったあの時、タダツグさんはこう言ってくれたんです。『その言葉に救われる』って」


 言われ、忠継自身もようやく思い出す。あれは最初に街に妖魔が襲来する騒ぎがあった数日後、訪ねてきて礼の言葉を述べるアネットに、確かに忠継はそんな言葉を返したのだ。彼女の言葉に自分の行いが正しかったのだと告げられているような気がして、気づけば忠継はそんな言葉を口にしていた。


「あの言葉があったから、あの時の言葉が、心からのものだとわかったから、私は“ただ救われただけの人間”にならずに済んだ気がするんです。自分にも、些細でもできたことがあったように思えたから、これからも、できることがあるのではないかと思ったから」


「……そう、なのか」


 『自分と同じだ』と、忠継はアネットを見ながらそう思う。かつて己に己の価値を見つけさせてくれたこの少女も、自分と同じように忠継という存在によって自分の価値を見いだせたのだ。

 だとしたら今の彼女には、以前よりも世界が輝いて見えているのかもしれない。


「ただのわがままだっていうのは、わかってるんです。でも、やっぱりこれだけたくさんのものをもらった方に、何もお返しできないまま帰られてしまうのは……」


「……っていうかさタダツグ、お前の中には、帰らねぇって選択肢はないのか?」


「帰らぬという選択肢?」


 言葉を紡げなくなったアネットに代わり、ライナスがそれまで思いもよらなかった質問をぶつけてくる。いや、思いもしていなかったのは忠継だけだったのかもしれない。周囲の者たちは、明らかに今のこの質問に対する忠継の答えに耳を澄ませている。


「本来ならこういうことは言うべきじゃないのかもしれないけどさ、できれば俺たちとしてはお前にはこっちに残って欲しいってのが正直なところなんだよ。お前のおかげで妖魔騒ぎへの対応はかなり楽になってたし、それ以外でもお前の存在はこの家にとって大きな利益になる。

 それに、なんだかんだで迷惑をかけられつつも、お前って人間が帰ってしまうことを寂しく思っている人間もいる」


「それは、だが、俺は……」


 唐突に帰らないという選択肢を提示され、忠継の内心は大きな混乱に包まれる。

 考えてみれば、この国にはこれまで忠継が願ってやまなかったものが多くあるのだ。家督を継ぐことができず、士官もできず、染みついた武士としての生き方を捨てねばならなかったはずの自分が、今こうして望んだあり方を貫く形でここにいる。

 己の生き方で救ったものがいて、己を救ってくれたものがいて、共に誰かを救った戦友がいる。

 思えばここ以上に、忠継の望みにかなう場所はほかにない。


「だが、それでも俺にとって祖国は……」


「まあ、お前の場合まず国の位置がわからないから、それが分かるまでは帰りようがないんだが。でも、考えておいてほしいんだよ。帰らねぇって選択肢を。

 お前がもしこっちで暮らすと決めたなら、きっと俺たちは皆それを歓迎する」


「帰らないという、選択」


 目をつむり、祖国に残した家族や、友人知人のことを考える。

 それに続くように、この国で出会った異人たちの顔が次々に頭に思い浮かぶ。

 首都まで続く長い道程。しかしその道のりにかかる時間ですら、忠継の中に答えを見出すには足りそうになかった。


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