日常と潜む怯え
一話完結としておきながら、全く一話完結になっていないので、この話から連載中にします。区切りがついたら完結ボタンを押します。
混乱させてすみません。
今日も少女は駆け寄ってきた。
煙草をくしゃりと噛み締め、気だるげな気持ちで少女を迎える。
それと同時に部下が走り去っていく。一度あいつには教育的指導を施さないとならないだろう。
最近は少女と話すことを嫌ではないと気付いてきたところだ。
少女はまだ若く自分と比べるとやはり無知だが、楽しそうに自分の身の周りの出来事を話すその姿に苛立ちは覚えない。
「マーティはいつも街に何しに来てるんだ?」
「巡回だ。街の治安を守るのも俺たちの仕事だからな」
何を真面目に答えてるんだと思いつつ、風に揺られる少女の短い髪を見る。
納得したのか、あまり興味なさそうに「ふーん」と呟いた。
「じゃあ悪人と戦ったりする?」
少女は脇を締め、拳を前に付き出す仕草をする。
「まあな」
そう答えると少女は目が輝いた。
少女は若い女性が好むものに興味を抱かない。どうも少女は年頃の少女らしからぬ粗忽な雰囲気を纏っている。
それは故意なのか無意識なのかわからないが、あまり少女には似つかわしくない。
短く髪を切り、粗暴な態度をとろうと、その可憐な容姿は隠せてはいない。そして少女から匂い立つ花の香りも、一層少女を少女らしくさせている。
少女と宛もなく歩く。巡回の道は決まっているが、マティアスにとってあってないようなものだ。
不穏な空気は隠されていようとも周りに伝わるし、それを嗅ぎ付ける感覚も備わっている。
マティアスの方もポツリポツリと話し始めた、そのときだった。
「あっ、バル兄だ」
少女が出した声で背筋に緊張が走る。
咄嗟に少女がみた方を向こうとして思い留まる。
見たくない。
「俺は行く」
少女の返事を待たずに、背を向けて歩き出した。
後ろの方で少女が何か言っているが無視をした。
結局逃げるようにそこを去った。
歩きながら咥えた煙草の煙を一気に肺に入れる。
こんな態度をとった自分を少女は変に思っているだろう。
自分自身もこのままではいけないのはわかっている。
しかし、あの蒼い目で見つめられるのはまだ怖かった。