もう一つの出会いと興味
「出会いと再会」の少女視点。
出会いは最悪。しかもこっちが全面的に悪い。
でも初めて見たとき、その黒い瞳に吸い込まれそうになった。
家族や親族は様々な色を持つが黒を持つ人間はいなかった。
この街に来てからも暖色系の色を持つ人間ばかりで、純粋な黒を持つ人間を見たのは初めてだった。
だからそれと対時したとき、柄にもなく緊張した。
バル兄が追い付いてきて訳を聞かれた。
「ぶつかったの。あいつは?」
バル兄の目は蒼くて綺麗だなあ、と思いながらあの男について聞く。
するとバル兄は歯切れの悪い話し方で言う。
「ああ……あいつは王立騎士団の漆黒の副団長サマだよ」
副団長という単語に驚く。それと同時にあの男の纏う鋭い空気の理由を理解した。
国を守護する精鋭たちの集団だ。その副団長ともなれば恐ろしく強いのだろう。
考え込んでいたせいで「紅蓮の副団長もいるんだよ」と言ったバル兄の声は聞こえなかった。
漆黒、その言葉ほどあの男に似合う形容詞はないだろう。吸い込まれそうな瞳に艶やかな髪、団服も黒で塗り固められている。まるで、黒を体言化したような男だった。
「名前は?」
「え? どっち」
「黒い人」
バル兄は微妙な顔をする。
「マティアス・ガイザー」
マティアス・ガイザー、口の中で呟く。そうしてみるととてもしっくりきた。
「オルガ、どうしたの」
オルガ、と名前で呼ばれるときは大抵バル兄が真剣なときだ。何故そんな風にいうのかわからず、首を傾げた。
「バル兄こそどうしたの?」
すると困ったように眉を下げた。よくわからなかったので、気にしないでおく。
あの黒い目を歪めて笑ったりするのだろうか、あの髪はどんな触り心地だろうか。
聞いたら触らせてくれるかな? 気分を害してたみたいだし、いきなりは無理そう。笑った顔も見てみたいな。
次に会ったら話しかけてみよう、そう思うと何だかわくわくした気持ちになった。
隣で未だに変な顔をしているバル兄を放って走り出した。
「ちょっ……ま、オルガちゃん!」
焦るバル兄の声を置き去りにしてさっさと家に帰った。