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第3話:『新刊・もひもひランジェルィーと猫』

「むふふ…」


コンビニを崩壊させたシンさんは、別のコンビニで購入した『もひもひランデブー完全版』を熟読している(歩きながら)


「…まったく、シンさぁん!これからどうする気ですか?」


…ダメだ。完全にエロ本に入ってる

だけどホントどうしよ…肝心のネコの特徴が分からないんじゃ…




「…あれ?君は…」


そこには依頼人の少女が立っていた


「…あのぉ…」


よほど人見知りが激しいのか、少女は恐る恐る話かけてきた


「ちょうどよかった!ゴメンね〜。ネコちゃんの特徴とか聞いてなかったみたいで…」


「ぁ…はいっ!」


どうやらこのコもその事で来たみたいだ


「…で、ネコの特徴は?」


「寝冷え!」






……はい?


「うわっ!」


なんだ?いきなり何かがボクの頭を踏んでいきやがった!


「…ニャァ〜ぉふん」




……ネコ?ぃや語尾おかしくね?


「寝冷え!」

だからこのコさっきから何言ってんの?


「ニャア!…ぉふん」


無理してぉふんて付けんなバカネコ

…あー、逃げちゃったよ変なネコ


「ぅう…寝冷え…どぉして逃げるのぉ…?」


…そうか!今のネコが捜してたネコなのか!



もしかして『寝冷え』って…名前?


「『寝冷え』は自由になりたいのさ」


変態探偵が泣きじゃくる少女の肩をポンポンしてる。ああ、『もひもひランデブー完全版』読み終わったのね


「うぅ…寝冷えぇ…」


……まだ8歳の子供だもん。大事なペットがいなくなれば、そりゃ悲しいよ……このコの為にも寝冷えを捜さなきゃ!


「世の中諦めが肝心やで?お嬢ちゃん」


黙れ関西人くずれ


「ちょっとシンさんっ!そろそろ仕事して下さいよ!」


「誰もが貴様の思い通りになると思ったら大間違いだぞハゲがッ!」


ダメだこの人。完全にやる気失ってるよ。だって目線が書店に並んだ『もひもひランジェルィー』に釘付けだもん。

なんだランジェルィーって


「ランジェルィー」


口に出しちゃったよ!


「お願ぃ…寝冷えを捕まえて下さぃ…」


ホラ〜、このコ泣きそうじゃん


「…金ならいくらでも払ってやるからよぉ」


出たーーーーッ!『世の中カネさえあればなんでも出来る』っていう思考のイヤな金持ちキャラ!


「御意」


失せろクソエロス。また札束拾ってんじゃねーよ。



「よし!行こうかトオル君!いたいけな少女のために!!」


札束を内ポケットに詰め込みながら吐くセリフじゃねーよ


「お兄ちゃんたち…お願いします」


ペコっとお辞儀をして去っていく少女

かわいいなぁ



「む!トオルっ!いたぞ…『ネコジャラシのような単純な罠にたやすく引っ掛かる下等生物』が」


普通にネコって言えよ。てかネコジャラシって言った時点で既にネコって言葉発してんじゃねーか


「ニャァァぉふん」


だからその語尾はなんだ!


「貴様ぁ!誰に向かって『ぉふん』などと言う下品な言葉を吐いてやがるッ!」


なんか通じてるし


「ちょ…シンさんっ!」


あーあ、ネコに本気になっちゃったよ。ナイフ投げすぎでしょ。

てかあのネコスゲェ!全部かわしたよっ!


「ぶっ殺してやるぁぁあぁぁッ!」


うわ…ネコにとびかかっちゃったよ変態探偵


「またれよ!」



…?



「…え…」


誰の声だろ?


「話を聞いてくれぬか?」







寝冷え喋ったーーーーーーーーーーーーッ!


「なんだ?」


普通に対応してるシンさんがスゲェ!


「うむ…拙者、名を『寝冷え』と申す者。今まではサクラ殿のもとで幸せに暮らしておった…」


サクラ…あのコの事か


「しかし、拙者は追われる身、サクラ殿に拾われ3時間…これ以上迷惑をかけることは出来ぬ」


3時間とか早っ!たいして思い出ねーじゃん


「ま、待ってよ!君が誰に追われてるかは知らないけど…一番悲しむのはサクラちゃんだよ!?」


「…それでも…拙者は……ぉふん」


もう語尾にはツッコみませんよ


「…そうか…わかった。あのコにはそう伝えておくぜ」


…シンさん。

これで…いいのかな…あのコの気持ちを考えると胸が痛むな…


「……かたじけニャイぽむ」


急にネコっぽくなった上に語尾が異様な変化をみせた事はこの際気にしません


「……寝冷え…」



寝冷えは哀愁と猫臭を巻き散らし去って行きました




「お兄ちゃんっ!」


あ…サクラちゃんだ


「寝冷えは?寝冷えはどうしたの…?」


「それが……」


「俺が話そう」


シンさん…こんなツラい役目を自分から…




「寝冷えはな…」


……


「雨宮さんがキトクな上によそで作った愛人との不倫が本妻にバレてしまったので行きますぉふん…だそうだ」


・・・・・



は?



雨宮さんて誰!?てか寝冷え修羅場確実じゃねぇか!!


「そっかー。雨宮さんが絡んでるなら仕方ないかー」


雨宮さん何者よ


「そーゆーこった」


「シンさん…違…もごっ」


シンさんが口を塞ぐ


「もがもが」

「いいんだよこれで」



…そうか…サクラちゃんを悲しませないためにあんな嘘を…


あの嘘で納得したサクラちゃんの脳味噌が心配です




その後、実は町一番の大富豪の一人娘だったサクラちゃんに、たんまり報酬を貰ったシンさんは早速『もひもひランジェルィー』を買いに書店に出かけた(小走りで)


ちなみに、たんまり貰った報酬はボクの手には全くわたってきませんでした。

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