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タイトル未定2026/04/29 00:12

「今日は何か収穫があったか?」


ヘイゼル――ランクSの冒険者にして、ガルンダ王国の大貴族の息子。彼はライケン関所で最高級のホテルの応接室のソファに座っていた。左隣には妹のティナが静かに寄り添い、目の前にはアトスとクリスティンが立っている。


「何も掴めませんでした、ヘイゼル様!この周辺の冒険者はランクの低い者ばかりで、Bランク以上は数えるほどしかおりません。聞き込みと調査の結果、彼らはあなたの弟君と同じ道を歩んでいないことが判明しております」


「では、雇われた暗殺者の仕業ということか?どのみち、わざわざ私たちに関わろうとする者などいないはずだろう?」


ティナが意見を述べた。近隣の王国にまで及ぶ父の権威を、彼女は揺るぎなく信じていた。誰もが一族に逆らうことを恐れ、罵倒はおろか、名誉を傷つけようとする者すら存在しなかった。


弟の検死結果は、ヘイゼルにとって八方塞がりだった――剣術の達人による殺害であること、使われた武器は細く鋭い小型の剣であること。そのような武器の使い手を探し出すのは、至難の業だった。


「クリスティン、あの女と交戦したお前の見解はどうだ?」


「なかなかの手練れでした。私のミスリルの篭手が、いとも簡単に破壊されましたから」


ヘイゼルは足を組みながら、今日遭遇した謎の若い女のことを思案した。ガルンダ王国とその周辺で名の知れたランクAのファイターであるクリスティンと渡り合えるとは、只者ではない。


「あの二人の女はファイターだったではないか?魔法使いの娘の方は魔力があまりにも弱すぎる。我らが弟の死とは関係があるまい、兄上」


ヘイゼルは頷いた。彼自身もティナと同じ考えだったため、三人の女たちのことはさして気に留めなかった。


「よし、クリスティン!アトロス!二人は我らが手練れの者たちを動かし、この件を徹底的に解明せよ。弟を殺めた者を必ずや裁きの場に引き出してみせる」


………………………………………


「ファリス、本当のことを聞かせてよ!馬車とかそういう移動手段のサービスって、ここには全くないの?」


ワーンはぼやきながら、歩きながら持参した水筒を傾けて水を飲んだ。ホクトはタイ人の女の愚痴っぽい言葉に、うんざりした視線を向けた。マリアは列の後方でのんびりと歩いていた。


「そういうものはありますよ」


「えっ!じゃあ、なんで馬車で移動しないの!」


「料金がかなり高いんです。それに、私たちの手持ちは数十銀貨ほどしか残っていませんから、交通費には到底足りません」


ワーンは大きなため息をついた。馬車を利用するほどのお金が自分にはないという現実を受け入れるしかなかった。マリアにまたお金を借りようとすれば、以前の借金すら一銭も返せていないのだから、みっともなさが過ぎる。


「歩いた方がいいじゃないですか!節約になるし、景色も楽しめますよ」


マリアがそう言うと、ワーンは彼女を理解の目で見つめた。マリアはきっと裕福な育ちで、馬車代を払う余裕もあるはずだ。それでも彼女は徒歩を選び、約一週間かけて目的地まで一緒に歩いてくれるというのだ。


「すみません、マリアさんはどんなことが得意なんですか?」


ずっと気になっていたファリスが、意を決して尋ねた。もしマリアが冒険者の試験に合格して同じパーティに加わるなら、それぞれの職業の適性に合わせて役割分担できるよう、情報を把握しておく必要があった。


「あなたと同じ、魔法使いよ」


「えっ!本当ですか?どんな種類の魔法ですか?」


マリアは少し顔を上げ、左手の人差し指を唇に当てた。まるで答えを考えているようだ。ファリスは瞬きも忘れて彼女を見つめた。これはそれほど難しい質問ではないはずだ。魔法使いはそれぞれ幼い頃から、自分の適性に合った魔法を修練するものだから。


「時間魔法と属性攻撃魔法……といったところかしら」


「二種類も使えるんですか?」


「別に珍しいことでもないでしょ!あなただって白魔法使いだけど、属性攻撃魔法も使えるじゃない。習いたいなら教えてあげるわよ!」


ファリスも複数の魔法を扱える使い手がいることは知っていた。しかしそういった者たちは、どれも中途半端になりがちだと聞いていた。魔法学校で先生たちが口を揃えて言っていたのは、自分が得意とし、好きな魔法を一つ選び、将来に向けて着実に伸ばしなさい、ということだった。


「この世界に来てから、攻撃魔法を全然見てないわよ!マリアさん、実際に見せてちょうだい!」


ワーンが複数の魔法を使えると言う女性へと駆け寄った。マリアは右手の人差し指を目の前に立て、その指先に小さな火の玉が生まれた。それはゆっくりと膨らんでボールほどの大きさになり、周囲にきらきらと輝く光を放った。


「ファイアボール」


マリアが指先を弾くと、火の玉が銃弾のような速さで射出された。道端の茂みへと吸い込まれ、轟音と共に爆発した。炎が炸裂し、黒い煙がもうもうと立ち上った。


「うわあああ」


ワーンはマリアの魔法の威力に目を見張った。ホクトが急いで走り寄って確認すると、深さ一メートルの穴ができていた。直径五メートルの口縁には炎が燃え広がり、草と木々を焼いていた。


「まるで大砲を食らったみたい。本当に恐ろしい……」


ホクトは攻撃魔法を目の当たりにして興奮を隠せなかった。ワーンも傍らに立ち、マリアの攻撃魔法が生み出した穴を興味深そうに観察した。


「ただの火魔法よ」


マリアは歩み寄ってきた。その一方でファリスは、先ほどの魔法使いを瞬きもせず立ったまま見つめていた。両手が震え、彼女は懸命に袖の中に手を隠した。額に大粒の汗が浮かんでいた。


「先に進みましょう」


マリアが先頭に立ち、四人は歩みを再開した。カテイア王国のエール市を目指して。

三日間、森の中を旅した末に、一行は道の途中にある小さな村を見つけた。百軒ほどの家が建ち並ぶ、こぢんまりとした村だった。


「わあ、まるでおとぎ話みたい!」


ホクトは村の景観を目にして目を輝かせた。子どもの頃に読んだ絵本の挿絵そっくりだった。家々は適度な間隔で建ち並び、平屋もあれば二階建てもある。レンガと漆喰で造られ、柱は木材で、扉も窓も木製だ。屋根瓦もまた木で作られていた。


間隔を置いて大きな木々が立ち、地面には緑の草と色とりどりの花が咲き乱れていた。石畳の道は整然と敷かれている。ワーンは深々と息を吸い込んだ。この村のことがすっかり気に入ってしまった。美しく、涼やかで、住み心地がよさそうだった。


「宿屋もあるみたい!今夜はここに泊まりましょう!」


マリアがそう言いながら村へと足を踏み入れた。農作業から帰ってきた村人たちとすれ違い、親しみを込めた挨拶が交わされた。この村の人々の主な生業は農業であるようだった。


間もなく一行は、大きな木製の看板が掛かった一軒の前に立った。そこが宿屋だと示す看板だ。二階建ての建物で、扉は良質な木で作られた両開きの蝶番式だった。


折り戸を押して中に入ると、四組の木製の机と椅子が並んでいた。食事や飲み物のサービスもあるようだった。


奥には小さなカウンターがあり、磨き上げられた木材がつやつやと美しく光っている。中年の女性がカウンターの後ろに立っており、壁には絵画と魔法のランプが整然と飾られていた。


「旅の方々、お部屋はいくつご入用ですか?」


笑顔で女将が尋ねた。詳細を話し合った末、マリアは一人部屋を希望した。ワーン、ファリス、ホクトは三人部屋を一室頼んだ。支払いを済ませて鍵を受け取り、二階の部屋へ上がろうとすると、女将が声をかけてきた。


「冒険者の方々のようですね!こちらのダンジョンに潜りにいらしたのかしら?」


「ダンジョンって何ですか?」


「ダンジョンとは、自然界の生き物のようなもの。多種多様な魔物が棲みついた場所で、ダンジョンそのものの意志によって生み出されます。内部には宝物が溢れ、人間を引き寄せるのです。ダンジョンは魔物や罠を生み出し、侵入者の命を奪おうとします。誰かが命を落とせば、ダンジョンがその命を糧として吸収します。魔物は倒すとアイテムや素材に変わり、売ることができます。だから冒険者たちはダンジョンに潜るのですが、危険も相当なものですよ」


ワーンは「宝物」という言葉を耳にした瞬間、目を輝かせた。彼女のギャング的な本能が騒ぎ出し、すかさず詳細を尋ねた。


「つい先日、村人がこの近くに自然発生したダンジョンを発見しましてね。王国中に知れ渡って、大勢の冒険者が調査に来ているのですが、数層しか進めないようなんです。この辺りの冒険者はあまりランクが高くなくて、中の魔物はかなり手強い部類ですから」


「実際に目で見てみたい!」


ホクトは興味津々で、ダンジョンという生き物が一体どんな姿をしているのか、自分の目で確かめたくてたまらなかった。


「明日みんなで見に行きましょう。今夜はそれぞれ休んで、体力を蓄えておいて。明日の朝八時に宿屋の前に集合しましょう」


全員がマリアの提案に同意した。二階へ上がり、それぞれの部屋に散っていった。入浴などの身支度を済ませて休息を取り、翌朝早くダンジョンへ向かうための英気を養った。一体どんな場所なのか、自分たちの目で確かめる日が待ち遠しかった。

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