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第4話 グラフト伯爵

 王宮での参戦表明から翌日。

 逃げるように王宮を飛び出したキラーはグラフト伯爵領に向かっていた。


「ふぅ~、危ねぇ危ねぇ あのまま王宮にいたら兄貴達に殺されるところだった」

「貴方って案外馬鹿なのね」

「そこはずる賢いってとこじゃないか?」

「いいえ馬鹿ですわ そもそも今頃参戦表明したってノイン様やレオ様の様な親衛隊のいない貴方は無防備も同然ですわよ」


 今まで王子たちがキラーの参戦権を知らなかったのは奇跡に近い。

 キラーの読みでは継承戦の激化に伴い、キラーの状況を把握できるものがいないのを見計らって嘘をついていた。


「酷い、そんなことわかってるのに馬鹿だなんて……うぅ~シクシク」


 わかりやすい嘘泣きでキャロルの気を引こうとする。


「じゃあ、なんで今更参戦表明なんてしたの」

「そりゃもちろん、アンタを俺の女にする為」

「まだ、諦めていませんでしたのね……」

「兄貴から乗りかえる気になるまでが目標だからな、そういう約束だし」

「はぁー、まあいいですわ ところでこっちはわたくしの家ですけど何をしに行くんですの?」

「着けばわかる」

「?」


 歩くこと数時間、王都から西へ離れたグラフト領へ着いたキラーはグラフト伯爵の住まう屋敷に訪れていた。


「おーい」

「ちょっと!もう少し優しくノックしなさい!」

「おーい」


 ドンドンと激しくドアを叩くキラーにキャロルは必死に抑える。霊体の身であるキャロルにはキラーに触れることは叶わず、ただすり抜けるだけだ。


「いないのか?」

「当然ですわ!この時間、お父様は仕事の最中ですわよ!」

「そうか、なら帰るか」

「お待ちなさい!」

「なに?」

「貴方!ここへ何しに来たんですの!?」


 あっさり帰ろうとするキラー。

 ここへ来た目的すらも捨ててどこに行こうと言うのだ。


「何って、手組もうと思ってきたんだよ」

「じゃあ、尚更……!」

「あのな、キャロルちゃん」


 キャロルの言葉を遮ってキラーは話し出す。


「王宮の祝いの場で腫物扱いされている人間が仕事を任されるわけないだろ」

「っ!?」

「おそらく兄貴に取り入れられた貴族の仕業だとは思うが、今のグラフト伯爵家は没落に一直線だ ここで手を組めないならそれまでの話だ」

「ま、待ちなさい!」


 立ち去ろうとしたキラーを呼び止める。

 振り返ると頭を下げたキャロルが震える声でお願いする。


「どうか、わたくしの家族を救ってください」


 ようやく事態を呑み込めたのか態度が少し弱々しくなる。


「いいよ 元々その為に来たんだし」

「じゃあ!」

「そうだね、もう出てきても良いんじゃないか?」

「へ?」

「グラフト伯爵さんよ」


 ギィと屋敷の扉が開き、中から使用人と思わしき人物が6名と死にそうな顔をしている伯爵本人が出て来た。


「!? お、お父様!」


 死にそうな父の顔を見たキャロルは急いで父の元へ駆けつけるが、父の瞳にはキャロルは映らず、キラーただ1人だけが映し出される。


「そんじゃ、中へ入れてくれるか」

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