第3話 王位継承戦
一週間後。
第二王子ユハネス・ノインの新たな婚約者としてシルビア子爵の娘、エレナ・シルビアが迎えられた今日。
王宮には王族貴族が集められ、祝いのムードに包まれていた。
当然その中にはグラフト伯爵家も招かれていたが、腫物を扱うかのように周囲から距離を取られている。
「貴族ってのは大変そうだな」
国王の席の右隣りには三つの席が設けられており、一番端っこに座るキラーは上から貴族たちを見下す。
国王の反対側の席には3人の妃が、右側には国王の子供たちの席がある。
元々は13人もいた兄弟は王位継承戦の中で10人が死に、今生き残っているのは第一王子のユハネス・レオ、第二王子のユハネス・ノイン。そして王位継承戦に参加していない第三王子ユハネス・キラーだけだ。
「ところで、新たな婚約者ができた感想は?」
「……貴方って性格悪いのね」
「そうか?俺に乗り換える気になったか聞いてんだけどな」
隣に立つキャロルは怒っているような顔でエレナとノインを見つめている。
それもそのはず、つい1ヶ月前まで恋人だった相手がポットでの相手に乗り換えた上に自身の冤罪を信じてくれなかったともなれば悲しみや怒りで憎悪が凄いことになるだろう。
それに加えて、キャロルの家は周囲から腫物扱いを受けている。
「でも俺に憑りついたって事は兄貴がアンタに未練が無きゃオッケーってことだろ?」
「そうですわね わたくしに未練が無ければ、ですけれどね」
どこか悲し気に、けれど自信がある様に口にする。
「さて、そろそろだな」
キラーは立ち上がると父親である国王の元へ近づき、耳打ちをする。
「それは本当か」
「ああ大マジだ」
「そうか、では今ここで皆に伝えても良いのだな?」
「むしろそれが望ってやつだよ、親父」
「わかった 皆の者!よく聞いてくれ!」
玉座から立ち上がり、国王が声を上げて来客たちに呼びかける。
騒がしかった会場も静まり返り、皆が王の言葉に耳を貸す。
「これより、王位継承戦における新たな連絡を伝える」
『っ!?』
王位継承戦。既に始まっているこの戦いに全員の注目が集まっている。
無論、この戦いを勝ち抜けるのは1人。その1人が次期国王となり国をまとめ上げる。
だからこそ、兄弟同士で殺し合い。今残っている2人の王子に王族貴族は取り入れてもらおうと必死になっているのだ。
「これより、新たな参加者を発表する」
新たな参加者。その言葉が表す人物はただ1人。
「我が息子、第三王子ユハネス・キラーが参戦することとなった 以後の王位継承戦はユハネス・レオ、ユハネス・ノイン、ユハネス・キラーの三名で行うものとする」
「お、お待ちください!父上!?」
突然のキラーの参戦に第二王子ノインが異論を唱える。
「キラーは元々中立であることを条件に参加を辞退した身です!今更参戦など!!」
キラーは王位継承戦に参加しなかった理由は王位事態に興味が無かったからだ。
そして、継承戦に参加しないかわりに中立の立場を約束させたキラーは今の今まで参戦表明を出していなかった。
「わかっておる」
「でしたら何故!!」
「キラーの参加辞退や中立声明を私自身は一度もキラー本人から耳にしていない」
「ど、どういうことですか!ただの冗談にしては度が過ぎていますよ!!」
ノインが怒るのも無理はない。今の今まで参加すらしていなかった奴が終盤になっていきなり参戦表明なんてすれば誰でも怒る。
だが、王自身は本当に参加の辞退や中立声明をキラー自身から聞いていないのだ。
「参加の辞退はキラー本人が言っていた物だと言うのは前々から聞いていた」
「でしたら!」
「だが、それは私自身に言ったものではなく、継承戦に参加した我が子達に言ったものだ」
「何を言って……」
「キラーの中立的立場表明。それは各王子や王女たちのみに知らされた情報だ、そして私自身それを把握していた だが、キラー自らが参加を辞退する声明を私は直接聞いていない」
「キラー本人からの辞退要請が父上に届いていないから無効……って訳ですか」
第一王子レオがボソッと口から呟く。
そう。キラー自身は参加していた王子や王女たちに参加の辞退と引き換えに中立要請を申し出ていたが、その実辞退に関する事は何もしていない。
つまり、キラーは参戦もしていなければ事態もしていないまま嘘1つで継承戦を勝ち残っていたのだ。
「フハハハハ!やられたな」
「詰めが甘いんだよ、兄貴達は」
「そういう事だ、よってキラーの参戦を私は認める」
国王直々の許可が下りた。
これに逆らえるものは次期国王以外いないだろう。




