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〈日差しあり凍蝶候補蘇る 涙次〉



【ⅰ】


じろさん、久し振りに「魔界壊滅プロジェクト」會議室に出頭。担当官・仲本堯佳に面會してゐた。仲本と腹心の佐々圀守の事については、前シリーズ第200話めの「主な登場人物総ざらへ」を見て頂ければ、大體分かると思ふ。

仲本「カンテラ一味、魔界に次ぐ第三勢力が最近現れたさうだな」-じろさん「流石早耳だね。『はぐれ魔導士』集團だ。今日はその事で」-仲本「心配しなくてもいゝ。その為の豫算は既に申請してある」-じろ「叛仲本派の動きはだうだ?」-仲「相變はらずだ。今回の事でも、あんた方を色々邪魔して來るか、とは思ふ」-じろ「ま、あんた逹の庇護があるからな。恩には着てゐる」



【ⅱ】


白虎はぼやく。「があお」(僕最近寢テバカリダヨ。かんサン、僕ニ出來ル仕事、ナイノ?)-彼はふつふつと湧く猛獸の血を抑へ切れない。カンテラ(丁度いゝ、お前向けの要件がある。それを手傳つて貰はうと考へてたところだ)-「があお」(ソレツテ暴レラレルノ?)-(場合に依つてはな)-「があお」(待チドホシイナア。かんサント* 合力出來ルヤウニナッタノハイゝケレド、余リ出番ガナインダモノ)-(それだけお前の力を大事にしてゐるつて事だよ)



* 當該シリーズ第73話參照。



【ⅲ】


カンテラ「杵、空いてるか?」-杵塚「バイクですか?」-「さうだ。『はぐれ魔導士』(前回參照)の事務所迄送つてくれ」

ヒョースンGV125Xロードスター。二人はタンデムし、その後を追つて白虎が走つた。白虎は持ち前のスピードと持久力で、バイクに付いて來た。「はぐれ魔導士」逹のオフィスは、神田のと或るマンションの一室だ。そこ目掛けて3者爆走した。



※※※※


〈心臟がどくんどくんと我が生を証拠立てたり冬が始まる 平手みき〉



【ⅳ】


「カンテラ以下2名と銀毛の虎が、只今暴走中。目的地は神田と思はれます」-兼ねてから彼ら一味の動きを注視してゐた、* 叛仲本派の某警視正、連絡を受けて、部下逹にゴーサインを出した。「カンテラは**『特定動物飼養保管許可』を取得してゐない。その件で引つ張るんだ!」-パトカーがカンテラ・杵塚・白虎に追ひ付いた。

パトカーをぶつ千切るなんて野暮な眞似は、杵塚はしなかつた。道路脇にパトカー、杵塚のヒョースンは停車。だが、担当の警官逹にカンテラは剣をちらつかせ、「俺逹は仲本さんの許可を得てゐる。謂はゞ『殺しの許可証』を持つてゐるのと同様だ。邪魔立てすると、斬るぞ!」-パトカーの警官逹も生命は惜しい。その儘すごすごと引き下がつた。



* 當該シリーズ第113話參照。

** 虎・ライオン・熊・象・鰐など大型獸を飼ふ為の許可。



【ⅴ】


カンテラ「杵、きみは近くのカプセルホテルにインしてくれ。仕事が終はつたら、呼ぶから」-「ラジャー」。


事務所に人影はなかつた。カンテラ、事務所のドアの前にどつかりと坐す。白虎はカンテラの膝に頭を載せて寢そべり、「はぐれ魔導士」の一員が帰つて來るのを待つた。マンションの警備員がやつて來たが、かの髙名な剣豪・カンテラと、大きな虎、と云ふコンビに威圧され、手出しはしなかつた。



【ⅵ】


やがて夜- カンテラは瞑目し、眠つてゐるやうに見えた。白虎が頭を擡げる。「があお」(誰カ來タ)-(この部屋に入りさうになつたら、嚼み殺せ)-カンテラ、また目を瞑る。差し料、傳・鉄燦を掻き抱いて- 白虎も寢た振りをした。


ピッピッピッ。その「誰か」が部屋のドア(オートロック)を開けた! 白虎やにはに起き上がり、「ぐろゝゝゝ」。驚いた「誰か」は逃げ出さうとしたが、時既に遅し。白虎は彼の頸に、牙を突き立てた...



【ⅶ】


「があお」(かんサン、殺ッタヨ)-カンテラが目を開けると、ドアに鮮血がべつたり付いてゐる。カンテラはその「誰か」のポケットをまさぐつた。名刺入れが出て來る。名刺を拔き採ると、其処には、「『〈某業界〉専門誌編輯發行』某社・✕✕✕✕」と印刷されてゐた。「はぐれ魔導士」だ。


「これで良し、と。かうやつて一人一人片付けて行くんだ。白虎、また手傳つて貰ふぞ」-「があお」(らじやー)。



【ⅷ】



※※※※


〈落ち葉焚く時思へるはまた一年 涙次〉



そして杵塚を呼びに行つたカンテラ。また、今度は逆方向に向け、彼らは爆走した。

仲本の云ふ通り、「特別報奨金」として、今回のギャラは、下りた。


「手間は掛ゝるが、地道に殺つて行かう」。「があお」(久々ノ人間ノ血ノ味ダ)-「はゝ、味を占めるなよ、白虎」


と云ふ事で、今回は終はり。アデュー。


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