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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

モグラくんとセミくんのお話

作者: 紡里

友情のお話です。

 地面の下で、モグラとセミの幼虫が仲良くなりました。


 たまたま、モグラくんがお腹がいっぱいの時に、二人は出会ったのです。


 モグラくんのたわいない話をセミくんは興味津々で聞いてくれます。

 いつか食べちゃうかもと思いながら、セミくんとおしゃべりするのでした。



 セミくんは木の根から樹液を吸います。

 モグラくんは気が向くと、セミくんに会いに来ました。


 モグラくんはすぐにお腹が空くので、ミミズをおやつに持っていきます。

 それを食べながら、お話するのです。


 セミくんは何を言っても感心してくれるので、先輩風を吹かせながら……ちょこっと話を盛ることもありました。


 それは二人にとって穏やかで、心安らぐ一時でした。




 セミくんが「そろそろ地上に出るよ」と言いました。

 モグラくんはお別れなんだと悟ります。


「これから羽化したら、全然違う姿になるんだね」

「君は僕だってわからないかもしれない。だけど、僕は君がわかるから、大丈夫」


 セミくんは、ほんの短い期間に、恋をして子孫を残すのだ。


「では、またね」

 セミくんは言いました。


「……じゃあな」

 モグラくんは嘘を吐きたくないので、「またな」とは言えませんでした。


 セミくんは、そんなモグラくんの気持ちをわかった上で、ニヤリと笑ったのでした。



 夏の終わりに、地面の近くで転がるセミたち。

 友達のそんな姿を見たくないので、モグラくんはしばらく遠くで暮らすことにしました。


 モグラくんは冬に戻ってきましたが、セミくんの家に行く勇気はありません。

 何度も行こうとしては、折り返すのでした。




 春になり、モグラくんは彼女ができました。

 デートに誘おうとしましたが、いい場所を思いつきません。


 ふと思い出し、モグラくんは、彼女とセミくんの住処を訪れました。


 モグラくんがいろいろと思い出を語りますが、彼女は「ふーん」と気のない様子。


 モグラくんは説明を諦めて無言になり、しんみりと思い出に浸りました。

 いつも二人で過ごした居間に座り込んで。


 彼女は暇なので一人で住処を歩いて時間を潰すことにしました。

「ついてこなければよかったわ」と、放置された彼女は不満を漏らします。

 セミくんに何の思い入れもない彼女は、台所、寝室と無遠慮に歩き回ります。



 静かに、時は流れていきました。

 モグラくんは満足して、「ありがとう。帰ろうか」と彼女に声をかけます。


 彼女はにこりと微笑みました。

「私もお腹いっぱいで、満足したわ」とかわいい唇をペロリと舐めます。


 モグラくんは「待っている間に、何か捕まえたのかな」と深く考えずに、「よかったね」と言うのでした。


「友情」をテーマに書いてみました。

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