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辺境ギルドで雑用から始める規格外——尚、魔王の器らしい  作者: ぽん
クラン結成編ーーフラグ建築士、仲間巻き込み仕様
16/23

そして俺は……考えることを辞めた

まあ、洗脳は追々で構わん。


そんな時間の掛かることをするより今は糖分補給だ。俺の黄金の脳細胞達がブドウ糖を今か今かと待ち侘びている。


財布に感じる金貨一枚の重み。これを甘味に変換できると思うと、口の中に既に勝利の味でいっぱいだ。




さあさ!向かおうではないか。人々を極上の楽園へ誘なう場所へと。





……と、思って一歩踏み出したら。




「……あの、ツバサさん。もし良ければ私もご一緒していいでしょうか?」




セリナが恐る恐る口を開いた。




「おん?別に構わんけど、何で?」




君、今さっき甘味処に向かおうとする俺に引いてた筈じゃなかった?


という意味合いをたっぷり含んだ視線を向けると、セリナは視線を逸らしながら、若干早口で答える。




「……その……レッサードラゴンの痕跡、まだ正式に報告していませんよね。詳細を整理してから提出した方が良いかと思いまして。そ、それに今ブライドさんやミリアは忙しそうなので、少し間を置いてから報告した方が合理的かと思うんです」




「……」



ふ〜ん?なるほどね?そういう口実ね?


うん、完全にバレバレだ。要するに自分も甘味が食いたいんでしょ?


そうなんでしょ?




「……違います」




「まだ何も言ってないけど?」




「顔が言ってました」




真っ赤になって否定するセリナ。その様子が可愛らしかったので、深くはツッコまないでおくことにした。




「OK。分かった。じゃあ一緒に行こか。甘味処に」




「……報告の精査です」




強調して言い直すあたり、もう完全にアウト。しかし、そこを指摘すると怒られそうなので、黙って夕暮れの街へと歩き出した。


セリナは俺の後ろにちょこちょこと着いてくる。






石畳に灯りが揺れ始めている。


露店の焼き串を焼く匂い。果物の山に人々の笑い声。昼間とはまた違う活気が街を賑わせている。


その中を俺達は歩く。


いつの間にやら隣に並んでいたセリナは、レッサードラゴンの痕跡について、真面目な顔で話していた。


ただの言い訳だっていうのに、本当にその話を詰める辺りに、彼女の真面目さを垣間見た。




――そして。




「……混沌の気配を察し、我、登場」




背後から唐突に聞こえる低い声。




(うわぁ……また出た)




振り向かずとも分かる混沌の波動。気付けば、奴は俺の隣に「当たり前」のように並んでいた。




「資格者よ。汝の歩みしその先の地にこそ、混沌の試練が待ち受けている」




出たな、落書き。麒麟もどき。




「……」




俺は額を押さえる。セリナは麒麟もどきを見て目を丸くしている。




「え、あなた……ど、何処から?」




どうやらセリナは音もなく突然現れたことに驚いているらしい。分かる、意味分かんないよねコイツ。


俺も都合三度目の遭遇だけど、毎度何一つ分からないもん。


もうよく分かんないし無視しちゃおうかなぁなんて思っていると、麒麟もどきは俺達二人を交互に眺めていた。



「ふむ……汝らのその様子……資格者よ、さては相引き中であるな?」




「違いますぅ」「違います!」




俺とセリナの声が見事にハモる。ちょっとニュアンスは違うけど、全く同じ台詞だった。


通りの人がギョッと振り返る。違う、俺ら悪くない。悪いのはこの謎を謎で覆い隠した謎の生き物だ。




「お、お静かに……!」




「どっちかっつうとうるさかったのはそっちじゃね?」





セリナが袖を引っ張る。可哀想に、混乱しているんだね。




「成程。大層仲睦まじき様子。さては汝は資格者の伴侶となる者か?」




「は、はん……違います!!」




通りの空気が微妙にざわつく。完全に変人扱い。俺は頭を抱えたくなった。




「落ち着けよ我が伴侶」




「だ……も……ツ、ツバサさんまで何を言うんですか!?」




からかったら怒られてしまいました。女の子って難しい。


麒麟もどきは満足げに頷く。




「うむ、仲良きことは美しきかな……資格者と伴侶の息は既に一つ」




「違うって言ってるじゃないですか!!」




「らしいよ。振られちまったぜ」




セリナの顔が真っ赤になり、耳まで熱そうだ。周囲の注目を一身に浴びている。


が、そんなことに気付く余裕はなさそう。


なんか小さな声でぶつぶつ呟いてる。




「ふ……振ったとかそういう訳では……そもそも、それ以前に私達は今日会ったばかりなので、先ずはお互いを知る所から始めるのが正しいのであって、一足飛びに交際や結婚まで及ぶのは不健全なのではないかと思うのです。……いえ、決して嫌だとかそういう話ではなくて好意の有り無しを判断するにはまだ時間が足りないというか何というか………」




もごもごと口を動かすセリナ。早口&小声なせいであんまり聞こえないけど、何故か満更でもなさそうな雰囲気。




「ふむ……資格者よ、今こそ伴侶の唇を奪う刻ではないか?」




「いやねぇよ。街中やぞ」




ほら、周りから凄い注目されちゃってるんだぞ。段々と周囲の目線が何事かっつう驚きの視線から、何だよ痴話喧嘩かよっつう冷たい視線に切り替わり始めてるし。


別の意味で視線が痛いぜ。一旦袖を引っ張る手を離してくれやしませんか。




「いや私も別に興味がない訳じゃないのよ?でもこういうのはちゃんと段階を踏むべきというか。交際するにも順序があるというか。ただ雰囲気に流されるのは違うしちゃんと空気作りとか場所を選ぶとか必要なことは沢山あるというか……」




う〜む……。カオス。


ただ甘味処に向かうだけの筈だったのに、何で混沌が巻き起こっているんですかねぇ?

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