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#0082_全てを話そう_03

「……何かさ、気負っていた自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた」


「良い臣下に恵まれているではないか」


「心からそう思うよ」


 想像以上にあっさりと俺の転生暴露大会も終わり、各人がお仕事に戻った後。

 俺の私室には、ナイチンゲールことフローレンスさんと俺の二人だけが残っていた。

 

 アコナイトは爺やと同意見らしく特に何も言わず、ミモザ叔母さんも「だからその言葉遣いが妙に馴染んでいたのね」と納得顔だった。

 シロガネに至っては「話し終わった?じゃあ俺寝床にもどるわ」と興味すら無い様子である。

 一応お前も俺や勇者と同じ立場のはずなんだけど、猫ライフ長すぎて完全にそのあたりの設定忘れてない?


 臣下に恵まれたのは間違いないんだけど、若干納得いかない気もする。


 唯一気がかりなのは、バイオレットが終始「幼少期は同性だと思ってお風呂にも入っていた幼馴染が実は異性だと知ったヒロイン」みたいな煮え切らない態度をとっていた事だが、まぁそのうち落ち着くだろうなと割り切ることにした。


 頼むから落ち着いてくれよ。


「だが勇者という存在については私も認識を改めた。連中が脅威となるわけだ」


 転生者が持つチート能力。

 その具体性についてはエルフたちにも明確にはされていなかった。

 恐らく人間社会の方でも、事実を認識しているのは国営に関わる一握りなのかもしれない。


 だからこそ、俺達が「知っている」というのは大きなアドバンテージになりえる。

 情報とはいつの時代でも武器なのだ。


「正直「科学」や「文明」の力で、どれだけ連中のチート能力に対抗できるかはわからないが、物理的に確実に人を殺せる備えをすべきだと、俺は思ってる」


「軍事の拡大はいずれ国を戦乱へと進ませてしまうが、暴力による侵略に話し合いで応じるのは愚者の行為だと私も思う。結局は使い方なのだろうな」


 お姫様として生まれなおし、勇者に襲撃され、魔王になって、実感していたがずっと目を逸らしていた事。

 いわゆる「軍事産業」分野への、俺の未来の知識の反映だ。


 情報機器、銃火器だけでも今ある知識とエーテライト文明を組み合わせていけば、遠くない内に魔族の文明力は西暦1900年代へとたどり着けるだろう。

 それは同時に、簡単に人が殺せる道具を量産するという事に他ならない。

 発展と同時に法律の整備も徹底しなければ、待っているのは自分たちが生み出した力による自滅だ。


 だからこそ、俺はずっと軍備の増強に踏み出せないでいた。


 しかし、それもここまでの話だ。


「―――最愛を守る為に、ためらわず敵を殺す。それを真っ先にやるのが王様の仕事の一つなんだろうな」


 王様としての覚悟を決めるとは、そういう事だ。


 今後俺には様々な批判が飛んでくるだろう。

 後の歴史では虐殺王の様な呼ばれ方をするかもしれない。

 

 だが、それでいい。

 それで多くの国民を守れるなら、俺は真に「魔王」とならなければいけない。


「未来人とはいえ、元平民には荷が重い話だ」


「折れそうになったら言ってくれ。慰めに夜伽の一つくらい喜んで務めるとも」


「本当に辛くなったらお願いするよ」


 そんな、冗談とも本気ともとれない他愛のないやりとりをしながら、俺の新しい日々は幕を開けた。





**********************************





「え? 辞めませんよ? こんな美味しい仕事」


「俺としては有難いけど……大丈夫?」


「あの貴族と関係者は処罰されたんですよね? なら大丈夫です」


 この子、結構図太い性格してんなと思っていたけど、俺の想像以上だった。


 ピアニーちゃん誘拐事件のその後。

 俺の緊急事態など色々な事が重なって先送りになっていた、彼女を誘拐した貴族や関係者の処分を下した。


 家の取り潰し、貴族位の剥奪、各種財産や権利の再分配。

 加えて、巻き込まれただけであろう使用人達の再雇用先の手配に、平民となった親類へのフォロー。

 

 そして―――主犯である貴族の処刑を実行した。


 正直な事を言えば、未だに俺の指示で人を処刑するというのに抵抗はある。

 既に勇者を手にかけているのだから何を今更と思うかもしれないが、早々慣れるものでもない。

 だがケジメとして、そして王として一歩前に進む為にも、しっかりと俺の意思で罪人を裁くべきだと思った。


 悔やむべきは、コーラルを含めた連中の後ろに居たであろう「何者か」に辿り着けなかった事か。


 銀色の天使の残骸となったコーラル。

 それらの調査にも出向いてみたが、特に何かが起こるわけでもなく、結果としては「ヒト一人分の銀」が残っていただけである。


「結局全貌は明らかに出来てないままなんだから、ピアニーちゃんは油断しないように」


「分かっていますよ。その為に引っ越しまでしたんですから」


 事件は一応の解決をみたものの、全貌が追い切れていないままでは安心できない。

 という事で、彼女にはご家族揃ってなるべく城に近い家へと引越して頂いた。

 勿論こちら側の都合なので引っ越し費用は国が負担し、新築を1軒俺のポケットマネーで建てて彼女に押し付けた。


「色々ありましたけど、まぁ両親も新居を気に入っているので結果としてはプラスだと思います」


 元々、城壁近くの下町暮らしだったピアニーちゃん一家は現在、王城近くの繁華街にある一建家で暮らしている。

 ご両親の勤め先には遠くなったものの、夢の庭付き一戸建てがしかも新築で貰えるなら是非はないとお喜びだった。

 二つ返事でOKが返って来た時には、なるほど彼女のご両親だなと感心したものだ。


「これから今まで以上に忙しくなるから、ピアニーちゃんが納得してくれてるなら良しとするか」


「一つ要求があるとしたら、私と同じ仕事をしてくれる方がもう二人ほど欲しいです。これから更に忙しくなるなら、切実に、早急に」


「わかった、頑張って人材発掘してみるよ……」


 3回目にした物を確実に記憶するという彼女の特殊能力。

 今は、その固有スキルによって書類の正確さを記録している様な状態だ。

 これも書類仕事のデジタル化が確立できれば解決できるのだが、さすがに今日明日にというわけにはいかない。

 突破口はみえてきているので、そちらの開発と合わせて、当面は彼女と同等かそれに匹敵する記憶力の良い人を発掘するしかないだろう。


 いやうん。探して見つかるなら苦労はしないんだけどね。


「他も不足している人材を補充、発掘していかないとなぁ……」


「陛下が何を目指しているのか私には全く分かっていないんですが、まぁ頑張ってください」


「おざなりっ!」


 いつも通りの雑な扱いを受けつつ、少しは日常へと戻って来れたのだろうと実感する。


 目指す未来は決まっている。

 目指す理想も決まっている。


 魔王だなんだは関係なく、俺はこの国の「王様」として、何をすべきか決めている。

 ここからは、5年、10年、只管に発展を目指し注力し続けるだろう。

 勿論、妥協が必要な場面も出てくるだろうが、理想の国への最短ルートは考えた。


 立ち止まっている時間はない。


 命を賭して目指すのだ。

 人々を笑顔にする、文明に溢れた未来を。


 父上と母上に恥じる事ない、誇れる魔族の国を作るのだ。


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