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#0068_ピアニーの憂鬱な1日_07_ Side ???

 マズい事になった。

 まさかトゥアレグ卿がこれほど早く動くとは。

 

 さすがに今不振がられては面倒な事になると彼の指示には素直に従ったが、問題はコーラルの足取りをどうやら既に追われている点だ。

 ダレタコバラは初めから捨て駒なので問題ないが、コーラルの方に与えた指示の詳細が漏れるのは避けたい。

 勿論彼女が捕らえられても私に繋がる痕跡が残る事は無い様に勤めているが、念には念を入れておきたい所だ。

 

 今回目的を達成できずとも、別案は確かにある。

 だがそれには更に数年の時間が必要になるだろう。

 そうなると裏で回している金の動きの方を気取られてしまう可能性もある。

 コーラルの正否に関係なく私が動ける様になったら、まずそちらを更に深い場所へ隠す事を優先した方が良さそうだな。

 

 現在、こうして四天王全員が軟禁されているという事は、ある程度我々の誰かであるとトゥアレグ卿はあたりをつけて動いている。

 それを踏まえると、今回の出来事に関しては諦めてしまうという心構えはしておくべきだろう。

 手引きしたのが私であるという事にさえたどり着かれなければ問題はないのだ。

 私とてあの御仁を容易く出し抜けるとは思っていない。

 

 それにしても、あの小娘には本当にイラつく。

 

 初めは天才だと持てはやされているだけの只の箱入りだと思っていたのに、数字の概念の立案、更には魔動具の開発で実権を握られてしまった。

 道具の開発も小娘は飾りで実態はアコナイト辺りが指揮しているものだと思っていたが、まさか本当に全て奴の発案とは。

 

 勇者の襲撃が行われる様に駒を一つ犠牲にしてまでお膳立てをし、前国王を亡き者にする所までは計画通りだった。


 だが、その後だ。その後が私の想像を圧倒的に超えてきた。


 何を行ったのかは分からないが、あの小娘に勇者が討たれるという不測の事態が発生した。


 たかだが10歳の小娘に撃たれた勇者が弱かった?

 いや、前国王を確実に仕留めてはいるのだ、決してあの勇者はザコではなかった。

 

 異常なのだ、バレンタインという小娘が。

 

 叶わぬはずの道理を覆し、そしてまるで人が変わったかの様に「王」としての存在感を示し始めた。


 言葉遣い、決断能力、異常な速度で進む文明の発達。

 全てにおいて異様。なぜ生後より付き従うトゥアレグ卿を含む側近があの小娘の変わり様を受け入れられてるのか理解できない。


 普通に考えて気持ち悪いだろう。悪魔にでも取り付かれていると考えるのが妥当だろう。

 

 故に私は、私以外の者は全てかの悪魔に洗脳されている前提で行動している。

 誰も信用せず、全てを駒として消費する事を躊躇わず、何とかしてあの悪魔の首を取る。

 

 全てが終わった時、この国の重鎮を含め多くの民が私に感謝する事になるだろう。


 そうなれば次の王は私だ。

 

 この国を支配し、栄えさせるのは私の様な本当にこの国を思って心を鬼に出来る者であるべきだ。

 あんな発明ばかりをして貴族の尊厳を省みぬ愚か者では決して無い。

 貴族とは生まれながらに選ばれた者、二世はその権威を守りさえすればそれで良いのだ。

 二世だからと甘えるな、働けなどと言い出す王は愚王に他ならない。

 

 民を使い利益を生み国に献上するのが貴族である。

 貴族自身が労働をするなど、社会の仕組みを理解せぬ愚か者の戯言である。

 

 だから私はあの愚王を認めない。

 真に選ばれた者を見抜けぬ愚か者に、我等魔族の未来を託してはならない。

 

 奴が自分で言っていたのだ「選べ、未来を」と。

 

 ならば私は選ぼう。

 貴様という存在が愚王として打ち首となるその輝かしい未来こそを。


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