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第1話 おっさん美少女たちの指揮官になる

 戦いは終わらない。大切なものを失った後でさえ。


 大切なものがない今、戦う意味は俺にはない。









 ソファーに寝ころび、亡くなった妻と子供たちの写真を見る。酔っていて目が揺れるけど、妻は美しく、子供たちは愛らしかった。俺の記憶のとおりだ。だけど彼女たちはもういない。敵が彼女たちを殺した。俺が傍に居ればきっと守れただろうに。その時、俺は別の戦場で知らない誰かを守っていた。


「……大尉!いるんですよね!軍より出頭命令が出ています。すぐに出てきてください!」


 うるさい。俺は今思い出の中で子供たちと戯れている。邪魔だった。俺は近くにあったハンドガンを手に取って、外に向かって発砲する。騒ぎは収まった。酒をスキットルから再び飲み、妄想の世界を続ける。妻が作ってくれた肉じゃがはとても美味しかった。


「……大尉!今のは無許可の発砲ですよ!何考えているんですか!すぐに出てきてください!」


 再び俺は銃を外に向かって乱射する。銃はホールドオープンして撃てなくなった。だけどこれだけ撃てばご近所さんも黙るだろう。再び酒をあおる。


「……大尉!いますぐに出てきてください!出てこないのであれば実力行使します!」


 何を言ってるのやら。俺の休暇はまだ残っている。軍に出勤する理由はない。俺は無視をして写真をぼんやり眺めていた。その時、正面の窓が割れて、中に何かが投げ込まれた。それらは煙を吐きながら閃光と爆音を響かせる。俺の頭の中できーんという音が響く。そして揺れる視界に戦闘服を来た兵士たちがドアを蹴破り、窓を跨いで俺の家の中に入ってきたのが見えた。そして男たちは俺にライフルを突きつけて両手両足を拘束して外へと運び出す。


「確保しました准将!」


「ご苦労。しかし酒臭いな。大尉にすぐにデトックスの点滴を打て」


 俺はそのまま救急車に入れられて、銃を突き付けられながら、点滴を受けた。いったいなんなんだこれは?馬鹿馬鹿しい。
















 何本かの点滴を打たされて、酔いの抜けた俺は海軍の司令部に連れていかれた。白の詰襟軍装に着替えさせられて、儀礼用の佩刀や飾緒や勲章までつけさせられた。パレードの予定は聞いてない。パーティーもだ。俺は納得いかないまま、案内の下士官の後ろをついてとある作戦会議室まで連れていかれた。


「ここが大尉の次の職場です」


「俺は海軍の陸戦隊所属のはずだが?内勤なんて聞いてないぞ」


「私は知りません。ですが重要な任務だと聞いております。ご武運を」


 俺はその部屋に入る。よくある作戦指令室のようだ。部屋の正面のモニターの前に俺と同じ海軍の白詰襟を着た女がいた。階級章は准将となっている。俺はすぐに敬礼を取る。


「敬礼はけっこうだよ。ここでは階級、職位に関係なくフランクでいたいんだ」


「それは命令ですか?」


「それについては自発的努力を要求するよ。くくく」


 女は立ち上がり、俺の方に近づいてくる。銀髪に紫色の瞳のとても美しい女だった。俺に手を差し出してくる。握手のつもりだろうか?一応俺はその手を握り、握手した。


「さて。これでこのチームの指揮官様が到着したぞっと。大尉紹介するよ、君の新しい部下たちだ」


 指令室の後ろの方にパイプ椅子があり、そこに四名の女性が座っていた。座っていたが、なんというか軍人ぽくない。一人はきっちり座ってるけど150にも満たないのでなんか七五三みたい。もう一人は席に浅く座りだるそう。もう二人は隣同士でなんかきゃきゃとお話してた。


「フロイラインたち。今日から君たちのキャプテンになるのが彼だ。自己紹介したまえ」


 四人は一斉に立ち上がる。そして俺に慣れてない敬礼をする。


「ジブンはフロイライン・アーキバス!この度は晴れて実戦に参戦できることを誇りに思います!人類のために憎きアヘラトを殲滅するためにこの身を捧げます!」


 フロイライン。という単語がそもそもなじみがない。なんのこっちゃい?ピンク色の髪に金色の瞳に大礼服っぽい服(なのにミニスカ黒タイツ)の少女はそう言った。


「オレはモンロー。そこの熱血ちびと同じフロイラインだ。よろしくキャプテン」


 モンローという少女は金髪碧眼だった。海軍のフロックタイプの戦闘服みたいなのを袖の上部分だけ切って着ている。正面のジッパーは前回まで下げて、下に来ている水着みたいな黒いブラと豊かな谷間が見えている。ていうか下半身はジーンズのホットパンツでニーソのブーツだ。センスが謎い。


「次はわたくしですね。フロイライン・ハーロウです。よろしくお願いいたしますキャプテン」


 黒髪に緑色の瞳の別嬪さん。そして和服っぽい服装。その一言で終わらせたい。だがやっぱり変だ。大昔に流行った女学生さんスタイル的だけど、模様は派手だし、やっぱり肩のところは上で切られてるし、下も袴はミニ丈で目に余る。


「さいごですね。わたしはデレイニィ。フロイラインです。足を引っ張らないように頑張ります」


 肩にかかるくらいの青い髪に蒼い瞳の美少女だった。だけどだけどだけーど!服装が変!ゴシックロリータな黒のミニのワンピースを着ている。両手には二の腕真ん中くらいまでの長さの黒のオペラグローブを着ている。どこへ行くための衣装ですか?ここ軍なんですけど。


「はいじゃあ大尉からも自己紹介して」


 准将にそう言われた。こんなヘンテコ連中に何を言えと。


「コモンウェルス海軍所属。階級は大尉だ。直近の所属は陸戦隊」


「「「「よろしくお願いしますキャプテン!」」」」


 俺は思わず眉間を揉んでしまう。


「准将。なんで俺がキャプテン呼ばわりなんですか?」


「大尉はキャプテンだろう」


「それ陸軍!海軍の大尉はルーテナントだよ!」


「そうかそれは失敬。お前らこの人はキャプテンではないルーテナントと呼ぶようにしろよ」


「「「「わかりましたー!」」」」


 なんなのこれ。


「あの准将」


「なんだね?」


「さっき聞き捨てならないことを聞いたのですが、この子たち実戦に出るんですか?」


「そうだよ。そしてその指揮官が君だ」


「はぁあああ?!」


 四人の謎の美少女と変な准将。こいつらは本気でそう言ってるのか?


「アヘラト相手にこいつらが役立つとはとても思えないんですけど。あれですか?広報ですか?」


「いやガチで殺し合いに行くよ。じゃなきゃ君みたいな一流の戦士を海軍からわざわざ引き抜いてこない」


 准将はケラケラしているけど、目だけは本気だった。


「君には彼女たちを率いて各地の特殊作戦に参加してもらう。人類をアヘラトの脅威から救うためにな」















 これが彼女たちフロイラインとの出会いであり、人類の反攻の始まりだとは当時の俺にはわからなかったのだ。





アヘラト

Advena Hostilis Regione Transdimesionaleの略称。

異次元からやってくる謎の生命体。人類に敵対的である。

数の暴力で人類は追い詰められている。



★★★★★!

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