7/18
誰の記録でもない夢
夢の記録が終わると、端末はしばらく沈黙した。
あなたは小さく息をつく。
まるで、誰かの記憶を覗き込んでしまったような気持ちだった。
けれど、それは単なる“記録”だったはずなのに──なぜ、こんなに胸が痛むのだろう。
画面の隅に、小さな通知が浮かんでいた。
【観測ユニット:HOM-04 記憶アクセス制限解除/進行中】
【次回再生ログ:不定】
少し前から、時折、自分の記憶が曖昧になることに気づいていた。
この島に来た理由さえ、明確には思い出せない。
けれど不思議と、「ノア」という名前だけは最初から心に残っていた。
──なぜ、私はこの観測記録に惹かれているのだろう。
まるで自分が、この場所に戻ってきたような──そんな錯覚すら抱いていた。
あなたはもう一度、端末に手を伸ばす。
何かが呼んでいる。
自分の奥底に眠る、もうひとつの夢が。




