イスラームの女
湯呑にいれた熱いオリーブオイルを前に、休息を挟みながらも僕は少しずつ飲み下していた。粘度が高いことを除けばオリーブオイルの飲み心地は芋焼酎に似ていた。近頃はすっかり寒くなってきたから朝起きてからは窓を閉め切った部屋であわただしくしていた。熱いオリーブオイルは寒い夜に窓をあけて、それを猛毒だと思い込んで飲むと体の芯から温まる感じがしていた。
ダスティスプリングフィールド、パッツィクライン。この二人を聞き直してみている。歌詞の内容を簡単に訳すと、ゴミ箱を漁ったときあなたの敏捷性が1上昇する。うーん、これは違ったかもしれない。僕はチェコでしか英語が通じた試しがないんだ。これを読んでくれている方も一度はチェコへ行ってみて欲しい。みんな日本訛りの僕を程よくリードしてくれるくらい英語が上手さ。腑抜けたムード漂う中世世界を探検できるよ。
審査の結果、残念だがセンスだけでは脆いのだった。いくら自分のことを連続的に自分であると認識していてもセンスは決してそのことを担保してくれないし、所詮は一時の思い過ごしでしかないからだ。センス! センスセンス! こうして連呼してみてちょっと清々しく思えるくらいが、センスは関の山なんじゃないか。さ行が多いから爽やかな印象を受けるんだ。考えてみれば、爽やかな印象を受けることほど何とも思わないこともない。現代のジャパニズニンジャ。動画サイトで四六時中流れている広告くらいうっとおしくないと、もはや人々の記憶には残っていけないんだろう。「CMは記憶に残るためというよりそれを買おうと思っている人の背中を押すことを目的として流されているんだ。」こんなうんちくどっかで聞いてしまったから今になって顔を出したわけだ。豆知識なんて耳を貸してやるものじゃないことがよく分かる。こっちまで豆知識の仲間にされてしまうから、とにかく僕たちは爽やかでいなくてはいけない。分かったらシャワーを浴びて寝よう。元気があるなら湯舟につかって十まで数えよう。棚の奥からゴム製のアヒルを引っ張り出してそれも一緒に入れたなら最高だ。そうしたらきっと誰だって眠れる。アヒルの底にあいた穴から侵入した水を押し出してしぶきをつくって、その様のように次はベッドに体を預けるんだ。君は生まれたばかりだから眠る以外にない、そんな暗示で。そんな暗示でセンスセンス。僕くらいになるとこんな文言が思いついた瞬間肩を跳ねさせて踊り始めるのだけど、そんな人間は僕だけで充分だからそっちは寝ていてくれ。僕は眠れるまで踊っているからと去ったにしては飽きが来るのはあまりにも早かった。それはそうだ。全然かっこうよくないからだ。かっこがよろしくない。そんなわけでの、ダスティスプリングフィールド、パッツィクライン、なのだった。