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探し愛

作者: いと




(おい嘘だろ、)

(なんでよりによって大雨なんか…!!)









 二月の冬、

 今年で社会人歴2年目の、まだまだ新人サラリーマンの俺は、

 最近、ようやく社会に溶け込めてきていた。


 今では立派な社畜となり、

 勤め先は、噂が後を絶たないまあまあ有名な企業《ブラック企業》


 冬休み期間ということもあり、

 たった三日しかない冬休みをもらって、

 今日は休暇を取っている。


(あのクソ上司…)

(俺の手柄を横取りする気なんだろうな、)



 俺はちゃんと社会に貢献してんだし、

 そろそろ人生のパートナーが欲しいところだ。



 しかし、

 最近は会っていないが、一生の愛を誓った女性が居るから、

 俺に新しいパートナーができる事はないだろう。



 なんて馬鹿げたことを考えていたら、

 少し先に公園の公衆トイレが見えた。



(あそこで雨宿りでもするか。)



 俺は小走りで公園へ向かった。




公園の入り口を抜けると、

一人の女性が立っているのを見かけた。


何かを見つめているかのようにみえる。



(風邪ひいちまうぞ~…)



俺は風邪をひいて会社を休む事を想像してみた。


(うう…三か月は帰らせてもらえないな…)


考えるだけでも恐ろしい。




俺は女性を横目でチラチラ見ながら公衆トイレへ向かう。



(何か探してんのか…?)



そう思うと、居ても立っても居られなかった。



すると突然、足が方向転換して、女性の方へ歩き出す。




「あ、あの…」

「何か…探し物ですか、?」

「もしそうなら俺手伝います、!」



()()()()()()()()()()()()()()



変に緊張していると、

か細い声が聞こえてきた。



「人を探しているんです」


「人…ですか、」



「確かにこの辺りに居ると思うんです、」

「…どこ行ってるのよ…」


「…何か心当たりとかありませんか、?」


「…、森……」



森?



()()()()にいるかも…、」



そう呟くなり、女性はその森に走って行ってしまった。




「…秘密の森って……」





()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




戸惑いつつも、俺はあの人を追いかけることにした。












秘密の森


それは、俺の元カノとの初デート場所だった。

どっちも恋愛未経験者だったから、

デートとかよくわかんなくて、

話し合った結果、デート場は湖になった。


その湖で、穴場スポットを見つけた。

少し歩いたところに、小さな森があるのだ。


静かで居心地の良いその森を

俺らは「秘密の森」と呼ぶようになった。



そういえば、あの人…

どこか彼女に似ていたような…?




「…あれ、ここ…どこだ、?」



ハッと我に返ると

気が付けば森に入ってしまっていた。

…雨も止んだみたいだ



目の前にはさっきの女性。

早く来いと言わんばかりに、

俺を見つめて動かない。



(あ、人…探してるんだった。)



一歩一歩女性にゆっくりと近づく。

すると、女性は近くの大木の裏に隠れた。



まるで俺を誘導するかのように


親鳥についていく小鳥みたいに、

俺は女性の後をついていく。





女性が隠れた大木を越したとき、

俺は懐かしい光景を目にした。



見渡す限り、辺り一面に多種の花が咲き乱れ、

大きな木々が太陽を囲む。


そして沢山の蝶々が花の周りを飛び回り、

見事に咲いた花々の蜜を吸っている。



()()()()()



少し先に目をやると、

一基のお墓が目に留まった。



木の陰に隠れて、よく顔は見えなかったが

女性は俺に微笑んでいるような気がした。


懐かしくて、優しくて、子供のように無邪気な笑顔。

まるで俺の大好きな彼女にそっくりな表情で。



気付けば足が動いていた。



ゆっくりと、一歩ずつ、着実に

お墓の方へと。



棹石に刻まれた見覚えのある名前と、

供えられた一つの指輪。


太陽の光に反射して、

眩しく光っている。



まるで、俺を探していたかのように、



見つけたと言わんばかりに嬉しそうにギラギラと光る。




1年前、付き合って3年目の記念日に

彼女は《元カノ》になった。


俺は彼女へ結婚指輪を渡した。

嬉しそうに涙を流しながら、

うなずいてくれた君の表情(かお)をまだ鮮明に覚えている


その日、君が車に轢かれたという報告と共に。




墓の前で立ち尽くしていた。

必死に考えていた。








     嗚呼、そうか…、



全てを理解した頃には、

あの女性の姿はもうここには無い。


いや、君の姿と言った方がいいだろうか。


あの人は君だったんだね、

今は亡き最愛の女性(ひと)



君のことを想えば想う程涙が止まらないのは

君が何か魔法をかけているんだろうか、?




君はわざわざ、

1年近くお墓に行かなかった俺を探して

ここ(下界)まで降りてきたんだな…




止めようにも止まらないこの涙を

必死に拭って泣き続ける。






「守ってやれなくてごめんなぁ、」



「世界で一番事愛してるよ、…」

















雨上がりの二月。


まだ少しだけ寒い二月、


そんな二月に、


温かい風と共に


春がやってこようとしていた。





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