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第五話

 恐竜を生かすために出来ることを思いついた俺はハラルに念話を送る。内容は当然()()()にもオープンだ。


『ハラル、現状で孵化(ふか)に成功した個体はどれくらいいる?』

『十頭ほどです。成体は四頭』


『成体もいるのかよ。恐竜の飼育用ポッドって造れないか?』


『造ること自体は可能ですが、恐竜が中に入った状態ですと宇宙船(ハラルドハラル)内で維持するのは難しいと思います』

()の大きさの問題か』


 恐竜の成体は体高三メートル程度とは言え、飼育するとなるとそれなりの場所が必要となる。加えて尻尾を含めた体長は五メートル以上だ。


 全長五十七メートルの宇宙船(ハラルドハラル)の中では明らかに場所を取りすぎる。


『エサ代もバカになりませんよ』

『○国はどうしてるんだ?』


『犯罪者や奴隷、他国から攫ってきた者などを与えているようです』


『人間を食わせてるのかよ!?』

『生きたまま檻の中に放り込んでいますね』


 美祢葉の顔が見る見る青ざめていく。俺は()()様に気づかれないように、そっと彼女の手を握った。


 恐竜は孵化して間もない状態でも獰猛さと素早さは成体と変わらないらしく、訓練を積んだ者でも武器がなければとても太刀打ち出来る相手ではないそうだ。


 彼らに人間を生きたまま与えるのは、戦争に投入した際に敵国の者をエサと認識させるためだという。これは早々に飼育施設を潰すべきか。いや、しかし恐竜はどうしたらいい?


『レイヤ様、エサでしたら新たに食料生産ポッドを造ることで対応可能です』

『すると問題は飼う場所だな』


『広い土地を入手して重力シールドで囲い、光学迷彩でカムフラージュすればよいかと』

『どこか候補地はあるか?』


日出(ひで)村のレイヤ様の土地をさらに広げるのはいかがでしょう?』

『空いてるの?』

『はい。二万坪ほどあります』


『とすると光学迷彩の一部を檻のようにして、有料で公開するのもアリだな』

『脳内にチップを埋め込みますから人をエサとする認識も取り去れます』


 公開する時間帯は檻の方に誘導することも可能だ。とすると後は帝国か軍の許可がいるか。早速(いの)(づか)陸将補に念話を送って相談してみる。


『悪いけどそれは私の一存ではどうにもならないよ。恐竜は以前青木ヶ原樹海を空爆してまで排除した経緯があるからね。飼育するには帝国政府の許可も取らないといけないかな』


『面倒ですね』

『何故恐竜を飼いたいんだい?』


 俺は○国が軍事利用を目的に恐竜を飼育し、生きた人間がエサにされている事実を伝えた。すると彼は貸し与えている偵察型ドローンで確認し驚いた声を上げる。


『施設は破壊しても絶滅危惧種の恐竜は出来れば生かしたいんです』

『これは酷いね。分かった。私から島森(しまもり)君に話してみよう』


 島森大夢(ひろむ)、以前海賊船を装った○国の巡洋艦を沈めた時に、(あり)(はら)海運に乗り込んできた軍務次官である。陸将補が言うには、あの時の好奇心を満たした()()が有効とのことだった。


『数日時間をもらえる?』

『もちろんです』


 陸将補との念話終わり。


「和子様は天然温泉スパリゾート日出村をご存じですか?」


 沈黙をごまかすためにルラハに和子様の相手を任せていたが、片がつきそうなので話題を振る。


「はい。噂程度ですけど存じておりますよ」

「これはまだ決定したわけではありませんし、極秘なので誰にも話してほしくはないんですが」


「何でしょう? とてもワクワクしますね」

「和子様の研究の手助けになるかも知れません」

「と言われますと?」


「その温泉施設のすぐそばで恐竜が飼育され始める、と言ったらどう思いますか?」

「えっ!? 見たい! 見たいです! まさか本当なんですか? 夢ってオチはナシですよ!」


 和子様が興奮して身を乗り出してきた。


「和子様、まだ決定したわけではありませんから。あと近いです」

「ご、ごめんなさい」


「夢オチではありませんのでご安心を」

「レイヤさんはどこからそんな情報を? スパの関係者にお知り合いがいらっしゃるのですか?」

「情報の出所は詮索しないで下さい」


「そうですか、分かりました。ですが大勢の人が集まるところで恐竜を飼って、万が一のことがあったらどうするのでしょう」

「あそこには陸軍の出張所がありますので……」


「レイヤさん、恐竜を侮ってはなりません。ライオンや虎、熊などとは比べものにならないほど危険な動物なんですよ」

「そ、その辺りのことをまさに今検討しているんだと思います」


「鉄格子は太く頑丈で二重、いえ、三重は必要ですね。エサはどうするのでしょう。スパが儲かっているとしても大量のエサの確保は大丈夫なのでしょうか」


 どうやら和子様はスパが恐竜を飼うと思っているようだ。飼うのは俺個人なんだが、勘違いしたままにしておくか誤解を解くべきか。


 そこで俺は村にも伝えなければならないことを思い出した。まあ、そっちは恐竜飼育が正式に決まってからでも問題はないだろう。


『レイヤ、私は和子様の誤解は解くべきだと思いますわ』

『何で?』


『だっていずれは和子様もレイヤのお嫁さんになるんでしょう?』

『は!?』


『ハラルさんが言ってましたわよ』

『いやいや、そんなことない……分からないだろ』


『否定は取り消されましたのね。でも構いませんわ。他の方は嫌ですけど和子様なら反対するつもりはありませんもの』


 それでいいのか、美祢葉。


 誤解を解くということは俺があの土地一帯の持ち主であることを明かすということだ。必然的にスパの顧問という立場も説明が必要となるだろう。ハラルも余計なことを言ってくれたものだよ。


 しかしあのお姫様の見た目はドストライクだが、異世界モノならまだしも皇族とのイチャコラシーンは色々とマズいのではないだろうか。


「やっぱりお二人は目で会話されるのですか? それともテレパシーで会話されるとか?」


 和子様の言葉に、俺と美祢葉はドキリとして互いの顔を見合わせるのだった。

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