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神様は冒険者に憧れる ~縛りプレイでのんびり異世界を旅したい~  作者: 角山亜衣
第3部

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18.暴風の死神《デス・テンペスト》

愛馬のミルキーと共に東へ向かうリリス。


向かう先は、自然豊かな都市、フォレストリア。


いくつかの宿場町に立ち寄りながら、二ヵ月ほどの旅になる。


道中、ゴブリンの脅威から村を救い、古代遺跡で発見した秘宝を爆発させ、神獣と崇められていた角付きの獣を吹き飛ばしてしまったりと‥数々の伝説を残しながら、三か月かけてフォレストリアに到着した。


真っ先に同族のエルフ種と交流を試みたが、他の種族‥特に人族を軽視する彼らにはどうにも馴染めなかった。


しかし、神官のサイラスだけは違っていた。

サイラスはリリスを見ると驚いたように声をかけてきた。「あなたは‥」


リリスはただならぬ雰囲気を感じてサイラスを見返した。「あたしに何か?」


「聞かせてちょうだい。あなたは何処から来たのか‥」そういうとサイラスは目を閉じ、リリスの額に手をかざした。

リリスは頭の中を覗かれているような不思議な感覚を覚えた。


「やはり‥そうなのね。」サイラスの目から涙がこぼれ落ちる。


突然の状況についていけないリリス「あのー‥どうなの‥かな?」


サイラスはゆっくりと目を開き語りだした。

「あなたの母は、エアリエル‥ですね。」


その名前を耳にした途端、リリスの脳裏に遠い遠い過去の記憶が一瞬にして蘇った。

「エアリエル‥お母さん‥‥」


サイラスは涙を流しながら続けた。

「エアリエルは私の妹です。風のエルフ族は、随分前に病で滅んだと聞いていました。でも、生きていてくれた‥。風の加護を‥こんなにも強く受け継いで‥。これは、エアリエルが心からあなたを愛していた証なのです。」


風の加護‥。

それを聞いて、リリスには思い当たる節が多くあった。

自分だけ病に侵されなかったこと、エイジに魔法を教わった時には風系だけがズバ抜けていたこと。

風を思い通りに操り、いくつかのオリジナル魔法も編み出してきたこと。


そうして、サイラスから風の加護について多くを学んだ。


これまで得体の知れない力だと思って恐れもした自身の魔力だったが、それが、母から受け継がれた愛だと知ったリリス。体の奥に優しく温かい力が巡っているのを感じた。


サイラスは最後に「内なる加護の力と対話できるようになれば、あなたは未だかつて誰も到達し得なかった高みへと辿り着けるでしょう。それはきっと‥あなたが求めているお方の助けともなるはずです。」そう告げると司祭の椅子に座り、深い瞑想に入っていった。


「あたしが求めているお方‥‥って、エイジ?‥エイジのことを言ってるの!?彼は今どこに‥」


司祭は瞑想に入っていた...。


神殿をあとにしたリリスは、また一回り大きく成長した気分だった。


その夜は森の小人族とウマが合い、共に歌い、踊り、笑いあって絆を深めた。


後日、改めて神殿を訪れてみたが、エイジの情報を得ることは叶わず、諦めて北へ向かうことにした。



険しい山を幾つも越え、二ヵ月かけてようやくたどり着いたのは、要塞都市ドラコニル。

その名の示す通り、この都市は険しい山岳地帯に築かれた堅固な要塞である。


何を警戒して護りを固めているのか‥。


『もう何十年も前だがね、ドラゴンの巣が見つかったんだよ。』

『あの山の奥には古のドラゴンが眠っているらしい。』

『もしドラゴンが目を覚ましても、この都市に居れば安心だぜ。そのための要塞だからな。』


冒険者ギルドで噂話に耳を傾けていると、一人の冒険者が突然怯えた表情で騒ぎ出した。


「あんた‥もしや‥‥『暴風の死神(デス・テンペスト)』って呼ばれているエルフの冒険者か!?」


「はぁ~?デス・テンペスト??‥なによ、それ。」リリスにとっては寝耳に水だった。


『ヴァレンシアで獣の大群を防壁ごとぶっ飛ばして殲滅したとか‥ゴブリンの村も一撃で片づけたって噂を聞いたぜ‥』

『ぁぁ、俺も聞いた。森の奥にあった遺跡も嵐の魔法で木端微塵にしたとか‥』

『神話に出てくるような神獣様を風魔法で切り刻んで聖域ごと吹き飛ばしたって聞いたぜ‥』

次から次へと、微妙に盛られた噂話が飛び交った。


「ちょっちょっちょっと待ってちょうだい。誰よ!そんな根も葉もない噂をまき散らしてんのは!?そりゃー‥ヴァレンシアでは獣の大群を殲滅したわよ?防壁はー‥ちょっとだけ壊しちゃったけど...。それから、『ゴブリンの村』じゃなくって、『ゴブリンに襲われていた村』を助・け・たのよ。普通に。それからー‥なんだっけ?遺跡?‥‥あれは、あたしのせいじゃないわよ!変は鉄球が通路を塞いでいたから、魔法でどかそうとした途端に爆発しただけよ。(はぁはぁ‥)神獣様は吹き飛ばしただけで殺してなんかないわよ!それに、あれは、不可抗力だわ!正当防衛よ!!ちょーっと聖域?とかに踏み込んだだけで、あんっなコワい顔して追いかけてくるんだもの‥こっちが殺されるとこだったわよ!(ぜぇぜぇ‥)」


「本物だ‥。本物の『暴風の死神(デス・テンペスト)』だ‥」

「気ぃつけろ‥目を合せたら飛ばされるぞ‥」


「ちょっと!あんた達!少しは人の話を聞きなさいよー!!」

リリスが訴えれば訴えるほど、噂話に拍が付くのだった。


「はーっはっはっ!賑やかな嬢ちゃんだな。」カウンターの奥から様子を伺っていたドワーフが豪快に笑いだした。

「嬢ちゃんは本部にいた‥リリス、だな?」鋭い目つきをリリスに向ける。


「あ、はい、あー!!ガドさん!!お久しぶりです!!ご挨拶が遅れました。」ペコペコとお辞儀をするリリス。

ガドとは、まだ幼い体の頃に面識があった。


───

数年前、エルドリアの冒険者ギルド本部に各地のギルドマスターが集結した時のことだ。


まだ幼い体型のリリスは、古くなった武具を処分していた。

もう使えなさそうな剣や盾を無造作に床に投げ捨てたところにガドが通りかかった。


「おい、小娘。何してやがる?」ガドの低く響く声に、リリスは驚いて振り返った。

ガドは返答を待つまでもなくリリスに近づくと、ガツン!と彼女の頭に拳を振り下ろした。


「武具はただの道具じゃねぇ。命を守るものだ。そのことを忘れるな。」ガドは厳しい声で説教を始めた。

「古びた武具だろうと、それを使って戦った者たちの魂が宿っているんだ。雑に扱うな。」


「‥ごめんなさい‥。」リリスは目に涙を浮かべながら、ガドの言葉の重さを感じ取った。


ガドはその様子を見て、少しだけ優しい表情に戻り、リリスの頭を撫でた。

「分かればいい。これからは心を込めて扱うんだぞ。どんなモノに対してもだ。感謝の気持ちを忘れるなよ。」


リリスはその時のガドの言葉を胸に刻み、武具や道具を丁寧に扱うようになった。

───


「あの時の小娘が‥たった数年で随分と大きくなったな。これだからエルフは好かんのだ...。」

身長差により、すっかり見下ろされているのが気に入らない様子だ。


「こんな辺境の地まで何しに来た?」


「人を探しているんです。」


ガドは眉をひそめ、リリスの表情を見て少し興味を持った。「誰を探してるって?」


「エイジという名の少年です。何年か前は執事さんと一緒に旅をしていて‥すっごく強いんですよ。今も旅を続けているなら、どこかで冒険者ギルドに登録してくれてるんじゃないかと思って、各地のギルドを周っているの。」


ガドはしばらく考え込んだ後、首を振った。

「ふむ‥。残念だが、聞いたことがないな。お前さんがいうほど腕の立つ少年ってことなら、すぐに噂になってそうだしな。」


ガドは皮肉交じりにニヤリと笑った。

「だろ?『暴風の死神(デス・テンペスト)』。お前さんが噂になっているぐらいだ。」


「あ!もう~‥ガドさんまで‥ヤメてくださいよぉ~。」顔を紅くするリリス。


「カッカッカッ!まぁ、何かしら情報が入ったら教えてやる。ゆっくりしていけ。」


「はい!ありがとうございます、ガドさん。」ペコリとお辞儀するリリス。


「せっかくだから、ドラゴンでも見に行ってみようかなぁ~。」リリスは観光気分で何気なく発した言葉に、ガドは今までにない真剣な表情を見せた。


「待て待て、ありゃードラゴンなんて生易しいモンじゃねぇぞ。この星そのものだ。ここは要塞都市なんて呼ばれちゃいるがな、アレが動き出したら、こんな街‥石ころと代わらねぇよ。いいか、絶対に近づくんじゃねーぞ。」


「わ・わかりました...。気をつけます。(これは本気でヤバそうね)」ガドの本気を感じ取って、肝に銘じるリリスであった。


「ひと暴れしたいんだったら、鉱山の奥へ行ってみな。何やら特殊なゴーレムが穴を塞いでるらしくてよ。そいつをどかせりゃ、いい鉱物が手に入りそうだ。見たところお前さん、ロクな装備持ってねぇんだろ?」


確かに、リリスはくたびれた短剣と、何度も調整はしているが限界が近くなってきた弓しか持っていない。


「そうね!ゴーレム退治、行ってみるわ!!」

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