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1.リセット

窓から差し込む柔らかな光。

優雅にお茶をたしなむ高校生‥の姿をした神様。


アンティーク調のテーブルには、古風な陶磁器のティーカップと、細やかな模様が施されたティーポットが置かれている。


しおりが挟まれた本を手に取る。


本のタイトルは『Fwd: やる気ゼロの異世界生活』


彼は、まるで本と対話するかのように慎重にページをめくる。

再び手を伸ばした先にあるカップは、すでにカラになっていた。


「ジー?」


部屋の片隅から、ダンディな執事が姿を現す。


「お呼びでしょうか、主殿」


「異世界って、あるかな?」


「現世とは違う次元に存在する、いわゆる平行世界という意味合いでしたら答えは否です。存在しません。トラックに撥ね飛ばされたとしても‥存在しない世界に行く事はできません」


「全否定‥か。メイも同意?」


執事の隣にメイド服姿の少女が現れる。


「はい。宇宙のどこか違う星になら、主様が望まれる世界が存在する可能性はありますが、過去どの時代においてもその存在が確認された記憶はありません。たとえ存在したとしても、主様の御力をもってしても、そこに到達する手段は無いかと」メイドは無表情のまま淡々と主の問に答えた。


「そうか‥。宇宙は‥良い思い出が無いし、やめておこう」


「涙目になられた火星探索ですな」


「ジー‥うるさいよ」


「失礼いたしました」深々と頭を下げる執事。


「無いものはしょうがない。創ろっか!」


「新世界創造‥ですな。前回の創造からはー‥2万年ほど経過しておりますのでエッセンスは十分でございます」


「よし。ボクがどんな世界を望んでいるかは‥解るよね?」

少年は手元の小説を指さしながら、執事に視線を送った。


「もちろんでございます。完璧に理解しております」堂々と胸を張り、深々と頭を下げる執事。


その様を見て満足気に頷く少年。


「それじゃ、あとは任せるよ。メイ、この時代の記憶はアーカイブしちゃって。あ、異世界系の記憶は残しておきたいかな」


「承知いたしました。不要と思われる記憶のみアーカイブいたします」メイドはやはり無表情だった。


バルコニーに出る少年。

目の前には雑多なビルが立ち並び、夕焼けを反射している。

道路には車がひしめき合い、遠くからは人々の話し声やクラクションの音が響いてくる。


少年はこの時代で出会い別れた人々を想い出すように、静かに目を閉じた。

「‥さようなら」


想い出に別れを告げた少年は寝室へ向かい、豪華なキングサイズのベッドに横たわる。

傍らに立ったメイドが少年の額に手を当てると、少年は深い眠りに落ちていった。


「さて、始めましょうか‥」


執事が何かを念じ始めると、彼らが居た建物全体が光の玉に包まれ、天空高く昇っていく。


かつて建物があった場所には大きな穴が開き、周辺の大地を飲み込むように穴は拡大していく。

地上は逃げ場のない地獄絵図と化していた事だろう。

この惑星上の全ての陸地が沈降と隆起を繰り返し、新たな大陸を形作っていく。



そして時は流れ───



神様が望んだ、新しい世界が始まる。

読んで頂き、ありがとうございます。

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