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文化祭 打ち上げ

「文化祭、お疲れ様ー! カンパーイ!」

「「「かんぱーい!」」」


 文化祭の片付けも滞り無く終わり、クラスの全員で駅の近くのお好み焼き屋さんで打ち上げを行うこととなった。

 普段なら仕事で放課後はすぐに帰宅か事務所や現場に直行だけれど、珍しくこの後も仕事は入っておらず、俺も打ち上げに参加することができた。


「売り上げ1位にはなれなかったけど、結構楽しかったよなー」

「そうだね。コスプレも最初は恥ずかしかったけど楽しかったし」


 同じ席に座った佐藤と神崎さんが今日の思い出話に華を咲かす。

 他の席でも各々が楽しそうに話していて、いい文化祭だったんだなと俺自身も実感できた。


「そういえば、今日ずっと唯と絢ちゃんって一緒に行動してたんしょ? なにやってたん?」


 ふと思い出したかのように、佐藤が俺たちに話を振ってきた。

 俺は対面に座る絢さんと顔を合わせる。


 うーん、別に隠すようなことはないけど……まあ、そのまま言えばいいか。


「普通に出店覗いたり、お化け屋敷で腰抜かした絢さんを休憩所で休ませたり、あとは演劇部の舞台観に行ったりしてたな」

「それもうデートじゃん。文化祭デートじゃん!」


 ビシッとツッコミを入れてくる佐藤。


「デートねぇ。でも俺、佐藤とシフトの時間が合ったら同じプランで文化祭回ってたぞ?」


 流石にそれは冗談だけれど。

 でもそう言わないと追求めんどくさそうだしな。


「うっ、そう言われると何も言えねぇ……」

「だろ? てか、そっちも神崎さんと文化祭楽しんでたんじゃないか?」

「俺はサッカー部のほうにも顔出してたからなぁ。でも結構楽しかったぜ。なあ、香菜?」

「え、うん。そうだね和くん」


 くしくしと前髪を掻きながら照れたように反応する神崎さん。


「そういえば、ミスコンミスターコンは結構盛り上がってたよな。パフォーマンスとかも結構気合い入ってたしさ」


 佐藤がふと思い出したように、お好み焼きをひっくり返しながら話を振ってきた。


「凄かったよね! 私も和くんの隣で盛り上がっちゃったもん」


 神崎さんが珍しくテンション高めに話に乗ってきた。

 それだけでミスコンミスターコンの盛り上がり様が想像できる。


「特に先輩たちヤバかったわ。サッカー部で一番カッコいい先輩いるんだけどさ、普段からイケメンだなーと思ってたけど、ステージに立つと普段よりももっとイケメンに見えてまじで憧れるわ!」

「ミスコンの先輩たちも本当に可愛くて綺麗で凄かったなー。和くん、ずっと鼻の下伸ばしてたもんね」

「それはしゃーないだろ。俺ら1年じゃ出せない色気とかあってさ、たまんねーってあれは!」


 じとーっとした目で非難するような視線を佐藤に向ける神崎さんに悪びれもせず熱弁する佐藤。

 神崎さんからしたら好きな人との文化祭デートなのに、当の相手は他の女性に鼻の下を伸ばしている。

 そりゃ非難の視線を向けられても仕方ない。


 本当に難儀な恋愛模様だな……。


「てか、絢ちゃんとかミスコン応募しなかったの? 絢ちゃんならいいとこイケると思ったんだけど」

「え、私? あー、私はその前に唯くんと文化祭回る約束してたから……」

「絢ちゃん、他の子たちからも勧められてたけど全部躱してたもんね」


 まさか絢さんがミスコンの参加を打診されてたとは……。

 確かに絢さんのルックスならミスコン穫れる可能性は充分にあると思う。

 もしかしたら俺が観劇に誘ったせいで断ったのなら余計なことをしたかもしれないな。


「絢さんごめんね。俺が誘ったせいでミスコン出場の機会奪ったみたいで」

「そんな! 唯くんのせいじゃないよ! そもそもミスコンに興味なかったし、唯くんのお誘いなくても出てなかったから!」


 俺が謝ると絢さんは急いでフォローしてくれた。

 そう言ってくれるのは気持ち的にはありがたいけれど、人前でステージに立つ機会も経験させてあげたかった。

 観劇もミスコン終わった後で観れたと思うし……。


「まあ、人前に出るのも緊張するよな。ミスコンミスターコン獲ったり、いい結果出したらその後も面倒くさいことになりそうだし」

「あー、お近づきになりたいとか告白とかそういうのが殺到するかもってことか?」

「そうそう。恋人がいるなら、それが防波堤になるけど、フリーの人ならワンチャン狙い増えそうだし」

「それに1年なら、他の生徒からのやっかみとかも大変そうだもんね。だから3年生の出場が多かったのかな?」


 確かにミスコンに出場するデメリットを聞くと、それはそれでリスキーな気もしてくる。

 学校の空気とか噂とかに無縁だったから、そういう考えに思い至らない自分の浅慮にため息が出そうになる。


「はいはい! もうこの話は終わり! お好み焼きいい感じに焼けてきたし、食べよ食べよ!」

「お、まじだ、もう食えんじゃん。ヘラで4等分して食べ比べしよーぜ!」


 絢さんが話を終わらせる。

 そして佐藤が自分の近くのヘラで手慣れたようにお好み焼きを割っていく。

 なんとなしに俺が絢さんのほうを向くと、彼女も俺のほうに視線を向けていて目が合う。

 ちょっと気恥ずかしくなってすぐにお好み焼きに視線をズラしてしまう。

 佐藤からヘラを受け取り、お好み焼きを割るがなかなか上手くいかず、不格好な4等分ができてしまった。

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