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文化祭 準備と姦しさ

「白鳥くん、ふっつーに似合ってたね」

「うんうん、ちょっとホラー感あったけど」

「本当に見た目整えたら実は……みたいなことあるんじゃない?」


 キャーキャーと衣装を着替えながら盛り上がる女子たち。

 私はその話を聞きながら内心ため息を吐いていた。

 その話題の中心の唯くんは軽く教室でサイズのチェックという名のお披露目を終わらせて、もう既に帰ってしまっていた。

 もう少し見たかったなとは思ったけれど、結構無理をして残ってもらってたから仕方ない。

 私含め、唯くん以外はまだ残って内装などの最終準備をしたり、料理班はクッキーを焼いたりと作業をすることになっている。

 流石に着替えが終わったら話題も唯くんから変わるとは思うけれど……。


「絢ちゃん、なんか元気なくなーい?」

「え、そんなことないけど」


 私がずっとだんまりだったからだろうか、近くで着替えていた子がそう話しかけてきた。


「いつもよりローテンションじゃん。あ、彼氏のことで盛り上がられててヤキモチー?」

「だから彼氏とかじゃないって。ただの友達」

「ふーん。じゃあ私白鳥君を文化祭デートに誘おっかなー」


 ニヤニヤとした顔でからかうように言ってくるクラスメイト。

 本気じゃないのはわかってるけど、なんかイラっとしてしまう。


「別に私が許可することじゃないし、唯くんがよかったらいいんじゃない?」

「もう、絢ちゃんそんな怒んないでってー。冗談だからー」

「だから怒ってないって」


 嘘。

 内心もうめちゃくちゃイラっとしてる。

 多分、声色も硬いだろうし、それも相手には伝わっているんだろう。

 特に私がイラっとしてるのは私が揶揄われていることじゃなくて、唯くんに注目が集まってること。


 体育祭まではただの地味なよくわからない男子って言ってたくせに、ちょっと活躍して、ちょっと女装が似合ってたってだけでキャーキャー騒いじゃってさ。

 わかってないよね。

 唯くんの魅力はそんな浅いところにあるんじゃない。

 仕事に対する真摯な態度だったり、陰で凄く頑張ってる努力家だったり、さり気ない優しさだったり、紳士的な対応だったり。

 ルックスや運動神経だけじゃない魅力が沢山あるんだから。

 そんなことも知らないのにちょっかい掛けようなんて、唯くんに対して失礼にもほどがある。

 まあ、唯くんがそんな軽い誘いに乗らないこともわかってるし、別に心配とかはしてないんだけど。

 本当だよ?

 本当に心配なんて微塵もしてないんだから。


「でも、絢ちゃんを狙ってる男子は涙目だよねー。絢ちゃん、白鳥くん以外マジで眼中にないのバレバレだもん」

「眼中にないって……。別に普通にコミュニケーションとってるじゃん」

「それはそうだけどさ。白鳥くんと他の男子とじゃ全然声色とかテンション違うの傍から見てもわかるもん」

「あー、それわかるー」

「絢さあ、もうゲロっちゃいなよー」


 何故か話題が唯くんのことから私にシフトチェンジした。

 女子ってなんでこんなに恋バナが好きなんだろう……。

 いや、私も好きなんだけどさ、標的が自分だと本当に対応に困る。


「だから本当になんでもないって。一番仲のいい男友達だけど、私も唯くんもバイトが忙しくて恋愛してる暇だってないんだから」

「そういえば、白鳥くんって学校終わったらすぐに帰ってること多いけど、なんのバイトしてるの?」

「絢はスーパーなのは知ってるけどさー、白鳥くんはマジで謎多いよね」

「それなー。なんか怪しいバイトでもしてたりして。歳偽ってホストとか」

「なにそれマンガかよ」


 好き勝手な想像を繰り広げるクラスメイトたち。

 

 そういえば唯くん、なんのバイトをしているって設定なんだろう。

 和樹くんなら知ってるのかもしれないけど、私は唯くんの仕事を知ってるから、その設定について聞いたことがない。

 ヤバい、どうしよう……。


「白鳥君、知り合いの人のお手伝いやってるって和くんが言ってたよ。なんか将来のためにお金貯めてるんたまって」


 私がどう言い繕うか迷っていると、着替え終わった香菜が助け舟を出してくれた。


「高一から将来のためって真面目くんかよー。いや、普段から真面目くんっぽいけど」

「佐藤くん情報なら信憑性高いねー」

「てかてか、香菜も佐藤君とはどうなのよー。幼馴染みなんでしょ?」

「私も和くんとは別に……」

「でもでも本当はー?」


 話題の移り変わりは目まぐるしいもので、香菜と和樹くんの関係に話が逸れていった。


 香菜、ごめん。

 でもすっごく助かったよ。


 心のなかで香菜に感謝と謝罪をしながら着替えを済ませる。


「ほら、そろそろ教室戻らないと帰るの遅くなっちゃうよ」

「あ、本当だ」

「ヤバいヤバい! 男子怒っちゃう!」

「急げ急げー!」


 私はそう忠告して、先に更衣室を出て教室へ向かった。

 クラスメイトたちも慌てて着替えを済ませ教室へ戻り、そこからは唯くん以外のみんなで下校時間まで文化祭の準備をしたのだった。

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