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交換条件

 風祭さんの突然の告白に思考停止がしてしまう。


「えっと、いきなりでごめん! もしバレたら転校しなきゃいけないんだよね!? それなら私も絶対に誰にも言わない! 言わないから、私にお芝居を教えてください!」


 そう言いながら、俺の元へ歩いてくる風祭さん。

 言い終わる頃には簡単に触れられるほどの距離までになっていた。

 あまりの圧に俺はついつい一歩後ずさってしまう。


「それは……黙ってる代わりの交換条件ってこと……ですか?」

「いや、あの、別に脅してるとかそういうわけじゃないんだけど、せっかくプロの現場で芝居をしてた経験のある人が同じクラスにいるんだし、私が秘密を守っていたらその人が転校しなくて済むのなら……と思って! それに私の秘密も知られてしまったわけだし、とても図々しいお願いだとは思うんだけど、その、もしよければ……」


 俺が険しい顔をしたからだろうか、焦ったように言葉を紡ぐ風祭さん。

 確かに彼女が言うことは彼女はもちろん、俺にとってもメリットがある。

 それに同じクラスに事情を知っている人がいれば、いざという時に役に立つこともあるだろう。

 それを俺が芝居を教えることによって協力者ができるのなら、悪くはない交換条件だと思う。


 それなら仕方がない……か。


「……わかりました。俺の秘密を誰にも喋らない……ということを厳守してくれるのなら、その条件を飲みますよ」

「本当!? ありがとう!」


 降ろしていた俺の両手を彼女の両手が包み込み、ギュッと握りしめてきた。

 役者を目指したいというだけあって、彼女の容姿は整っている。

 パッチリとした大きく茶色がかった瞳には吸い込まれそうな魅力がある。

 その子が手を握ってきて懇願してくるようなことをしたら、普通の男ならこれだけで恋に落ちるんだろうな……なんて思うってしまう。

 でもこちとら見飽きるほどに美形と関わってきたのだから、これくらいはどうということはない。


「んんっ。……とりあえず、これからのことを決めていきましょうか」

「うん! わかった! ありがとう!」


 どうということはない……のだけれど、それでも照れくさいことには変わりない。

 俺だって思春期の男子高校生だ。

 芝居ならこの距離で肉体的接触をされても、役として立っているので心が乱されることはない。

 けれど、今は芝居とは関係ない素の自分だし、それでこういうことをされたら気恥ずかしくなってしまうのは仕方ないだろう。

 俺は照れ隠しで視線を彼女から逸らしながらそう告げたのだった。

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