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実写映画の撮影 スペインバルにて

うおおお、遅刻だぁ!!!

「顔合わせお疲れ様っす! カンパーイ!」

「乾杯。ソフトドリンクですけどね」

「乾杯。私たち未成年ですから」


 ハジメくんの音頭に合わせて俺たちも乾杯をする。

 成人済みならビールとかお酒になるんだろうけど、俺たちは未成年。

 ソフトドリンクでの乾杯だ。


「あはは。まあそれはしゃーないっす。で、どうっすか? この店」


 ハジメくんが予約してくれたのは、個室のオシャレなスペインバルだった。

 よく劇団の人たちと行くと言っていただけあって店の人とも顔見知りらしく、すんなりと個室まで通された。


「初めてきた店だけど、凄く雰囲気いいですね。今度メンバーにも教えようかな」

「私もです! 打ち上げには参加したことあるんですけど、お店貸し切りだったので。というか、高校生だとこういうところに来る機会ってほぼほぼありませんし……」

「まあ、普通はそうですよね。でも、役者って飲み会好きな人多いし、この仕事続けるならこれからこういうお店使う機会増えると思いますよ」

「そっすよねー。なーんでか、役者って飲み会好きな人多いっすよねー」


 俺も打ち上げに参加したことが何度かある。

 年齢も年齢ということで毎回一次会に少しだけ参加して途中で親か咲さんの車で帰宅という流れだったのだけれど、後日一次会の後に二次会、三次会と朝まで飲んでたと何度も耳にしたっけ。


「酒が好きっていうのはもちろんあると思うけど、深く芝居について話したりできるし、そういうコミュニケーションが好きなんじゃないですかね」

「あー、結構自分の芝居論とか飛び交ってたりしてるっすもん。お酒入っててヒートアップすることもあるっすし……。ソフトドリンクであのテンションまでは持ってけねーっすけど、でもあの雰囲気好きなんすよねー」


 そう言いながらジンジャエールを口に含むハジメくん。


 まあ何だかんだ話したがりやは多いし、仲間意識が強いんだよな役者って。

 だから独特な空気があるけれど、それがどこか心地いいっていうのはわかる。

 お酒が飲めるようになったらもっと楽しいんだろうけど。


「お二人とも、本当に色んな経験されてるんですね。私はまだまだ全然知らないことばっかりで……」

「まあ、俺も唯くんも子役からやってるっすからね。俺は舞台メインで唯くんは映像メインで共演することはなかったっすけど」

「まあ物心付いた時からこの世界いますからね……。正直中学生くらいでお払い箱になると思ってましたけど」

「子役からアイドルっすもんね。最初ニュース観た時ビビったっすもん!」

「俺も仕事が少なくなった頃だし、俺に対するテコ入れと、事務所の新規プロジェクトがうまい具合に噛み合った結果ですね」


 正直噛み合いが悪ければ、今頃芸能界を引退していたか、細々と役者続けてたかの二択だったと思う。

 でも奇跡的な噛み合いでありがたいことに芸能人として忙しい日々を送らせてもらっている。

 その結果、普通の学生生活を送ることができなくなって今に至るのだけれど。


「この業界ってまじで運とタイミング次第なところあるっすもんね。めちゃくちゃ実力あっても、全然売れない人ってざらにいるっすし」

「あとはコミュ力ですよね。如何に制作陣に気に入られるか、共演者と上手くやれるか」

「特に役者だと演出の意図をいち早く汲み取って、演者同士でコミュニケーション取らないと芝居に響くっすもんね」

「なるほどなるほど……。あの、演出の意図ってお二人はどういうところで読み取ったりするんですか? 私まだまだそういうのわからなくて」


 おずおずと手を上げて尋ねてくる叶さん。

 

「普通に台本読んで……ですかね。ていうか、台本に重要な情報は書いてあるから、一通り読んで、セリフの流れやト書きでどういうことを求めてるのかを汲み取る感じです。あとはキャスティングでも色々考えられますね。なんで自分がこの役に選ばれたのか、どういう役割でこのキャスティングになったのかとか、そういうの含めて考えて演出の意図を汲み取る感じです」

「俺も似たような感じっすね。あとはある程度業界が長ければ演出家や脚本家のことも知れるっすから、人読みも入るっすね。あの人ならこういうの好きだろうなみたいな」

「うーん、今の私の実力じゃそこまで読み取るのは難しいです」


 正直これは相当経験を積まない限り難しいと思う。

 経験が浅いうちは自分のキャラを掘り下げることに必死で、他のことにまで気は回らない。

 だから叶さんがわからなくても仕方がない。


「でも叶さん、今回の読み合わせの時、普通に違和感なく掛け合いできてたし、実力はあると思いますけど」

「そっすね。最初は映像でも舞台でも観たことなかった人だったから大丈夫かなと思ったっすけど、ちゃんと台本読めてたっすし、演出の意図とも解釈が掛け離れてなかったと思うっすよ」

「そ、そうですか? よかった……。自分なりに考えて練習はしてきたんですけど、ここまでセリフ量が多い役をやったのは初めてだったので……」


 確かに彼女が以前出演していた作品はセリフ数も少なかったし、登場シーンも少なかった。

 しかし今回は主役。

 今までとは比べ物にならないくらいの情報量を処理しなくちゃいけないだろう。

 それでも今回の読み合わせがスムーズに終わったのは、彼女のレベルが決して低くないことを示していると思う。


 でも、以前観た作品よりも違和感があったのはいったい……。

 まあまだ台本を貰って日数が経ってないし、練度不足のせいなのかもしれない。

 後々理由はわかるだろう……。


 そう考えていると個室のドアをノックする音が聞こえた。


「お、ご飯来たみたいっすね! じゃあとりあえずこの話は後々ってことで!」


 ハジメくんの言葉で一旦この話は終わり、俺たちは届いた料理に舌鼓をうつことにしたのだった。

役者とか芸能系の人って本当に飲み会好きですよね

てか、お酒好きな人多い気がします

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