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夏休みの始まり⑤

役者、お芝居の話になるとついつい熱が入って喋りがち

 そこそこ長く語ってしまったので、麦茶で喉を潤す。

 

 なんか凄い勢いで語ってしまった気がする……。

 いや、気がするじゃなくてめっちゃ語ってたわ。


 絢さんが俺の長いアドバイスをノートに書いている間に、少しクールダウンして自分の言動を省みてしまう。

 演技に関しての話題だとついつい熱が入って喋りすぎてしまうのは悪い癖だ。

 でも彼女みたいに自分の話を真剣に聞いてくれて、疑問に感じたことやわからないことをストレートに聞いてくれるとどうしても自分が伝えられることは伝えたいと思ってしまう。

 それがもしかしたら説教臭くなったり偉そうに聞こえてしまうかもしれないけれど、それを感じさせずに伝えるのは凄く難しいな。


「よし書けた! あれ、唯くん、どうしたの? 難しい顔してるけど」

「ん、ああ、別になんでもないよ。ちょっと語りすぎたかなと思ってね」

「でも、私凄く助かってるしありがたいよ!」

「……そっか。そう言ってもらえると助かるかな」


 絢さんはずいっと顔を近づけながら力説してくる。

 その圧にちょっと押されながらも、そう言ってくれることに安心した。


「とりあえずさっきのアドバイスは全部書けたけど、他にはなにかある?」

「あー、そうだな……。まあ色々あるけれど、流石にいっぺんに伝えてもキャパオーバーするし、今のところはそれくらいにしておいたほうがいいと思う」

「うっ、まあ確かに……。考えること多すぎて頭痛くなりそうだもん」


 そう言いながら頭に手を当てる絢さん。

 その様子を見て、俺も苦笑してしまう。

 今回伝えたことは台本を読む上での基礎ではあるけれど、それでもきちんと芝居を勉強し始めた人にとっては難しいことだ。

 普通に読んでたものを、一つ一つ考えながら読むことは慣れていても結構なカロリーを消費するくらい頭を使うのだから。


「とりあえず最初は本を全部きちんと楽しんで読むことが大事だからね。そしてその後に流れやキャラクターを把握しながら読み返す。次にセリフの意図、最後にセンテンス一つ一つの読解。この流れでやったらいいと思うよ」

「なるほどなるほど。その順番ね」

「最初から意図を汲み取ろうとか身構えちゃうと疲れちゃうからね」


 台本でも最初から一つ一つに意味を見出そうとすると、逆にこんがらがったり間違った解釈をしてしまったりするからな。

 だからまずは難しいことは考えずに台本を全部読んで流れを把握したあとに演じ方やセリフの解釈を考えることが大事だと俺は思っている。


「正直このテキスト量でも大変だーって思っちゃうもん。でも、唯くんはこれ以上の量の台本を読んでるんでしょ?」

「そりゃ年期が全然違うしな。ノウハウを知ってるわけだし、慣れもあるからもう当たり前になったよ」

「ふぇぇぇ、凄いなぁ」

「絢さんも慣れていかないとこれから大変になっていくからね? これをクリアした後はもっとセリフ量の多い課題を出すつもりだし」


 夏休み終わった後も外郎売を使っての表現をしたり、ハムレットのこの一人芝居の完成度を上げたりに使うつもりだから、まだまだ先になると思うけれど。

 それでもいつかは俺との掛け合いの芝居もやろうと思っている。

 その場合、自分のキャラクターの解釈を深めるだけじゃなく、掛け合うキャラクターの読解も必要になり、その難易度はさらに跳ね上がるのだから。


「それは凄く楽しみではあるけど怖くもあるなぁ……。あ、でもそしたら唯くんと掛け合ったりするのかな?」

「まあその予定ではあるかな。今回は台本の読みと芝居に慣れてもらうために一人芝居をやってもらうけど、基本芝居って誰かと掛け合うことのほうが多いしな」

「わー、めっちゃ楽しみ! 今までずっと一人でやってたから掛け合いやってみたい!」

「そっか。じゃあ今回の課題をきちんとこなせるようにならなきゃな」

「うん、頑張る!」


 両手をグッと握りしめて満面の笑みを見せる絢さん。

 自分が役者を目指したいってことを誰にも言ってこなかったんだから、誰かと芝居をするって経験はないというのはわかっていた。

 もちろん幼稚園のお遊戯とかではあるのかもしれないけれど、本気で目指し始めた後はずっと一人だったんだろう。

 誰かとの掛け合いは難しいし、上手く行かないことも多いし、自分が考えてきた芝居と相手の芝居が噛み合わずに自分の芝居を変えなきゃいけないこともある。

 でも、相手の芝居に当てられて自分の芝居が進化したり、お互いの意図を汲み取ってシーンを作っていける快感は堪らなく楽しくて病みつきになってしまってさらに芝居が好きになる。

 それを彼女にも感じて知ってほしい。

 誰かと演じる楽しさと難しさを彼女は知らないと思うから。


 それからは軽く台本をノートに書き写させたり、ノートの作り方を教えたりして家での時間を過ごした。

 そしてスマホのアラームが鳴り響く。


「よし、ちょうど時間だし、俺ちょっと準備してくるわ」

「はーい! それまで今日教えてもらったことの復習してるねー」


 俺はソファから立ち上がって自室へと向かう。

 シャワーも浴びたし着替えも終えてる。

 あとは事務所までの軽い変装とレッスン用のジャージやウェア、あとは打ち合わせに必要なものを仕事用のリュックに詰めてリビングへと向かった。

 そして二人で家を後にしたのだった。

一話どれくらいの文字数が読みやすいのかわからない……

誰か……教えて……くださ……

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