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テスト終わり ラーメン屋

めちゃくちゃ豚骨ラーメンを食べたくなってきた……。

「あー、歌った歌ったー」

「私、もう喉ガラガラ……」


 カラオケが終わって店を出ると、もうすでに日は沈んでいた。

 久しぶりにこんな時間まで遊んでたな。

 仕事やレッスンならもっと遅い時間帯に帰宅するんだけど、こんな時間まで友達と一緒というのは不思議な感じがする。


「喉ヤバいなら水飲めばだいぶマシになるぞ。あと油分とかいいから豚骨ラーメンとかオススメ」

「豚骨ラーメン! あー、なんか食べたくなってきたー!」

「お、いいね! 今から食いに行くか!?」


 ラーメン、そういえば最近食ってないな。

 食べに行くのもありっちゃありだな。


「私、家でお母さんがもう夕ご飯作っちゃってるから……」

「あ、俺も親に連絡入れてないから多分晩飯作っちゃってるかもな。しゃーない、もうここで解散にするか」

「そうだね! みんなでラーメン食べに行くのはまた今度ってことで!」


 若干みんなでラーメンを食べに行きたい気持ちもあったが、うちでご飯が用意されているのなら仕方ない。

 佐藤は帰り道が神崎さんと同じなので、ついでに送っていくとのことで俺と絢さんは二人と別れた。


「じゃあ俺らも帰るか」

「その前にラーメン、食べに行こうよ」


 俺も帰ろうとしたところ、絢さんにそう呼び止められる。


「あれ? 今度行くんじゃないの?」

「それはみんなで行くのがでしょ? 唯くんと行くのは今できるじゃん!」

「屁理屈なんだよなぁ……。でもまあ、俺も正直ラーメンの口になってたしいいよ」

「わーい! 少ししたところに博多豚骨のお店あるからそこに行こー!」


 そう言うと絢さんはずんずんと歩いていく。


「はいはい、仰せのままに」


 この辺りのラーメン屋は詳しくないので、俺は絢さんのテンションの上がり様に苦笑しながら離れないように後に続くのだった。


 カラオケボックスから数分歩いてラーメン屋に着く。

 そこはこじんまりとしたラーメン屋だったが、豚骨の匂いが店外まで漂い食欲をそそられる。


「いらっしゃい!」


 カウンターでお湯を切っている店主さんに会釈をし、食券機へと向かった。


「ここはね、オーソドックスなラーメンが美味しいよ! 地元のラーメンを思い出すんだよね!」


 絢さんは千円札を食券機に突っ込んでラーメンと書かれてあるボタンを押した。


 ここは経験者に倣うべきだろう。

 それに本場の人間が絶賛しているのだから、同じものを選んで失敗はないはずだ。


 俺も絢さんと同じように千円札を入れてラーメンのボタンを押した。

 空いてるカウンター席に絢さんと並んで座り、カウンターの上に食券を置いた。

 店主さんが食券を受け取って調理を始める。


「カラオケ楽しかったね!」


 ラーメンを待っていると隣の絢さんが俺に話しかけてきた。


「そうだな。まあ、ちょっとだけ精神的に疲れたけど」

「唯くん歌い方が凄く様になってたからねー。このメンバー以外だとあんまり行かないほうがいいかもね」

「このメンバーでもギリギリだけどな」

「じゃあ私と二人きりなら大丈夫?」

「それはまあ……。でも、それはまた別の意味で精神的に疲れそうだけど」


 今回は複数人だったからよかったけれど、今でもまだ女の子と二人きりでのカラオケはちょっと緊張してしまうと思う。


「えー、もうそろそろ慣れてよー。毎朝二人きりで色々やってるのにー」

「だから言い方考えような? 人に聞かれても誤解されないような言い回しを覚えてくれ」

「はーい。まあ、唯くんの反応みたくて言ってるんだけど」

「うん、尚更たちが悪いよねそれ」

「あはは、でも唯くん以外には言わないから安心して?」


 際どい言い回しだけじゃなくて、ナチュラルにこういうこと言ってくるのも直してほしいんだけれど……。


「ふーん、俺が特別ってこと?」


 やられっぱなしも癪なので俺も反撃のつもりでそんなことを言ってみる。

 どうだ? これで少しは自分の言動を省みるだろ?


「うん、唯くんは特別だよ。特別で大事な人」

「は?」

「だから、唯くんは特別で大事な人って言ったの」


 反撃のつもりの言葉にカウンターを食らう。


「えっと、その、それってどういう意味……」

「だってこんなに一緒にいて、お互いの秘密知ってるんだから、他の人より特別な人ってことは間違ってないでしょ?」

「あ、そういう……」

「あれー? いったい何を想像してたのかなー?」


 ニヤニヤとからかうような表情で、絢さんは俺の左肩を指でツンツンしてくる。

 俺は別に……とそっぽを向きながら誤魔化す。

 いやまあ、随分と雑な誤魔化しではあるけれど、これ以上何か言うとまた反撃を食らいそうなので余計なことを言わないでおいたほうがいいだろう。


 あれ? 特別な人ってことはわかったけど、大事な人ってどういうことだ?

 芝居を教えてる人間だから大事ってことなのかな?

 確かにそう考えれば辻褄が合うな……。

 結局、俺が変な勘違いをしただけか。

 あーもう恥ずかしい……。


「はい、ラーメンお待ちどう」

「あ、ありがとうございます」


 絢さんのツンツン攻撃に耐えていたら丁度注文していたラーメンが出された。

 お礼を言って、ラーメンをカウンターに置く。

 白濁色のスープに浸っているストレートの細麺。

 薄切りチャーシューときくらげに紅生姜とネギが何とも食欲を唆る。


「いただきます」

「いただきまーす!」


 二人で手を合わせて割り箸を割り麺を啜った。


「うん、めっちゃ美味いな」

「でしょー! このバリカタの麺とスープの相性が最高なんだよ!」


 レンゲでスープを掬って口を付けると、口の中に豚骨のクリーミーだけれど強い旨味が広がる。

 チェーン店の豚骨ラーメンも凄く美味かったけれど、また違った美味しさがある。


「豚骨ラーメンって奥が深いんだよ? 博多と熊本でも全然味が違うんだもん」

「へえ、そうなのか。どう違うんだ?」

「味の濃さが全然違うんだよね。博多は優しい豚骨だけど、熊本はヘビーボクサーのパンチみたいな」

「お、おお、それはまた……」

「でもどっちも最高に美味しいんだよね。いつか九州に行った時に食べてみなよ!」

「そうだな。いつか行ったら食べ比べしてみるわ」


 それを最後にお互いに無言で麺を啜る。

 きくらげの食感やネギ、紅生姜でこってりした口の中をリセットし、またスープの絡んだ麺を食す。


 これは病みつきになるな……。

 チャーシューも美味しいし。


 そしてあっという間にラーメンを完食し、お冷でお口直しをした。


 美味しいけど、もう少し麺が欲しくなるな……。


「あ、すみません! 替え玉1つお願いします!」

「替え玉一丁!」


 そんなことを考えていると絢さんがカウンターに100円を置いて替え玉を注文していた。


「替え玉ってチェーン店以外にもあるんだ……」

「豚骨ラーメンには替え玉必須だからね! 唯くんは頼まないの?」

「あー、スープ結構飲んじゃったし」

「ふっふっふ。素人がやりそうなことじゃのう」


 彼女は腕を組み、ドヤ顔で煽ってくる。


 そこはかとなくムカつく顔してるな……。

 でも、俺が素人なのは否定できないのがさらにムカつく……。

 

「次に来た時は頼むからいいし。また来れる理由ができたから逆にラッキーだし」

「強がりおる強がりおる。でも次に来る時はちゃんと私も誘ってね?」

「予定が合えばな」


 替え玉はすぐに届き、絢さんは替え玉をスープに入れてまた美味しそうに麺を啜っている。

 その姿を見て、俺はまたこの店に来て替え玉を堪能することを心に決めたのだった。

九州に行ったら是非色んなラーメンを食べてみてください。

めちゃくちゃ美味いです。

熊本ラーメンの濃厚さとニンニクの暴力は堪りません。

焦がしニンニクの風味が食欲をそそります。

バリカタの麺も濃厚なスープに良く合います。

替え玉でまた違った硬さの麺を1つのスープで味わえます。

博多ラーメンの優しくも濃厚な味も堪りません。

スルスルと麺が消えてしまいます。

美味いです。

スープもクドくない濃厚さなので、気がついたらスープがなくなってることもあります。

美味いです。

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