ファミレスでテスト勉強①
テスト勉強回です
絢さんと出会って数日。
朝の練習を終えて、ようやく最初のセンテンスは慣れてきたみたいだなと思いながら次に教える内容を考えていた時にそれは突然に訪れた。
「勉強を教えてください!」
「……は?」
クールダウンも終わって、あとはまた学校でと別れようと思っていると、絢さんは真剣な表情で頭を下げて俺にそう告げてくる。
「だから、私に勉強を教えてください!」
「いや、なんで俺に? 俺より成績いいやつ普通にいるだろ?」
「それでも私が仲のいい友達の中で一番成績いいの唯くんだもん」
「え、そうなのか? 俺中間でギリギリ10位くらいなんだけど」
「十分です! ていうか、あれだけ忙しいのによくその順位取れたよね」
「そりゃ授業をちゃんと聞いてるし、空き時間使って最低限の勉強はしてるからな」
学校のテストなら、授業を聞いていればどういうところが出題されるか何となくわかるし、教科書にも詳しく書かれてあるから、宿題や練習問題をその日のうちにやっていればそこそこ記憶として定着してある程度の点数は取れる。
というか俺の場合頭がいいわけじゃなくてただ効率がいいだけなんだろうけど。
「なんかスペックの違いを思い知らされる……」
「そんなに凄いもんでもないとは思うけど」
「とりあえず、放課後空いてる日に勉強見てもらえることできないかな? 私、テスト期間中はバイトも極力減らしてるから、多分予定は合わせられるし」
「俺の方も他のメンバーと同じ時期にテストあるから、予定を調整してもらってるし、そこそこ融通は効くと思うからそれは構わないけど」
「本当!?」
「でも、いきなり俺と勉強するって言っても場所がなぁ。学校の図書室とか駅前のファミレスだと多分他の生徒にも見られるだろうし」
「二人きりじゃないといいんでしょ? だったら私の友達も含めてファミレスでやろうよ。そっちも佐藤くん誘ってやればいいでしょ? 多分部活もテスト休みに入るだろうし」
「あー、そういえば佐藤からも教えてくれって言われてたな。でも、そっちの友達はいいのか?」
佐藤なら女子と勉強会なら普通に喜びそうだし問題はないと思うけれど、絢さんの友達は男子と勉強するのが嫌かもしれないし。
そもそもあまり絡みのない相手と勉強するのも抵抗ある人も少なくないだろうしな。
「それは大丈夫じゃないかな? 佐藤くんと幼なじみらしいし」
「あー、そうなんだ。佐藤の交友関係とか全然聞いたことなかったから同じクラスに幼なじみがいるなんて知らなかった」
あいつと二人で遊んだり、クラスでよく話してるけど、部活の話とか普通の世間話をすることが多いんだよな。
俺は基本的に聞き専だし、お互いの交友関係は全然知らない。
というか、そもそも気にしないしな。
「私はよく話すよー。ていうか、香菜が一方的に佐藤くんの話してる」
「あー、そういう……」
「そうそう、そういうこと」
その香菜さんとやらは佐藤に対して何やら想いがあるというのは察した。
あいつ、彼女欲しいとか言ってたくせに……。
鈍感なのか近すぎて気づかないのか……。
どちらにせよ難儀なやつだ。
「あー、おっけー。色々把握した。じゃあ近いうちにやろうか。放課後何もない時に連絡するから」
「うん、お願いしまーす。香菜には私から言っとくから」
「うまい具合に説明しといてくれ……ってもうそろそろ帰って準備しないとな」
「あ、本当だ! じゃあまた学校でね!」
約束を交わして解散して帰宅し、シャワーと朝食を済ませて学校へと向かった。
それから数日後。
絢さんと予定を擦り合わせ、放課後の勉強会の日となった。
書店で少し用事を済ませたかったので、絢さんたちに先にファミレスへと向かってもらい、俺と佐藤はあとで合流する形だ。
「で、唯は書店でなんの用事あるんだよ」
「ちょっと買いたい本があってな」
「参考書じゃなくて本かよ。優等生さんは余裕だねー」
「うっせ。今日が新刊の発売日だったんだよ。勉強会解散後だと売り切れてるかもしれないからな」
「普通に電子書籍でいいじゃねぇか」
「もちろん電子書籍でも買うけど、紙の本でも読みたいんだよ」
「拘りってやつ?」
「そ、拘りってやつ」
外出先だと手軽に読める電子書籍で読み返したりすることが多いけれど、家だとしっかりと紙の本で読みたい派だ。
ページを捲る感覚とか、紙の手触りとか本を読んでる感じがして好きなんだよな。
それに実は近々、この作品の実写ドラマに出演オファーが来てるから、その研究も兼ねて、気になったシーンとかページに付箋を貼ったりしたいってのもある。
だから紙で2冊買っておきたい。
「すまん、待たせた」
「うんにゃ、大して待ってないから気にすんな」
「さんきゅ。じゃ、行くか」
お目当ての本を見つけて購入し、店内で待っている佐藤の元へ合流してファミレスへと向かった。
「いらっしゃいませー」
入店すると店員さんに出迎えられ、合流だという旨を伝える。
店内を見渡すと、奥の窓際の席に勉強を始めてる絢さんたちの姿があった。
「お疲れー! 待たせちまったな!」
俺よりも先に彼女たちを見つけたであろう佐藤が、俺を先導して彼女たちの元へと向かっていって声を掛けた。
「あ、和くん。全然大丈夫だよ。あと、えっと白鳥くん……だよね?」
「どうも。話すのは初めてですよね。神崎さん」
佐藤の声にパッと表情を明るくして反応する黒髪おさげの赤縁眼鏡の女の子。
絢さんの友人であり、佐藤の幼なじみの神崎さんだ。
彼女は人見知りなのか、恐る恐ると俺に話しかけてくる。
俺は初めましてと軽く会釈をして、佐藤と二人、絢さんと加藤さんの対面へと座った。
「お疲れ様白鳥くん、佐藤くん。ごめんね、急に誘っちゃって」
「いや、俺たちも勉強会の予定だったから全然いいっすよ」
白々しく、そういう体で話す俺と絢さん。
一応俺たちは学校では前まで通りのただのクラスメイトで過ごしている。
わざわざ話し掛けたりすることも、一緒に行動することもない。
クラスの人気の女の子と大して目立たない俺がいきなり仲良くなっていたら、変な勘繰りや誤解を招きかねないし。
「それならよかった。香菜も成績いいけど、どうせなら白鳥くんからも教わりたいなーと思ってさ。どうせならこれを期に仲良くなりたいし! 佐藤くんともね!」
「コミュ力高いっすね」
「おいおい、テンション低いぞ唯! 香菜から色々話は聞いてたけど、風祭さんとまともに話すのは初めてだよな! 唯共々よろしくな! あ、絢ちゃんって呼んでもいい?」
「もう和くん!」
一気に距離を詰める佐藤を嗜める神崎さん。
お調子者の佐藤のお目付け役なのか、それとも嫉妬なのか……。
「あはは、いいよー。私も和樹くんって呼ぶから。あと白鳥くんも唯くんって呼んでもいい? 私のことも下の名前で呼んでくれていいから。あと敬語も無しね」
「あー、じゃあ絢さんで」
「距離があるなー」
「まあこいつ人見知りだから。香菜ほどじゃないけど」
「もう和くん! 余計なことは言わなくていいから!」
恥ずかしそうに佐藤の話を遮る神崎さん。
とりあえず、最初の交流は無事に済んだので店員さんを呼んで、俺と佐藤の分のドリンクバーを注文した。
そしてドリンクバーで飲み物を注ぎ、また席に戻る。
「さて、俺等も勉強始めようか」
「へーい」
「和くん、そんなに嫌そうにしないの」
「へいへーい」
「やる気ないなら教えないからな?」
「ウソウソ! やりますやります!」
「とりあえず、数学からやろうか。解き方のコツとか教えるから」
「あ、それ私も教えてほしい!」
「わからない問題あったら言ってくれ。俺にわかるところなら教えるよ」
「ありがとう唯くん!」
そして俺たちは課題や参考書へと意識を向け、ノートへペンを走らせるのだった。
テスト勉強って教えられる方はもちろん、教える方も結構為になるんですよね




