お知らせ
今後は話をガッツリと変えた改訂版のほうをメインで更新させていただきます
よろしくお願いいたします
「これが重軽石かぁ……」
鳥居のトンネルを抜けた先にはまた立派なお社があり、そしてその近くには有名な重軽石があった。
「えっと、これって想像よりも軽かったら願いが叶って、重かったら叶わないんだっけ?」
「そうだね。まあ、絶対にその通りになるわけではないけど」
「だけどよー、やっぱり気にしちまうよなー」
絢さんが尋ねてきたので返事を返し、それに佐藤も反応する。
でも確かにジンクスっていうか、そういうのはどうしたって気になっちゃうもんだよな。
特に何かしらを成し遂げたいと思っている人なら。
絢さんはオーディション、佐藤はインハイや選手権。
もしかしたら神崎さんや瀬川君、木ノ下さんも何かしら叶えたい願い事があるかもしれない。
そして俺も、これからの作品のヒット祈願がある。
「で、誰から持つ? 二人ずつ持てそうだけど」
俺がみんなに尋ねると、自分が……っていう人はいない。
佐藤なら我先に……と立候補するかと思ったけれど、意外と二の足を踏んでるみたいだ。
瀬川君、神崎さん、木ノ下さんは性格的に一番手に名乗りを上げるタイプじゃないし。
仕方ない。ここは俺から行くか。
「じゃあ、俺が一番手で行くよ。もう一人は誰にする?」
俺は石の前に立って振り返り尋ねる。
「ゆ、唯くんが行くなら私やる!」
すると絢さんが手を上げてから、俺の隣に立った。
そして深く深呼吸をして石に手を掛ける。
うーん、気を入れすぎちゃってるなぁ。
気持ちはわかるけどちょっと勿体ない。
よし、ちょっとズルいけど悪知恵を授けるか。
「絢さん、ちょっと耳を拝借」
「えっ……?」
そして俺は絢さんにこっそり耳打ちをする。
とある言葉を呟くと、絢さんの肩の力が抜けた。
「あ、ありがとう唯くん!」
「どうせならいい思い出にしたいしね。じゃあ、せーので持ち上げようか」
「うん!」
「じゃあ行くよ。せーの!」
俺の音頭で絢さんと石を持ち上げた。
「わー! 持てた持てた! よかったー!」
「よかったじゃん。俺も、うん、想像よりも軽くてよかったな」
「うん! 唯くんのお陰だよ! ありがと!」
「どういたしまして。ほら、みんなも」
俺と絢さんは石を元に戻してみんなの元へと戻る。
「え、あ、じゃ、じゃあ次は俺行こっかな!」
「じゃあ、わ、私も!」
俺たちが軽々と持てた姿を見て、他のみんなも力が抜けたようだ。
佐藤と神崎さんが二人で石の方へと向かう。
すれ違う際、佐藤の背中をパンと叩く。
「ん、なんだよ唯」
「石なんだから重くて当然……だろ?」
「……ああ、そうだな!」
そう言う俺にニカッとサムズアップする佐藤。
俺は佐藤にふらふらと手を振り、瀬川君たちの元へと戻った。
「ね、ねえ、白鳥君。あの、石を持つ前に風祭さんになんて言ったの?」
瀬川君が尋ねてくる。
木ノ下さんも少し気になるようでチラチラとこちらを見てきた。
「んー、別に大したことは言ってないよ。さっき佐藤に言った言葉と一緒さ」
「え、あ、ああ、な、なるほど……。で、でも、確かに最初から重いものだと思っておけば、いいのかも」
「そうそう。何十キロくらいの重さだと思っておけば、大抵軽く感じるから」
そう。俺が絢さんに告げたのは、最初から凄く重いものだと思って持ち上げればいいってこと。
そしたら想像してたよりも軽いって思えるだろうし。
まあ、これがジンクス的にやっていい方法なのかはわからないけど。
瀬川君たちに説明をしてると佐藤と神崎さんも持ち上げ終わりこちらに戻ってきた。
そしてその後には瀬川君と木ノ下さんも石を持ち上げ、最後に全員でお社に手を合わせて次の場所へと向かった。




