バレンタイン 試作
「ということで、香菜先生! チョコ作りのご指導お願いします!」
「はーい。お互いに頑張ろうね」
バレンタインが数日後に迫った日曜日。
私は唯くんに上げるためのチョコを作るために香菜の家へとお邪魔している。
自炊で普通の料理は作れるとはいえ、お菓子作りは初めての私は、毎年和樹くんにバレンタインのお菓子を上げている香菜に教えを乞うた。
「それで、絢ちゃんはどんなチョコを作ろうと思ってるの?」
「えっと、ビターな感じで軽く摘めるようなチョコを作ろうと思ってるんだけど」
「じゃあ、ビターチョコを使ったチョコレートラスクとかどうかな? 作りやすいし一口で食べられるし、サクサクっとした食感で食べてて飽きないと思うよ?」
「じゃあそれで!」
簡単にアイディアが出てくる香菜に舌を巻きつつ、イエスマンになる私。
こういうのは経験者の意見を採用したほうがいいもんね!
「じゃあ早速始めようか。パンもチョコもうちにあるし。一応、前日にもうちに来て作るんだよね?」
「迷惑じゃなければ!」
「じゃあ、今日は終わったらチョコパーティーだね」
ニコリと可愛らしく笑う香菜。
よく和樹くんはこんな可愛くて健気な子が身近にいてドキドキしないなぁ。
何人か告白した子もいるらしいけど、全員断られてるし……。
「あ、タブレットでレシピ検索できるから、それを見ながらやろっか。今準備するね」
そう言って香菜はタブレットを取りにテトテトとリビングへと向かった。
うーん、いちいち仕草が可愛らしいんだよなー香菜は。
本人はあまり自分に自信がないみたいだけど、私から見たら羨ましいくらいに女の子らしくて可愛い子だ。
控えめな性格も、人のことをよく見ていて気を使えるところもとても魅力的だと思う。
顔も眼鏡と黒髪が似合う知的で綺麗な顔立ちなのも尚更羨ましい。
もし私がいつか清楚系な役を演じることがあれば香菜を参考にしよう。
「絢ちゃん、おまたせー」
「ううん、全然。よし、始めよう!」
「おー!」
二人一緒に拳を突き上げて私達はお菓子作りを始めた。




