絢と咲の出会い
「えっと、なんかそわそわするね……」
「んー、まあ唐突だったしね。ていうか、ごめんね、バイト休ませちゃって」
「あ、それはちゃんと代わりの人がいたから大丈夫」
咲さんに宣材写真の件を相談した日から数日後、俺と絢さんは咲さんに都内の喫茶店へと呼び出された。
ちょうど学校が終わってから仕事の間の時間。
俺は絢さんにバイトを休んでもらって、一緒に指定された店へと向かった。
もちろん、変装はしたまま。
思ったよりも早く到着したので、紅茶を頼んで2人並んでソファに身を委ねて咲さんの到着を待っていた。
「ていうか、咲さんも唐突にどうしたんだろ。スケジュール決まったのならメッセージでいいのに」
「もしかして私の品定め……的な?」
「うーん……確かにそれはありえるかも」
「やっぱり!? 私何か言われちゃうのかな!?」
あわあわと涙目になる絢さん。
確かに宣材写真を撮る前に、絢さんがどういう人なのか直接見ておきたいってこともあるのかもな。
軽くは俺がどういう人物なのかは伝えてはいるけど、百聞は一見に如かずってやつか。
「別に不安がる必要はないと思うけどね。俺もいるんだし」
「そ、そっかを唯くんがいてくれるなら……ちょっと安心かな……」
俺がそう言うと、絢さんは少し安心したのかソファの背もたれに背中を預けた。
そして届いた紅茶を一口飲んでいる。
温かい紅茶で少し落ち着いてくれるといいんだけど……。
もうすっかり寒くなって、ホットが美味しい季節になった。
絢さんと出会った時は外を少し歩くだけで汗ばむような季節だったのに、月日の流れっていうのを感じてしまう。
元々慌ただしい日々で気がついたら年の瀬ってことを小さい頃から経験している。
でも今年はいつもよりももっと充実している気がする。
今までは仕事ばかりの日々だったけれど、こうやって友達と遊んだり喋ったり、学校行事に参加したりと新鮮な1年だった。
仕事と学業、そして人付き合いを並行してやるのは今までよりも大変ではあったけれど、とても楽しかった。
願わくば、少なくとも高校のうちはこの大変さが続けばいいなと思う。
「お疲れ様。待たせてしまったみたいでごめんなさいね」
俺も紅茶を飲み物思いに耽っていると咲さんが到着し、俺達の対面の席へと座った。
咲さんはお冷とおしぼりを持ってきた店員さんにコーヒーを注文する。
「あの、はじめまして! 風祭絢と言います! 今回は色々とお世話になります!」
「はじめまして。唯のマネージャーの中野咲です。お噂は兼ね兼ね。今日は急にごめんなさいね」
「いえ! それは全然!」
絢さんは緊張しているのかガチガチになりながら咲さんに挨拶をした。
咲さんはその様子を見て、微笑ましそうにくすりと笑う。
そして咲さんが注文したコーヒーが届き、それを一口。
「それでは、時間も勿体ないし早速本題に入りましょうか」




