吸血鬼を復活させたけど…これって非科学的だよね…
「……ま、まぁ悪鬼退治した後は手入れはしたが、この時代の消毒?と言う物は必要なのかもな…真鈴、暇な時にお願いするとしよう。
さて、われは風呂に入ってこの服も脱ぎたいのだが、先にお風呂を頂くぞ。」
四郎が立ちあがると俺の小雀ナイフを消毒していた真鈴が立ち上がった。
「四郎、待って。」
真鈴がそう言うとゲストルームに入って行きコンビニ袋を持ってきて四郎に渡した。
「四郎ってさ冬眠から覚めてから歯、磨いてる?」
「うむ、棺の中に歯ブラシと塩は入れておいたからな。
いつの時代でも身だしなみは大事であろう。
われは寝る前と起きた時に磨いているぞ。」
「かぁああやっぱりね~洗面台にあった古ぼけた歯ブラシは四郎のだったか、四郎、160年の時を経て歯磨きは進歩しているのよ。
今日からこれを使いなさい。」
真鈴はコンビニで買ったであろう歯ブラシと歯磨きのチューブを差し出した。
四郎は袋から磨き歯磨きチューブを取り出した。
「このブラシは判るが、これはどう使うのだ?」
「私とバスルームに来て、教えるわ。」
四郎と真鈴がバスルームに向かい、俺もついて行った。
真鈴は洗面台の前に立ち歯ブラシを四郎に持たせてその上に歯磨きのチューブを絞った。
「これを口に入れて歯を磨くのよ。」
「こうか?…おおお!」
「きゃっ!」
「うわっ!」
ミントの強い刺激を受けたからなのだろうか歯ブラシを口に入れた瞬間、四郎の顔が凶悪な吸血鬼の顔に変化した。
「凄い香りと、ううう、なんか口の中が辛いと言うかなんと言うか…凄くスースーするぞ。」
凶悪な吸血鬼の形相で四郎は口の中で歯ブラシを動かした。
「四郎ってさ、この前のスタンガンとかもそうだけど今の歯磨きのミントの刺激だと思うけど突発的に変化するわね~あ~びっくりした。」
「俺もいきなりだと驚くな。
他に何の刺激で四郎が吸血鬼顔になるかも知れないから注意しないとな。」
「まぁ…歯が剥き出しになるから磨きやすいんじゃない?」
四郎が横目で俺達を見ながらぶすっとした顔で歯を磨いていた。
「まぁ、口の中がとてもすっきりするがな…」
「刺激に慣れれば変化しなくなるかもね~」
真鈴が面白そうに言った。
その後四郎は風呂に入り、続いて真鈴、俺の順番に風呂を済ませた。
俺が風呂を上がって髪の毛を拭きながらダイニングに行くと真鈴がテーブルで凶悪な棘が幾つもついている鋼鉄製のメイスを消毒していた。
「おお!これっ迫力あるね!」
俺がメイスを手に取って持ち上げようとしたが、あまりの重さにメイスを持ったままよろめきそうになった。
「彩斗、それは普通の人間には手に負えない代物だぞ。
だがこれなら今日の悪鬼など簡単に頭を砕けると思うぞ。
たとえ腕で防御しても腕の骨を粉砕できる。」
四郎が俺からひょいとメイスを取り、軽々と手首だけで回して見せた。
やはり普通の人間の姿の時でも四郎は常人より遥かに腕力が有るのだろう。
「彩斗、明日はどうするの?
私は朝からびっちり講義が入っているからね。
でも明後日の土曜日からは月曜日まで講義無いから暇だよ~」
「俺はあの屋敷を扱う不動産業者と連絡を取って物件の図面とかどこまで値引きできるのかとかいろいろ調べるつもりだよ。
それと時田さんの連絡待ちだな。」
「時田さんて誰?」
「ああ、四郎の身分を手に入れる手続きをしてくれている探偵だよ。
大丈夫、信頼できる人だから。」
「われは暇だぞ。」
「あっそう。
ところであの家族連れの悪鬼はどうするの?
ほっておいて次の犠牲者が出るの待つ気なの?
何とか探る方法無いかしら?
そうそう、明後日もう一度皆であの屋敷に行こうよ。
敷地を全部見ないとね~泊まっても良いかもね。」
「われは明日、暇だぞ。」
「あ、うん、判った。
だけど敷地を一通り周るだけで大変だと思うよ。
何せ3万坪以上あるらしいからね。
その他隣接してる山林もその親族が持っていてほったらかしらしいんだよ。
境界線もはっきりしていない所もあるからな…そうそう!俺キャンプ道具を一式持ってるんだ!
持って行って良いかな?
もしかしたら敷地でテントを張ってアウトドアとかしてみない?」
「あら、面白そうね!
キャンプなんて何年もしていないのよ!」
「われは明日暇だぞ。」
「うんうん判った…いろいろやる事が有るわね。
でも、安くするって言っても彩斗の貯金で足りるの?
それに維持費だって掛かりそうだし…やっぱり四郎の金貨を少し売るしかないかな…四郎、それでも良いかしら?」
「別に構わんぞ、例の税金と言う物で半分持って行かれても充分おつりが来るだろうしな。
ところで明日、われは暇…」
「そうだね~、あの屋敷を購入する費用、維持費やらいろいろ考えないと…それに俺の物件も増やして家賃収入を増やさないと生活もきついよな…」
「…われは…明日…」
「四郎少し黙ってて、今大事なこと話してるから。
そうか…収入ももっと必要よね。
表向きは四郎は彩斗の会社の共同経営者、私はアルバイト、まぁ正社員でも良いけどね。
今、手取りの収入が月に60万円とか言ってたわよね。
このままじゃ屋敷を買わなくても収入増やさないといけないものね~
それと並行してやっぱりあの家族連れは絶対探りを入れるとか監視が必要よ。
今ものうのうと暮らしながら、あの娘と奥さんはともかく、あの男は次の犠牲者を探しているに違いないわ。
なんか忙しいわよ。
ねぇ、時田さんて探偵なんでしょ?
あの男の身辺調査とか頼めないの?」
「う~ん、もしもそれを頼んで時田さんが彼の正体を知ったら殺されかねないし、もしも、上手く彼の悪行を、彼が悪鬼だと知らずに暴いても、じゃあなんで俺達がそれを知っていたか?とか、首尾よく俺達があいつを退治しても今まで身辺調査した人間が殺されたり姿を消したりしたら時田さんは俺達を疑うと思うしな…それは難しいな。
ただでさえもしかしたら金貨の処理を時田さんに頼むかも知れなくなるし…」
「われは明日…暇なんだぞ!」
「あ~四郎!だから何よ?
まだ四郎が一人で外に出てあいつを監視するなんて危なくて出来ないのよ!
どこかでぼろが出て周りの人間に怪しまれちゃいけないのよ!
カラスかなんかに変身して空から監視するなんて芸当があんたに…」
「出来るぞ。」
「え?」
「え?」
俺と真鈴は四郎を見つめた。
俺と真鈴の注目を引き寄せた四郎は満足げに腕を組んだ。
「四郎、いくらなんでもそんな非科学的な…」
俺が苦笑いを浮かべて言いかけた時、いきなり風呂上がりの四郎のスウェットが椅子に落ちた。
そして、スウェットの中から見事に黒いカラスが顔を出してテーブルに乗り、俺達を見た。
俺達は固まってじっとカラスを見つめた。
カラスは満足げに目を細めて、カァ!と鳴いて飛びあがりスウェットに中に潜り込んだ。
そしてスウェットが急に盛り上がり四郎が顔を出した。
スゥェットの中で人間の体に戻る時に体がずれたらしく四郎はスウェットを前後逆に着た状態になったが、四郎は自慢げに微笑みを浮かべてコーヒーを一口飲んでエコーシガーに火を点けた。
「どうだ?」
「それ…あのさ質量とか体の中の構成とか…全然科学的じゃないよ!」
「そうよ!なんか物理に非常に違反してるわ!おかしいでしょ!」
俺達が口々に四郎に言葉を浴びせたが。四郎は平気な顔をして受け流した。
「彩斗、真鈴、そもそもわれは吸血鬼だぞ。
科学とか物理とか、そんなものは知らん、あはは。
カラスとコウモリに変化する事は出来るぞ。
非科学的?あははは。」
続く




