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吸血鬼ですが、何か? 第2部 開戦編  作者: とみなが けい
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吸血鬼を復活させたら、俺達は武器をもらい、真鈴が中二病…

マンションに着いた時は午後9時を過ぎていた。

地下駐車場に車を止めて、真鈴の大荷物を俺と四郎で持ち、エレベーターに向かう。

真鈴はこわごわと駐車場の中を見回した。


「四郎、この駐車場って隅に暗い感じの男がいるって言ってたけどさ…」

「ああ、奴は心配無いと思うぞ。

 周りには全くの無関心のようだ。」

「…それなら良いけどね。」


部屋に戻り、真鈴の荷物をゲストルームに入れて俺達はダイニングでコーヒーを飲んだ。

四郎は今日使ったダマスカス鋼のナイフの手入れをしている。

日本刀とは違う複雑な文様が入っている刃。

柄は滑り止めの皮が何重にも巻かれていて今日の血糊と共に古いシミが幾つも染み込んでいて何とも言えない風格を帯びていた。


俺と真鈴はダマスカス鋼ナイフにじっと見入っていた。


「これをあまり見つめると危ないぞ。

 魂を吸われてしまう。」

「ええ!」

「嘘!」


俺と真鈴が口々に叫んで目を逸らせると四郎は笑いながら手入れが終わったナイフを鞘に納めた。


「あはは、冗談だ。

 われも昔ポール様に同じことを言われてからかわれたことがあるぞ。」

「なんだ~。」

「脅かさないでよ~。

 でも、まるで芸術品みたい。

 奇麗でいて凛々しい…」


真鈴がうっとりした口調で言った。


「これは抜きやすく狭いところでも取り回しやすく切れ味が鋭いし、生き物を切ってもその血液があまり浸透しないので錆びにくいのだ。

 もっとも日本刀ほどの斬撃の威力は無いがな。」

「え?鉄に血が染み込むの?」

「そうだぞ。

 サーベルでも日本刀でも、このダマスカス鋼でもどんな刃物でもどうしても細かい、非常に細かい凹凸は存在する。

 その細かい凹凸に入り込んだ血液などの有機物はどんなにふき取っても油をひいても多少は残るのだ。

 時が経てばそれが酸化して錆の原因になる。

 だから定期的に石などで研いで表面にこびりついた血液などを削り落とさないとならないのだ。

 われがポール様から最初に教わったのはそういう、刃を研いだり刀身を止めている鉸めを締めなおしたりと道具の手入れだったな。」

「なるほど、手入れって重要なのね。」

「そうだな、命を預ける物だからな。

 ところでスタンガンを使う時もそうだが、やはりナイフでの近接戦闘術が基本に無いとうまく使えない物だ。

 そこで彩斗と真鈴の訓練の第一歩はこのナイフでの戦闘術を叩き込むつもりだ。

 大事に扱えよ。」


そう言って四郎は俺と真鈴の前にダマスカス鋼のナイフを一本づつ置いた。


「え?これ、持っていても良いの?」

「四郎、本当に?」


真鈴が嬉しそうな表情を浮かべながらもこわごわとナイフを手に取り細部を見た後、ナイフを抜いて、見ようによっては非常に美しい刀身に見入った。

俺もナイフを手に取って柄の握りの感触を確かめて抜いてみた。

照明に反射したダマスカス鋼の刃が怪しげに輝いていた。


「大事に扱ってくれ。

 それと、今はまだ普段持ち歩かないように。

 友達に見せてもいかんぞ。

 そして、ナイフ術の基本中の基本は自分及び仲間を切らない事だ。

 乱戦で自分を切ったり味方から切りつけられてもかなわないからな。

 さ、ナイフを鞘にしまえ。」


人間は不思議な生き物で戦う事が決まって武器が与えられると、とても気分が高揚する事だ。

入隊した新兵が初めて銃を手渡された時の高揚感と言うのか、真鈴は、そしておそらく俺も顔が紅潮していたと思う。

紅潮する顔をして鞘に納めたダマスカス鋼のナイフを撫でていた。


「ナイフだけじゃない。

 ナイフは手始めで基本の戦術だ。

 素手の格闘戦も同時に覚えてもらうぞ。

 そのうちサーベル、槍、弓矢、事情が許せばピストルやライフルの使い方も教えるから気を抜くなよ。」

「判った四郎。

 よろしくお願いするよ。」

「私も判った。

 気合を入れて頑張るわ!」


俺達を見て四郎はにやりとしてコーヒーを飲み、エコーシガーに火を点けた。


「待って。

 四郎はこれを私達に渡して、自分はどうするの?」

「棺にはまだまだ武器はある。

 今日思ったのだが熊や狼などの野獣形態の悪鬼と効率良く戦うにはもう少し斬撃の破壊力もしくは打撃力のある武器を持つべきだと思ったのだ。

 日本刀の大太刀ならば理想的なのだが…今日それを持っていれば奴に後れを取らなかったかも知れん。

 だが、日本刀を常に持ち歩く訳にも行かないだろうからな。

 われだから2本同時にそのナイフを扱えたが君らにはまだまだ無理だと思う。

 だから、ナイフ1本の戦い方を学んで頃合いを見計らってその後を考えよう。

 今は最低限自分の身を守る事が出来るようにしてもらいたいのだ。

 われは別に使いやすく破壊力が有るものを選ぶよ。」

「うん、判った…ところで四郎。

 このナイフってさ、何か名前って付いて無いの?その…」


そこまで言ってから真鈴は顔を赤くして下を向きもじもじした。


「名前?」

「…うん、よく武器には名前が付いてるじゃない…エクスカリバーとか…青龍の剣…とか…破邪の魔剣…ロンギヌスの槍とか…」


…うわぁあああ!こいつ、この処女の乙女は中二病だ中二病だ中二病だぁ!眼帯したり包帯巻いたり服もゴスロリとかじゃないけどその中身は正真正銘の中二病だぁああああ!俺の仲間に中二病がいるぅうううう!

俺はこわばった顔で真鈴を見つめた。


「…もしも…名前が無かったら私…なんか名前を…」

「ああ、名前かそれぞれの武器には全部固有の名前は付いているぞ。」


事も無げに四郎が答えた。


…ぇえええええ!こいつも中二病!?吸血鬼でフルネームがマイケル・四郎衛門とかで160年も前に生きていたのに!なのにこいつも中二病なの~!?そう言えばこいつ自分の事、われはとか言うけど微妙に中二病っぽいよね〜!


俺はテーブルに着いた肘をずらせてずっこけてしまった。


「彩斗、どうかしたか?」

「い、いや別に…」

「そのナイフの柄の端を見て見ろ。

 小さく名前を彫りつけてあるぞ。

 武器庫からそれぞれの武器を出す時に名前が付いていると便利だと、ポール様が全ての武器に名前を付けておいたのだ。」


「ええ!ポールさんも中二病!?」

「彩斗!失礼な事言ってんじゃないよ!

 確かにずらっと並んだ武器にそれぞれ名前が付いていれば便利じゃない!

 合理的よ!」

「まぁナイフの柄を見てみるがよい。」


言われた通りダマスカス鋼のナイフの柄の先の方を見ると俺の物にはkittenと、真鈴の物にはSmall sparrowと彫ってあった。


「キティン?」

「彩斗、それはキトゥンと読むな。

 子猫と言う意味だ。

 真鈴のはスモールスプゥロー、まぁ、小雀と言う意味だ。」

「私、子猫がいい~!」


真鈴がふくれっ面をして俺の子猫ナイフを見た。


「はいはい、どうぞ~。」


俺は何となく子猫と名が付いた方が良いかな?と思ったが、中二病真鈴の視線には叶わなかった。

真鈴は子猫ナイフを受け取りキャ~と声を出して胸に抱え、俺の前にほらよっと小雀ナイフを置いた。

そのやり取りを四郎はニヤニヤしながら見ていた。


「まぁ、名前が付いていると愛着がわくだろうし、大事に手入れしそうだしな。」


真鈴はじっとキティナイフを見ていたが急に立ち上がりゲストルームに行った。

何事かと真鈴の行方を見た俺と四郎。

真鈴はファブリーズを持って帰ってくるとボトルの注意書きをよく読んだ。


「これ、皮革製品でも大丈夫だってさ。

 悪鬼の血の染みとかついてるんでしょ?

 一応消毒しなきゃね。」


そして子猫ナイフの柄や鞘にスプレーし始めた。

呆気に取られてそれを見ている俺に真鈴が言った。


「彩斗の小雀も消毒しておくわ、はい、出して。

 よく考えたら四郎の武器は一応全部消毒しないとね。」







続く




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