47話 告白に次ぐ告白
「俺も混血だからな」
不意に強い風がふき、アーミオンの緑の髪を揺らした。髪色と同じ彼の緑の瞳がいつもより少し暗く感じた。
突然のアーミオンの告白にあかりばかりが動揺していた。
「で、でもアーミオン、角とか生えてないよ?」
「混血のやつ、みんながカイみたいに身体的特徴を持つわけではないんだ。むしろ見た目は人間と見分けがつかない者の方が今は多い。そういう者はまわりに自分が混血だとわざわざ告げたりしない。差別も多いからな」
「そうなんだ……
ひょっとしてアーミオンもレードル村に住んでたの?」
「ああ、レードル村の孤児院で育った。レードル村は親切なやつも多かったが、とにかくみんな貧しかった。混血の者にはまともな仕事もないからな……当然、孤児院もお金がなく貧しいものだった。1日に1食が普通で、それに耐えきれなくなって近隣の街まで行って盗みを働いたりもした」
「………」
想像さえしていなかったアーミオンの過去に言葉を失う。
「そんな時だった師匠に出会ったのは。街で盗みを働くようなどうしようもない俺に手を差しのべてくれた。俺は運が良かったんだ。本来なら城の魔術師になれるような身分じゃない。師匠のお陰で今の自分がある」
師匠――ノーサイトの話をする時だけ、アーミオンの雰囲気が少し柔らかくなった。アーミオンにとって彼がどれだけ大きな存在だったかがわかるようだった。
ガサガサガサ
急に草木が擦れる音がして2人が身構えていると、そこに現れたのはイブランクだった。
「っあかり様!!」
イブランクはあかりの顔を見るなり、すぐに駆け寄ってきてあかりを抱き締めた。
「!?!?」
「無事だったのですね!よかった」
抱き締める腕にぎゅっと力がこもる。
(近い近い近い)
突然の抱擁に心拍数が急上昇する。
イブランクの息が少しあがっていた。連れ去られたあかりを心配してずっと探してくれていたのかもしれない。
トクトクトクトク
規則正しく速い心音があかりの耳に届く。
ぎゅっとされたことであかりの顔が完全にイブランクの胸に埋まっていて、耳に届いているのがどちらの心音かわからない。顔がみるみる熱くなっていく。
「どこにもお怪我はありませ―――」
体を離して、あかりを改めて見たイブランクが突然何かを凝視して固まってしまった。
視線はあかりの胸元のあたり。
「きゃっ」
イブランクが抱き締めた拍子に、借りて羽織っていたローブが少しずれ、不運なことにあかりの胸が丸見えになっていたのだ。
イブランクに貧相な胸を見られてしまった―――
アーミオンに見られたときとは比べ物にならないくらいのショックと羞恥であかりはその場にしゃがみこむ。
「!?!? すすすすみません!」
イブランクは慌ててあかりから視線を外した。顔が真っ赤になっている。
「……お前、ばっちり見てたな」
アーミオンが咎めるようにじとーっとイブランクを睨んだ。
「いや、えっと、すみません……」
片手を口にあてて訳がわからず混乱するイブランク。
ショックでしゃがみこんだままのあかり。
何が気に入らないのかイブランクを睨むアーミオン。
気まずい空気が3人の間に流れていた。
◇
「あかり、本当なの!?女の子だったって!」
エミリーがアーミオンの治療を終えて、慌てた様子で部屋に入ってきた。
ここは廃村から一番近くにある街の建物で、騎士団が怪我人の治療のために一時借りていた。
部屋にエミリーとアーミオンが入ると、そこにはすでにあかり、オーウェン、イブランク、ペテロが集まっていた。
「ああ、嘘じゃないぜ。かなーり小さいが胸もあった。な、イブランク」
あかりが返事をする前にアーミオンがさらりと答える。
「え、いや、それは…」
アーミオンの微妙すぎる問いかけにイブランクは明らかに動揺し、目が泳いでいる。
(アーミオンめ、余計なことを!許すまじっ)
「ペテロ殿、これはどういうことです?」
「……言い伝えには救世主の性別はありません。女性であっても不思議はありませんよ」
オーウェンの言葉にやや開き直るようにペテロが答えた。
「ですが…」
「…でも逆にしっくりきたかも。だって少年にしては可愛らしいなってずっと不思議に思ってたんだ」
エミリーは少し納得したようにニコッと笑った。
「黙っててごめんなさい。実は女の子って歳でもなくて…27歳なんです…」
「は?27……ってババアじゃねーか!」
バシッ
「痛っ」
失礼発言のアーミオンをエミリーが思いっきりぶっ叩いた。
(ナイス!エミリー)
「年上…」
イブランクがぽそりと呟く。
「しかし救世主が女性というのは現実的にどうでしょう?この場合ラルフが救世主だという可能性も……」
オーウェンが少し考え込む。
「ううん、むしろそれでバランスがとれてたんだよ!」
エミリーの明るい声が部屋に響いた。
みんながエミリーに注目する。
「バランス?」
言葉の意味が理解できず、オーウェンが聞き返した。
「そう、だって私、男だから」




