5クラゲとペンギンと……
巨大水槽を通り抜けると今度は小さな魚達の展示ゾーンに入った。
「クラゲだね」
「クラゲだな」
「わたあめみたい」
「そうか?」
カニや鮫もいる中で、何故かクラゲの水槽の前で俺達は立ち止まった。
軽く見ただけでクラゲは二十匹は超えそうだ。証明で照らされているせいもあって、クラゲが夜に降る雪の様にも見えた。
ふよふよと水槽の中を漂っているクラゲは自由で、何も考えていなさそうでシンプルに羨ましいと思った。
「クラゲになりたい……」
「え、急にどうしたの!?」
「いや、自由でいいなーって」
「シ〇マルじゃないんだから」
胡桃に某人気忍者漫画のキャラクターも「雲はいいよなぁ、自由で」と言っていたのを思い出した。
意識したつもりは無かったんだが、自然と同じ考えを持っていたらしい。
もしや俺もIQ200以上の超天才か!?
いや、それはないか。あったら胡桃と腕を繋いでいるだけでどきまきしてないだろうし。
そもそもそんなにIQが高かったら、もっと別の方法も考え付いただろう。
ただ俺にはそれしか思いつかなかったし、これ以上ない言葉も思いついたと思う。
「ゆう君ゆう君」
気が付くと上目遣いの胡桃が俺のTシャツの袖を引いてきた。
何か用事でもあるのだろうか。
「次、行こ」
「ん、ああ、そうだな」
思ったよりも長い時間、クラゲ水槽の前でとどまっていたらしい。
展示ゾーンを抜けると今度はトンネルゾーンにやってきた。
ガラス張りのトンネルで、周囲には水が張り巡らされている。
その水槽の中ではペンギンが縦横無尽に優雅に泳いでいた。
「わあ!」
胡桃は毎度、子供の様なキラキラとした純粋な反応をする。
表情なんてコロコロ変わるし、それを見ているだけで楽しいのだ。
「あれ、でも他の魚も泳いでるね」
「ああ。上に“ペンギンの館”あっただろ?」
「うん」
「最近になって、生餌を始めたらしいんだよ」
「ああー!」
納得したらしい。
この泳いでいる魚はペンギンの餌なのだ。
生餌の方が身が新鮮で栄養価も高いし、こうして泳ぐことで運動にもなる。俺達もペンギンの野生の姿を見ることが出来るので一石二鳥なのだ。
きゅっ、と胡桃が組んだ腕に力が入った気がする。
柔らかくて、暖かくて、愛おしい。
放したくないし、離れたくない。
そう思って、俺も腕に力を入れた。
一瞬胡桃がビクッ、と驚いたみたいだったけど、胡桃も同じように力を入れてくれた。
お互いに温もりを感じながら、ペンギンのトンネルを進んだ。
そして、トンネルゾーンを抜けると階段になっており、地上に出る事になる。
地上では海獣などの大型の海洋生物のゾーンとなっていて、見応えのあるゾーンになっていた。
「みなさーん! こちらでは餌やり体験やってますよー!」
外に出ると眩しい日射と共に係員さんの大きな声が聞こえた。
丁度、体験の時間になっていたらしい。
この水族館では餌やりや真珠の取り出し、さらには魚の捌き方まで、子供から大人までどの世代でも楽しめる体験コーナーがあるのだ。
せっかくだし、何かやって行こう。
そう考えていると胡桃に袖を引かれた。
「ゆう君! あれ、やってみたい!」
そう言って、胡桃が指を指したのは――――。




