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3バス

 手を繋いだ俺達はバス停に向けて歩き出した。


「今日はどこに行くんだ?」

「まずは水族館かな。午前中の方が空いてるだろうし」


 この近くなら忠海水族館がある。


 バスで行ける距離な上に海に近いおかげで様々な種類の魚類を見る事が出来る。一昔前だとクリオネやペンギンの散歩などで人気になった。今はなんと行ってもジンベエザメを見る事が出来る。


 最近は全然行けてなかったので楽しみだ。


 そんな話をしているとバス停に到着した。


 すぐにバスも来たので乗り込み、空いている二人掛けの席に座った。


「座れてよかったな」

「そうだね~」


 胡桃はニコニコと嬉しそうに笑っている。


 そんなに席に座れたのが嬉しいのか? 


 いや、これは水族館が楽しみって笑顔だ。


「それにしても本当に今日はお客さん少ないな」


 車内を見渡すと平日の朝だと言うのに


「今日は雨が降る予報みたいだからね」

「へえ、そうなのか」

「ふっふっふ。雨と聞いて心配になりましたね?」


 おっ、何か始まった。


 ごそごそとカバンを漁り出した。


「なんとここに雨を防げる折り畳み傘があります! しかも今だと胡桃ちゃんと相合傘できる権利も付いてきます!」


 ジャジャーンッ、と効果音が出そうな勢いで取り出したのはシンプルなデザインの折り畳み傘だった。


 ただ、胡桃と相合傘できる権利と聞いちゃあ、黙っていられない。


「おお! それは凄い、ところでお値段は……?」

「それがなんと今ならタダ!」

「買った!」

「毎度あり!」


 くだらないやり取りだと思うかもしれないが、俺もこんなノリは胡桃としかやらないし、胡桃だって俺としかやらない。こういうバカ騒ぎも幼馴染の特権だ。


 バスが動き出す。水族館までは三十分ほどだ。


 今、こうしてバスに揺られている間も胡桃と手を繋いでいた。


 幸せを噛み締めながら窓の外を見た。


 今は海岸縁の道路を走行している。

 おかげで綺麗な海が一望できた。


「天気良いね~」

「そうだな。雨が降るなんて思えないぞ」

「あっ、ゆう君ゆう君、見て見て。ごめさんごめさん」


 そう言って胡桃が指さした場所を見るとカゴメが数羽飛んでいた。


 ちなみに“ごめさん”とは方言で“カゴメ”の事だ。


 天気が良くて、風もあまりないせいか気持ちよさそうに飛んでいた。


「胡桃は水族館っていつぶりだっけ?」

「う~ん、小学五年生くらいが最後だから、七年くらい?」

「大体俺と同じくらいだな」

「あっ、それってやっぱり修学旅行?」

「そうそう」


 俺と胡桃は小学校も同じだった。


「胡桃がはしゃぎすぎて水槽に落っこちて」

「も~! それは言わないでよ!」


 思い出しただけで笑えて来る。


 胡桃は恥ずかしいのか、ポカポカと肩を叩いていた。


「お気に入りの服が濡れちゃたって、大泣きしてたしな」

「でも、その後にゆう君が慰めてくれたでしょ?」


 胡桃がコツン、と肩に頭を乗せる。


 あの時は胡桃が泣いて、必死に泣き止ませたっけな。懐かしい。


 すると何を思ったのか、胡桃が手を握るのをやめて腕を絡ませてきた。


「胡桃?」

「あったかい」


 正直、あれが当たっていて気が気じゃなかったけど、胡桃の笑顔を見るとどうでも良くなった。


 だがどれだけ虚勢を張っても俺は所詮、男なわけでバスに揺られて水族館に着くまでの間、悶々とする時間を送るのであった。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

「胡桃ちゃん可愛い!」「こんな幼馴染が欲しい!」「続きが読みたい!」という方はブックマークや高評価、感想など作者のモチベーションアップに繋がりますので是非よろしくお願いします。

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