2待ち合わせ
昨日、胡桃から「明日予定ある?」とラインが来ていた事に驚いた。
いや、別に予定は元々、無かったからいいんだが、俺はその時間は爆睡していた。
そしてラインを開いたのは早朝だ。もしかして、日曜日の予定を聞いているのかと思ったが、送信日付が昨日だったので土曜日の予定を聞いているのだと判断した。
いや、まあ、別にいいんだけどな。俺も今日はたまたま早起きしたので待ち合わせにも間に合ったし。
そんな俺はファッションセンスが無く、つい先日に胡桃に選んでもらった服を着て駅前で胡桃を待っていた。
九時に集合と言われたので、八時には来ておいた。いや、別に胡桃とのデートが楽しみだったからではない。本当だぞ?
さて。一時間、何を過ごそうか。俺のスマホは古い機種だし、バッテリーもイカれてしまって充電の減る速度が速く、使いすぎると後で写真を撮ったりできなくなってしまう。
まあ、適当に暇を潰すか。
「うおっ、すっげぇ可愛い……!」
隣にいた男からそんな声が漏れた。
思わず俺もそちらを見ると確かに凄い美少女がいた。
うん。あれは胡桃だ。
「ゆう君!」
ほら、俺を見つけて嬉しそうに駆け寄って来るし。
今日の服装は白いワンピースというシンプルなものだったが、シンプル故に胡桃の可愛さが際立っている。うん。めっちゃ可愛い。
「めっちゃ可愛い」
「えっ!? あ、ありがとう……」
会った瞬間に思っていた事が口から漏れてしまい、動揺した胡桃が照れながら言った。
照れてる姿も可愛すぎる……。
「その、ゆう君もカッコいいよ……?」
「ありがとう」
「この前に選んだ服、着てくれたんだね」
「まあな」
俺が着て来た服を見ると、胡桃は嬉しそうに微笑んだ。
そしてそんな俺達のやり取りを見て、周りの男たちからため息が漏れた。
「ちっ、彼氏持ちかよ」
「デート誘おうと思ってたのに」
「何であんな冴えない男と……」
好き勝手言われている気がするが、胡桃の可愛さの前では全てが無だ。どうでもいいので耳から入って来た声を右から左へと流しておく。
「あれ? そのイヤリングって」
「んっ……!」
「あ、ごめん……っ」
「いや、別に私は………あぅ…」
胡桃の耳にイヤリングがしてあったのが目に入った。桜色で形はそのままの桜の花びらだった。そのイヤリングが美しすぎて、自然と手が伸びてしまった。
いくら幼馴染とは言え、流石にそれはやり過ぎた。
頬を赤く染めて目を逸らされた。嫌がられてないかな、と思ったがあの仕草は照れている時の仕草だった。
それなら、今した事に触れなければ会話を続ければ大丈夫だ。
「初めて見たな、そのイヤリング」」
「うん。お母さんが買ってくれたんだ」
「そういえば花さんは桜好きだったもんな」
花さんとは、胡桃のお母さんの事だ。
我が藤森家と胡桃の小桜家は親同士が元々の交流があって、それもあって俺と胡桃は幼馴染になる事が出来た。その過程で俺は胡桃の両親にお世話になる事もあったし、逆に胡桃がうちの両親にお世話になる事も多かった。
俺も花さんとはラインを交換する程の仲で、胡桃の誕生日会の企画の時は結託して悪巧……作戦を考えたりする。
「イヤリングも似合ってるぞ、胡桃」
「そうかな? えへへ……」
本当に似合っているので忘れずに褒めると、胡桃は嬉しそうに照れた。
ただ、こんなに人目がある場所にいて可愛い胡桃の姿を公衆の面前に見せつけるわけにはいかない。少し早めに出発としようか。
「それじゃあ、行くか」
「うんっ」
胡桃は頬を染めながら、手を差し出した。
これは……?
「ゆう君、手繋ごう?」
とんでもない爆弾発言を受けた。
「え?」
驚愕のあまり、そんな事を口にしてしまった。
確かに昔、胡桃と手を繋ぐ事は何度もあったが、中学に上がってからは一度も手を繋ぐ機会は無かった。
だが胡桃から手を差し出して来たのだ。手を繋ぐべきなのか? いや、しかし……。
そうして狼狽えていると不安そうに胡桃が下から覗いてきた。
「私と手を繋ぐの、嫌?」
うるうるとした上目遣いで言われる。
「嫌じゃないけど、でも……」
やはり胡桃と手を繋ぐというのは、照れる。
「あう……」
断られたと思い胡桃が泣き出しそうになる。
ああ、ダメだ。もう手を繋ぐ以外の選択肢はない。
覚悟を決めて、胡桃の手を握った。
小さく華奢な手で柔らかく、女の子らしい手の平だった。
「えへへ。行こっか」
「ああ」
こうして俺達のデートが始まった。
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