バジリスク討伐戦
「マスター、怒られませんか?」
「いいんだよ、ヴァリオン先生はいい人だけど、あの人に任せていたらいつまで石化解除に時間がかかるか分からない‥‥俺たちでバジリスクを狩った方がいい」
「でも勝てますかね?」
不安そうにディーネが俺に聞いてきた。
「大丈夫だ。何のための勇気の秘術だと思っているんだ? 今みたいな状況の為だろ? まず、出会った瞬間に石化を封印する。そしたらファイアーボールで両目を潰して、石化の封印を解除して毒を無効化する。後は頑張る!」
正直これしか無いだろう。ダンジョンへ向かうとダンジョンの周りには相変わらず人が集っている。その中をかき分け真ん中へ入った。
「お前、さっきのダンジョンから出てきたやつじゃないか! 何の用だ? ここは現在立ち入り禁止だ!」
俺は催眠付与をした煙幕を地面に叩きつけた。先程ヴァリオン先生の部屋にあったものを拝借した。催眠付与をした煙は周囲一体の人間を眠らせた。使用者に効くことはなくディーネは剣に戻ってもらった。
ダンジョンに入れるようになったので慎重に入った。初めて入った時よりジメジメした感じがする。以前来た大部屋の前まで来た。
「マスター先程の煙幕入り口で使わずにここで使えば良かったのでは無いでしょうか?」
あ‥‥確かに眠らせてから攻撃すれば良かったじゃないか‥‥でも、もう煙幕はない。本来の作戦通りにやるしか無い。奥からバジリスクが出てきた。以前は焦っていてよく見えなかったがよく見ると、四本脚の爬虫類のような姿をした8mくらいの魔物だった。
そして石像も周りを徘徊している。どうやらあいつは、自分が作った石像を見るのが好きなようだ。悪趣味な奴‥‥
バジリスクが後ろを向いた瞬間に俺は大部屋に侵入した。
『勇気の秘術』
バジリスクの石化攻撃を無効化した。その瞬間バジリスクがこちらをグリンと振り向いた。音に敏感なようだ、想像以上に難易度が高い戦いになりそうだ。
『アイスアロー』『ファイアーバレット!』
まずバジリスクの足を4本の氷の弓で凍らせ動きを止めた。そしてその目に向かい散弾のような火の銃弾を浴びせる。バジリスクの片目に直撃しバジリスクは大きく体を仰け反らせた。
『マジックブースト!』
ディーネが俺に支援魔法を掛けてくれる。怒ったようにバジリスクがこちらに走ってきた。
『アイスアロー』
俺はバジリスクの走ってくる道を凍らせた。つるりと滑り転がる。俺は、バジリスクの元に走りもう片方の目を剣で突き刺した。
「GYAAAAOOOOO」
苦しそうに転がるバジリスクの石化封印を解き次に毒を無効化する。ディーネの方を見ると奴の毒が空気から広がったのかディーネが苦しそうにしている。俺は毒耐性を獲得した為効いてなかったが、この辺りは既に濃密な毒素で満たされているらしい。
「ディーネ、剣に戻っておけ」
俺の指示に従いディーネは剣に戻った。もう、毒は無効化している。後はただのバカでかい爬虫類を狩るだけだ。
そう思っていたが突然バジリスクの紫色の肌が更に黒くなっていく、まさに黒魔種と言った感じに‥‥
「GYAOOOOOOOOOOO」
先程までとは桁違いの速度でこちらに走ってくる。バジリスクのカミツキ攻撃をギリギリのところで避ける。先程先生から借りた指輪がなければ左手は既に奴の胃の中であっただろう。
奴の唾液が俺の顔をかすめる、とたんに掠った方の顔の動きがしびれた感じがする。
「まさか‥‥麻痺属性を持っているのか。黒魔種化した時に新しく手に入れたのか!」
「マスター剣をしっかり握っていて下さい。状態異常は私が治します」
バジリスクの噛みつきを必死に避けながらすきを見て攻撃を与えているがありえないくらい硬い。黒魔種の強さは黒錬金術の発展に比例する。この数年間でどれだけ黒錬金術が発展したっていうんだ!
『リトルアイスドラゴン』
ダンジョンの崩壊を危惧して子龍魔法をぶっ放した。これで子龍魔法を後8発しか撃てない。部屋の半分以上が氷漬けになりその中にバジリスクがいるが、まだ油断はできない。ディーネが出てくる。
「マスターやりましたか?」
ディーネが剣から出てきた。
「まだ出てくるな、なんかわからないけど氷がすごい速度で溶けているから!」
ディーネが剣に戻る僅かな時間でバジリスクは氷をすべて溶かした。
「GYAOOOOOOOOOOO」
ドシドシと音を立てこちらに走ってくるバジリスク
『アイスドラゴン!』
『アイススピア!』
子龍から氷の槍を飛ばし足を貫いた。バジリスクは思いっきり吹き飛び壁に直撃した。
後7発! 倒し方が分からない! ここが外なら龍魔法を一発本気でぶつけてやるのに‥‥打つ手がないわけではない。魔術支配で自動的に魔力を引き出して発動している龍魔法を手動で発動すればいい。そうすればダンジョンが崩落しないギリギリの威力で龍魔法を使える。
『アイスドラゴン』
『アイスボール!』
麻痺付与と破壊付与と睡眠付与を加え再び魔法を放ち、ガチガチに凍らせ魔術支配を切る。
そして今までに使った子龍魔法の感覚を再現して魔力を練る、がうまくいかない。かなり複雑な魔法だったようだ。一瞬形がそれっぽくできるがすぐに崩れる。ガクッと魔力を喪失させてしまった。
何度か繰り返しているうちにバジリスクの麻痺が解けたようだ、すぐに氷が解けていく。氷を割って怒り狂ったバジリスクが突っ込んでくる。攻撃をギリギリ避けたと思ったが右手を持っていかれた。
大量出血して意識が朦朧としている状況で最後にダメ元で子龍魔法を発動した。意識が朦朧としている状況で何故か魔術支配なしに魔法が発動する。崩落ギリギリの威力の魔力を練り火の槍を射出した。
車ほどの大きさの槍がバジリスクに当たり周囲一体に焼けた肉の匂いがする。度重なる魔法発動の失敗で手を治す魔力は残っていない。
「マスター! 今止血します!」
ディーネが俺の失った腕を抑え回復させる。だが腕は復元できないようだ。バジリスクを見ると焼けてフラフラしながらこちらに歩いてくる。もう俺は、魔力もなく出血状態で意識が朦朧としている。
突然背後から声がする。
「エルビス君! 何だこれは! 『バインド!』」
ヴァリオン先生がこちらに来た。なんで?‥‥
バインドに抵抗することができないバジリスクが動きを止めた。そして俺の刺した火の槍に焼かれ続ける。
「GYAOOO……GYA」
ドシンと言う地響きを立てバジリスクが倒れた。
「エルビス君! なんて馬鹿なことをしたんだ! 世界中に優秀な冒険者はいくらでもいたんだ! 君が右手を失ってまでやることだったのかい?」
ヴァリオン先生の説教を聞きながら意識は暗転していった。
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