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File.9

花城(はなしろ)ファミリー本拠地から十字路を2回通り、直線で10分ほどで今回の交渉相手ことスプリガンファミリー本拠地に到着した。2回目の十字路で李仁(りひと)陽琉(はる)楓月(ふづき)を待機させ、残りの交渉組…朱華(しゅか)紫雨(しぐれ)湊人(みなと)はスプリガンファミリーの案内役と顔を合わせていた。


「花城ファミリーです。本日はよろしくお願いします。」


「ようこそいらっしゃいました。ボスの元へご案内いたします。」


ボス代理の紫雨と案内役がそう挨拶を交わすと、交渉組は朱華が既に予知した未来…2階の第1客室に案内された。案内役が扉を開けると、部屋の中央で体格の立派な、見るからに頼もしそうな居丈高な体格の男性が座っていた。厳つい目をしており、いかにもマフィアのボス、というような見た目の男性は、紫雨を自分の前にある椅子に座るよう促した。その通りに座ると、紫雨は口を開いた。


「この度は交渉の場を設けていただき、誠に感謝いたします。」


「どうも。今波に乗っている花城ファミリーの交渉が知りたく、すぐに引き受けてしまったよ。では、内容は何だい?販売取引かい?」


「いえ。今回の内容は、協力要請です。我ら花城ファミリーは、今〔ブラックゾーン〕のトップに立つ藤狼(とうろう)ファミリーの打破及び壊滅を目指しています。藤狼ファミリーは〔ブラックゾーン〕全体、いえ、3分割されたこの町全域の私物化を企んでおります。それを阻止すべく、我々は藤狼ファミリー打破に協力してくれるファミリーを集めております。スプリガンファミリーは、いかがなさいますか?」


最後の1文のみ青い目を輝かせる…()()()()を使用する。スプリガンファミリーボスはほんの一瞬ガクッと体を傾けると、すぐに笑みを浮かべた。


「とても素敵な大志だと思うよ。その歳で、よくそこまで考えられるものだ。私も感心してしまうよ。」


「…嘘くさ…」


と、湊人は怪訝な顔色になりながら呟いた。後に朱華からは小声で、無線越しからは怜伊(れい)が「湊人、顔顔。」と注意し、湊人は溜息を吐きながら仕事モードの真剣な顔つきに戻った。


「だが、それは野望と言った方が正しい。〔ブラックゾーン〕に住む大半のファミリーの忠誠は藤狼ファミリーに誓っている。敵は多いのではないか?」


「これまで、〔ブラックゾーン〕に住むファミリーの5%は我らに協力をすると同盟を結んでくれています。スプリガンファミリーの忠誠は、どちらに誓いますか?」


ふむ…と小さく口にすると、スプリガンファミリーボスは花城ファミリーの資料が書かれてるであろうデータを見始めた。その隙に、紫雨は湊人に小声で聞いた。この紅茶に毒はあるか?と。湊人は紅茶を見つめると、すぐに首を横に振った。ありがとな、と感謝を込めて言うと、紫雨は紅茶を一口飲んだ。ティーカップをソーサーに置いた瞬間に、スプリガンファミリーボスは再び口を開いた。


「残念だが、我らの忠誠は揺るがない。藤狼ファミリーに背を向けることはできない。」


「…どうしてもですか?」


「ああ。物資枯渇の時期は藤狼ファミリーに救われたからね。あの恩を返すまでは、背を向けれない。」


やっぱり、そうなるか。と朱華は心の中で呟いた。朱華は、無線で楓月に指示を出した。今から10まで数えた瞬間、庭にぶっ放せ、と。楓月から了解、と受け取ると朱華は紫雨とスプリガンファミリーボスの最後の話に集中することにした。


「…そうですか。では、この瞬間をもって、我々は敵対関係を結びましょう。花城ファミリー、スプリガンファミリーの壊滅に移行する。」


「総員、花城ファミリーを壊滅の道へ誘え。」


紫雨は隣に立て掛けておいた刀を、スプリガンファミリーボスはハンドガンを互いに突き付ける。その瞬間。


ドカンッ!!


耳を聾する炸裂音が下で響いた。朱華は扉を開け、扉の前に陣取っていた2人組を一瞬で斬り伏せると、「湊人!」と呼んだ。紫雨も客室から出ると、湊人は客室に手榴弾を2つ転がした。身軽な動きで退室し、扉を閉めた瞬間。先ほどと同じような炸裂音が2回続けて鳴り響いた。部屋から出ようと走っていると、朱華の無線から楓月の声が響いた。


《ねぇボス、客室に撃つんじゃなかったの?》


「客室がまさか楓月達が待機してる所から真反対にあるとは思わないじゃん!私が見なかったのも悪いけどさー!」


《最大範囲が24時間なんだから、せめて有効活用しなさいな…まぁいいわ。不幸中の幸い、庭に人が集まったわ。李仁と陽琉がいるから安泰と言えば安泰だけど、部屋の殲滅が終わったらこっちに来てちょうだい。ちょっと多すぎるかも。》


「了解!」


目の前に立ちはだかる敵を踊りながら斬るように倒していくと、朱華は右目で未来を見た。1階の組員はほとんど庭へ、2階は残り10人前後…目の前に立ち塞がってきた敵を貫きながら、朱華は紫雨と湊人に指示を出した。


「1階の組員ははほとんど庭に行った!2階は残り8人前後だから、一旦紫雨が倒しきって!私と湊人で客室にいた5人の組員とボスを探す!」


「了解。気を付けろよ!」


「簡単に死ぬかよ。行くぞ、ボス!」


紫雨が作ってくれた道を使い、朱華と湊人は1階に降りて行った。

階段を降り、敵がいない方向の窓から2人は庭に降り立った。恐らく手榴弾に巻き込まれなかった組員やボスは下に飛び降りた可能性が高い。そう考えた朱華は、湊人と共に客室の方向へ走っていた。そろそろ客室の真下に来る所。目の前から4発ほどの銃弾が()()()()()()()()()壁や地面を貫いた。


《ボス、湊人、相手は()()()()の使い手だ。》


《空間を曲げることで、銃弾の軌道や剣先の位置を変えることができる能力です。被弾率が格段に上昇するので、細心の注意を払ってください。》


無線越しの怜伊とシスルからの助言を聞くと、また銃弾が曲がりくねりながら飛んで来た。チッと舌打ちをしながら、湊人は怜伊とシスルに聞いた。


「対処方法は?」


《壁や地面、武器、風で盾を作るのがよいかと。起爆薬の爆風で弾を落とすと1番効果的なんですが。》


「よりによって切らしてるものを…っ!」


「湊人!とりあえず、組員から優先的に潰す。最悪ボスは2人がかりか、紫雨を呼ぶ。」


了解、と湊人が言った瞬間からまた変な軌道の銃弾が飛び、2人は避ける形で相手を挟むような立ち位置になった。組員は5人、うち2人は爆発に巻き込まれた、そしてボス存命…とにかく銃弾を避けながら組員を倒そう。考えがまとまった瞬間、朱華は左手にハンドガンを、右手に刀を持って突進していった。湊人も同じく突進していったのが見え、ナイフや爆弾を持っていたのが視認できた。


「チッ、ちょこまかと…!」


組員の1人が忌々しげに呟くと、朱華に向かって刀を振りかざした。それをヒラリと避ける。もう1発来る。そう右目で見た朱華は、まず相手の右足首を蹴る。悶絶してるのを確認し、右手の刀で相手の脳天を突き刺す。返り血を浴びるのを気にせず、目の前の敵にハンドガンを3発撃つ。2発は当たったが敵はまだ立ち上がる。朱華がボスの方を見た瞬間、組員はハンドガンのトリガーに指を当てる。だが、撃てなかった。湊人の投げた猛毒付きのナイフが首に刺さり、動くことができなかったから。


「あぶね…おわっ!?」


「危ないのは君もだろう?」


ナイフで首筋ギリギリを目掛けてきたのを間一髪で避けると、湊人は回し蹴りで組員の腰骨を狙う。避けれずに地面に額を付けた組員。湊人はハンドガンでお返しと言わんばかりに首目掛けてハンドガンを放った。これで組員は終わり。あと残るは…


「…面倒臭い力を持つボスとは、すぐに終わらせようか。湊人。」


「…足引っ張んなよ、ボス。」

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