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File.12

何事もなく花城(はなしろ)ファミリー本拠地に到着した現場組の6人を見つけたのは、門番であり迎撃担当である真尋(まひろ)ではなく、開発・救護担当の京佳(このか)だった。駆け寄って行った紫雨(しぐれ)は、何で京佳が?と聞いた。


「おかえり、紫雨君。真尋ちゃんは…ちょっと、な。」


「…?まさか、残党がここにっ!?」


「あ、それはない。至って平和に終わったさ。留守番組は暇なもんでね、って、ボス!?どうしたんだい、その足!」


紫雨の後を追うように歩んできた5人を見つけた京佳は、湊人(みなと)朱華(しゅか)を背負っている原因、負傷している朱華の右足を見て驚きの声を発した。


「あー…ちょっと…やらかした?」


「何で疑問形なんだい…それに、湊人君は何で私から目を逸らすんだ?」


「…いや、別に。疲れたなぁ、て。」


「湊人、京佳に説教されるんじゃない?って私に言われてからずっとテンション低いわよね?」


楓月(ふづき)!」


湊人は楓月に吠えると、楓月はふふっと小さく笑った。京佳は目をパチクリと瞬きすると、楓月と同じく笑った。


「あははっ、そんなことかい?…まぁ、話は救護室で話すしボスと湊人君の話も聞くさ。元気な者は手洗ってくるんだぞ。近頃の夏風邪はウイルス経由らしいからな。」


「はーい!」


陽琉(はる)が笑顔で手を上げ、門をくぐり屋敷内に入っていくのを先頭に、他の面子も中に入っていった。

1階救護室で、京佳は朱華と湊人から怪我の原因を聞いた。


「スプリガンファミリーボスは()()()()っていう特殊能力の使い手だった。詳しい説明は知ってるとは思うから省くが、あいつが死に際に3点の空間を歪ませ1本のナイフで見事にグサッ、と貫いたわけだ。」


「直後に湊人がとどめを刺してくれて、物質分析で毒がないか見てくれた後に応急処置をしてくれたの。偉いよね〜湊人は!」


「撫でんな。」


湊人の頭を撫でながら笑みを浮かべる朱華の右足の包帯を取り、前後から怪我の部分を確認すると、京佳はなるほどな、と頷いた。そして、怪我の部分に手をかざすと、その部分がオレンジ色にポゥッと光を発した。数秒だけ輝いた光が消えると、貫かれた痕は見事に消えており、そこにあった、と示すような引っ掻き傷のようなものが浮かんでいた。


「怪我なく帰って来て欲しいのが1番の本音だが…まぁ、応急処置をしてくれたからそこは褒めよう。応急処置をしてくれたおかげで、ボスはそこまでの激痛にならないで済んだ。これは湊人君のおかげだぞ?」


「…どーも。」


「あはっ、照れてる!可愛いね湊人〜♪」


「童顔年下のお前には言われたくないっ!」


「はいはい、2人共(じゃ)れるならリビングに行きなさい…」


「あ、そうだった。怜伊(れい)が何かあったのか見に行かないと!行こう、湊人!京佳は?」


「私も行こうかな。湊人は擦り傷しかないし、自然に治るだろう?」


それもそうだな、と湊人は頷く。朱華は湊人の右腕と京佳の左腕を掴みながら、3人はリビングへ向かった。

玄関ホールからすぐ左目の前にあるリビングに入ると、普段とは明らかに違う光景が広がった。あの寡黙で表情が変わらない作戦指揮担当の怜伊が、笑みを浮かべながら真尋の本を横から見ているのである。理由をほぼ分かってる朱華は、怜伊の左目を隠している前髪を上げた。それに気付いた怜伊が目蓋を上げると、右目と同じ紫色ではなく、赤く染まっていた。赤い瞳が朱華の姿を捉えると、怜伊は再び笑みを浮かべた。


「おかえりぃ、ボス!怪我したんでしょ?僕が治してあげる!」


「ただいま、怜伊。もう京佳の()()()で治してくれたから平気だよ!」


「じゃあ僕が治す必要ない?」


うん、と朱華が頷くと、怜伊は「じゃあお疲れ様のぎゅー!」と言いながら朱華に抱きついた。相変わらず慣れない光景に、湊人は溜息を吐いた。


「168cm20歳が155cm15歳に抱きついてるの、側から見たらカオスっていうか怜伊が不審者に見えるよな…見た目似てないし。」


「まぁ、こればっかりは慣れだな。()()()()()()()()()()()()()()()の辛抱だぞ、湊人君。」


「慣れるかなー…」


怜伊の特殊能力、それは()()()()。怜伊本人の人格と会うことなく死んだ弟の人格を持っており、それを操ることができる力である。だが、20歳になった今でも力の制御…人格の切替は完全にはできず不安定であり、不定期に人格を戻すことができなくなってしまう。それが、今の怜伊の状態なのだ。


「京佳ぁ、怜伊の力、いつ安定するかなー?」


「いつもと同じなら、早くて1日、遅くて1週間程度だろうな。()()()()はかなり珍しい特殊能力だからな…毎回確証できる情報がなくて申し訳ない。」


「いいよいいよ。数をこなして分析する、ってのが今の状況だもんね。私の予知夢と同じだし、怜伊とはある意味似た者同士だよ。」


それならいいけど、と京佳は苦笑する。リビングにやって来た3人分のカフェオレを用意してきた李仁(りひと)は、ふと思ったことを朱華に聞いた。


「あぁ、ボス。本日は報告会を行わないのですか?」


「あー、やっちゃおっか。真尋、紙とペン取って〜怜伊はそろそろ離れて…」


「はいボス。怜伊〜、こっちおいで!ボスの邪魔になっちゃうよぉ?」


「ボスの迷惑は嫌だ…そっち行く!」


真尋から紙とペンを受け取り、怜伊を真尋の方へ行かせた朱華は、テレビの画面にシスルを呼び、こう宣言した。


「じゃっ、恒例の報告会を始めようか!」

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