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File.10

朱華(しゅか)湊人(みなと)がスプリガンファミリーに挑もうとする20分ほど前。庭にロケットランチャーを放った張本人、楓月(ふづき)達3人が庭で戦っていた。十字路からは李仁(りひと)()()()()()のおかげで一瞬で辿り着き、本拠地へ行く手間という名の疲労は微塵もない状態で戦うことができていた。ほんのちょっと前に上から爆発音が聞こえた為、恐らく上から降りてきた大勢の組員を楓月達は相手にしていた。戦闘経験豊富な特攻担当の李仁、一撃必殺の近接技を得意としている陽琉(はる)。そんな2人がいるおかげで、素早く動くのに自信がない楓月は安心して戦っているのだが、やはり人が多いのもあって動きづらい。どこか登れる場所…と辺りを見回すと、お誂え向きに植えられた大木を見つけた。首や腰、足などを的確に狙いながら倒していく陽琉に、楓月は無線を繋げた。


「陽琉、ちょっといい?」


《はーい!どうしたの?》


「ちょっと、私のいる所から敷地内にある大木の上に鎖伸ばしてくれない?人が多くて動きづらい…」


《了解!えーと…あ、そこだね!まっかせてー!今鎖繋げるから、ビックリしないでね?》


そう言った直後には、楓月の腰に銀色の鎖が巻き付いていた。鎖は素早く楓月を大木の上に移動させると、粒子のようになって消え去った。後でお菓子でも作ってあげようかしら、と考えながら楓月は2丁のハンドガンで真下の敵を撃っていった。リロードを感じさせないほどの素早い連射に立ち向かうことができない敵は次々と倒れていき、気が付けば楓月の真下の敵はほとんど倒れていた。本当はそんなに多くなかったのかしら?と首を傾げ、リロードをしながら楓月は陽琉達の援護をしようとした。


「楓月様、もう殲滅が終わったそうですよ。」


「さっすがお姉ちゃーん!ボク達もさっさと終わらせよー!」


李仁は刀とナイフで倒していき、陽琉は蟷螂拳(とうろうけん)と呼ばれる中国拳法を用い、素早い動きで目の前の敵を倒していった。庭に死体の山ができてきた頃。まだ生き残っている組員の5人が一斉に陽琉の元へ駆け寄ってくる。退路がないことを確認すると、陽琉はその場に頭を抱えて蹲み込んだ。好機と感じた組員が一斉にナイフを振りかざす。陽琉に当たる寸前でナイフは止まり、5人の組員の首には先が尖っている銀色の鎖が貫いていた。思いっ切り引き抜き、鎖が粒子となると陽琉はべっと舌を出した。


「あはっ、バーカ。そんな簡単にボクは死なないよ?」


「お見事です、陽琉様。」


地面に刺さっている刀を使い捨てのように用い、容易く残党を蹴散らした李仁は、陽琉に笑顔で拍手を送った。長い袖からピースサインの手を見せると、陽琉と李仁は木に座っている楓月の元へ駆け寄っていった。

一方その頃、スプリガンファミリー本拠地内では。朱華の指示で本拠地内にいる敵の殲滅を任された紫雨(しぐれ)は、二刀流の刀で相手をしていた。一撃必殺でもいいが、5人以上敵がいるとなるとそれは難しくなる。出血死でもしてくんないかな、という淡い期待を込めながら紫雨は返り血を浴びながら敵を死なない程度に斬っていた。顔やスーツに血を滲ませた1人の組員は、1人で戦い続けている紫雨に不機嫌そのものの声で叫んだ。


「なぜ、すぐに殺さない…っ!?死なない程度に斬っているだろう!?」


「あー、バレてたのか。」


「当たり前だ!そのせいで、痛いし血は出るのに死ねない!殺すならさっさと殺せ!」


「えー…じゃあ、お相子で俺のこと斬る?」


両手に持っていた刀を手放す。床にカランカランッと金属音が響く。組員は口を開けると、叫びながら紫雨に斬りかかった。が、斬る直前に紫雨の回し蹴りが首に当たり、血を吐きながら組員は倒れた。その素早い回し蹴りに残りの組員は響めく。1人がダメなら複数で、と残りの組員…7人は一斉に紫雨に斬りかかった。ヒラリヒラリと刀を交わし。1人の背中を蹴って互いに互いを攻撃させてまず2人。左右から斬りかかってきた相手の脳天を突き刺して4人目。後ろから駆け寄ってくる2人を刀で一気に貫いてこれで6人。


「…あれ?」


「ヒッ…」


刀を持って震えている名の知らない組員が、1人。これはちょうどいい、と紫雨は怯える組員に近寄り、口を開いた。


「なぁ、書庫の場所、教えてくんない?」



そして、スプリガンファミリーボスと対峙している朱華と湊人。曲がりくねりながら飛んでくる銃弾に息も絶え絶えな2人は、時間をかけずに終わらせようと同時に考えた。朱華はハンドガンのリロードを、湊人はコートの中から最後の1つである手榴弾を取り出した。スプリガンファミリーボスはハンドガンを湊人に向かって撃った。曲がらずに飛んでいった銃弾は避けた湊人の真後ろの窓ガラスを撃ち抜く。ボスがリロードした瞬間に湊人は手榴弾を彼の足元に投げ、割れた窓を使って室内に入った。朱華が素早く木の上に登り切った瞬間に手榴弾は爆発した。リロードをしてたせいで避けれなかったボスはその場に倒れており、朱華はふぅと溜息を吐いた。そして、本当に死んでる?と確認で倒れているボスの前に立った。その瞬間。朱華の右足にナイフが貫かれた。


「い、っっ…!?」


草の生えたアスファルトに鮮血が飛び散る。朱華が右足を押さえ屈んだ瞬間、湊人の猛毒が塗られたナイフがスプリガンファミリーボスの首に刺された。血を吐いたと同時にボスは息絶え、それ以上は動かなかった。はぁ、と安堵も束の間、湊人は急いで朱華の右足を見た。そして、湊人の特殊能力…()()()()で人体に有害な物質がないか確認した。全身を見る限り有害物質の文字はなく、湊人は今度こそ安堵の溜息を吐いた。


「あーっと、えーっと…あったあった、ボス、痛かったら言って。止める確証はないけど。」


「そこはあって…っ、いった…」


「そこそこ深く刺されてるっぽいな。さすがにナイフだったから貫通されて…されてるし!?チッ…あの力か?」


「多分っ…シスル、私の足が刺された時見てた?」


《はい。あのサイズのナイフで足を貫通、これは()()()()以外ありえません。刃先だけ歪曲し、的確に負傷させようとしてました。》


「だよなー…よし、完了だ。帰ったら速攻で京佳(このか)行きだな。」


朱華の貫かれた右足に包帯を巻き終えると、湊人は包帯の束を再びコートのポケットに入れた。応急処置のため、包帯からじわりと血が滲むのを見て、朱華はやらかしたなぁ…と溜息を吐いた。そして、体が宙に浮く感覚がした。


「おおう、ビックリした…」


「見事に貫通されて動けるわけないだろ。それとも、俗に言うお姫様抱っこが良かったか?」


「このままで大丈夫…」

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