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第4話 デカくて、カタくて、大きいモノ

 現状で、バルカの思い描く人型ロボット像は大きく分類するとなれば『スーパーロボット』になるだろう。

 まず、ロボットは大まかに『リアル』と『スーパー』に分けられることがある。一部、この分け方を妙に否定する者もいるが、バルカ個人としては「わかりやすくていいじゃん」といった具合である。


 さて、この分類。多くの場合、『リアル』とは全長がおよそ二十メートル以下で比較的小さく、それでいて運動性や機動性が高く、装甲は薄い、射撃武器を主体とする……というのがイメージとして多い。

 逆に『スーパー』は巨大、重装甲、圧倒的なパワー、どっちかといえば格闘戦闘が多い……というイメージを持たれる事が多い。


 もちろん、バルカ個人もこれらにはいくつもの例外があり、一口に説明できないということも重々理解しているが、そんなことは今はどうでもいい。

 自分の中での、わかりやすい分類わけでしかないのだ。

 とにかく、今、自分が作ろうと考えたのは『スーパー』という事になる。

 

「とは簡単に言うものの、荒唐無稽すぎる超絶パワー! は難しいのよね。魔法が使えるとはいえだ」


 呪文一つで小島が消滅! などと言う魔法はない。

 一応、軍隊に大きな痛手を与える規模の魔法はあるが、これらは長い詠唱を必要とするし、消費される魔力の量も尋常ではない。

 それこそ決戦兵器な扱いだ。


「ふーむ、とはいえ搭載できないわけじゃないよなぁ」


 そこで重要になってくるのが魔石と呼ばれるものだ。

 見た目はほぼ宝石で、読んで字の如く、魔力を持った石であり、この世界では広く使われている。先にも述べた通り、暖炉の火種の代わりとしても使われているし、人体魔力の代わりに魔法を行使する触媒にも使われるぐらいだ。

 矢じりや銃弾などにこの魔石を少量でも埋め込む事が出来れば、簡易エンチャントも可能となる。その分のコストは計り知れないのだが。


「魔石は一応、再利用ができる。高純度の原石のみだが、魔力の充填ができる……こいつを炉心にして城を覆う結界魔法装置もある。改めて思うが、意外とこの世界ってすごいな。なんでこれ以上の発展が緩やかなんだよ」


 インバーダン王国が栄えている理由にはこれらの魔法技術の独占も大きい。それと魔石の産出も関係しているだろう。

 木造のガレオン船でも空を飛ばす事が出来れば海路だけではなく、空路もできて、多くの交易ルートが入手できる。

 純粋に戦争でも上手を取れる。

 高純度の魔石は大出力の魔力を放出できるため、国の最も重要な王城を守る結界装置になっているし、エネルギーの流れを変えれば魔力砲にもなる、と言われている。

 しかし、実際にそれを使うことはない。まず、原石が大きすぎる。空中ガレオン船では運ぶ事は出来ても、運用は難しい。反動で吹っ飛ぶ。

 かといって、地上で重たい大砲をえんやこらと運ぶのは時間がかかる。


「なんだ、やっぱりロボットは必要じゃないか」


 その点を補えるのがバルカの考えるロボットだ。

 重装甲にする時点で、バルカは木材ではなく鉄材料を使うことを念頭に置いている。当然、普通の鉄じゃない。魔法だとかなんだとか大量に利用した魔力合金だ。


「超エリートな王国の騎士団。そのさらに先鋭部隊にのみ支給されるミスリルを使ったマジックアーマー。至近距離のマスケット銃どころか12ポンドの砲弾すら弾くんだから折り紙付きの装甲だよな。中の人はひどいことになるらしいが」


 マジックアーマーとはその名の通り、魔法技術を用いた鎧である。製造段階で、ミスリルとよばれる魔鉱石を使うことで、通常の鉄よりも軽く、強靭な鎧となる。同時に魔石の一種であるためにエンチャントも可能であることが魅力だ。

 その性能はすさまじいが、最強という程でもない。強靭な鎧は、確かにいかなる害意をも弾くが、それを身にまとう者までは守ってくれない。


「兄貴から聞いたことあるが……蒸し焼きにされて、鎧は無事だったが、中身が……ってこともあったみたいだしな」


 これらの問題はミスリルが脆弱というわけではない。単純に質量や規模の問題だ。


「装甲はこれでもいいだろうな……んで、動力も結界用の高純度の魔原石を使う……」


 城を覆う程の魔力を持つ原石なら巨大ロボットの稼働エネルギーとしては十分なはずだ。

 それにロボット自体に魔力砲の発射口を作っておけば、奥の手にもなるかもしれない。これは半分以上は願望になるのだが。


「国の威信をかけたスーパーロボットなわけだし、それぐらいは出来て欲しいよな。大量のコストがかかるだろうが……ま、兵器ってのはどれもそんなものだ、うん。それより、魔石の原石を各部に設置すれば効率はあがるんじゃないかな。これは詳しい人に聞いてみないことにはわからんが……親父に相談してみるか?」


 魔力、魔法とはいえエネルギーの話だ。素人のバルカではわからないことも多い。

 その筋の専門家に聞く方がいいのである。そして、この家は有数の名家。コネはたくさんある。

 バルカは炉心の欄に『要・相談』と付け加えた。


「さて、そろそろ機体構造も考えるべきだな。これも専門家に聞いておくのがいいが、まずは自分で考えるか。そもそも、この世界に人型ロボットって概念はないしな。ゴーレムとかはあるが」


 何を説明するにしても、例があるとやりやすい。

 バルカは絵心はないが、とりあえずの図形を考えることにした。

 ロボットに限った話ではないが、デザイン構成は重要だ。見た目だけの話ではなく、内部構造なんかも考えなくてはならない。


「といっても、この世界の技術じゃみっちり機械を詰め込むなんてできないから、大半はバカでかいブロックになるな……いや、でもそれぐらい分厚い鉄の塊ならむしろ防御力はあがるか。しかし、そうなると関節、曲げられるか? いや、別に曲げなくてもいいか?」


 もはやそこは妥協点に近い。

 分厚い腕が上下に稼働するだけでも、それらしい見た目にはなる。同じ考えで、両足も膝関節や足首、下手をすれば股関節すら動かないことになるが、プロトタイプと考えれば、まずは形を作ってみるのも悪くない。いきなり完成品ができるとは思ってもいないのだから。


「と、なると現段階の形は……」


 今、バルカの頭に描かれた暫定人型ロボットの形は前世に存在した、往年のロボット玩具に近いものだった。

 そこにある種の懐かしさを思い出しつつ、バルカは再び思案に没頭するのである。

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