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第2話 魔法があるんだからさ

 人型ロボット。なんと甘美なる響きか。

 前世の幼き頃から親しんできた憧れの頂点。たとえ転生したとしても、その魅力は色あせることなく忘れることもない。

 じゃあなんでロボット関係の道に進まなかったんだという部分を突かれると痛いが、人生そううまく行くものじゃない。

 だが、一度の人生は終わり、今は二度目である。ならば、楽しんでもいいはずだ。

 ゆえに、バルカはこの異世界なファンタジー世界で、人型ロボットを再現できないかを試したいのである。


「しかし、考える事は多いな」


 やる気に満ち溢れていたバルカだが、まずは落ち着けと自分に言い聞かせる。

 何度も言うが、思いつきでなんでもできるほど、世の中は甘くない。

 これは十三の子供が言えば何をわかった風な口をとなるが、あいにくとバルカの中身は四十三になっている。十分にそれをいうだけの資格はあった。

 ましてやロボットなんぞ作ったこともないし、前世で工学科とかに進んでいたわけでもない。天才的な頭脳があったわけでもない。

 だが、これは暇つぶしだ。うまく行かなくても、それはそれでいいのである。


「どうせ暇つぶし……とはいえ、やるんなら全力の暇つぶしにしたいよ。すぐに終わってしまうのも、勿体ない」


 という事で、まずは自分の考えを羊皮紙のノートにまとめる。

 机に置かれた羽ペンを手に取り、バルカは筆を走らせた。


「ロボットといっても、まずは技術力が話にならない。俺もそうだが、この世界の文明レベルは中世ヨーロッパと同等。違う点があるとすれば魔法という存在だが……」


 この世界の機械技術は時代相応に低い。未だ蒸気機関もなく、火薬を使った銃もやっと量産された頃合いである。

 逆になぜか魔法技術の発展はすさまじい。ポピュラーな属性魔法はもちろん、大術式を用いた大規模魔法だって存在する。

 魔法の力を付与した武器とかもあるぐらいだ。といっても、剣や矢に魔法の加護をつけて火をつけたりなどだが、それでも十分といえる。

 それに、魔法的な素材を使った武具もあるのだし、かなり希少な魔法的アイテムを使えば単独で空も飛べる!

 といっても鉄の塊の船が空を飛んでいるのではなく、木造主体のガレオン船ではあるが。


「まぁ、この時点でも凄いことなんだが……」


 なんであれ、かなりねらい目な技術なのは間違いない。

 この時点で、バルカには魔法という存在に対して過度な期待がある。

 それは空想の産物だと思っていた魔法が実在した事に対する感情でもあり、これらが存在するのであれば、同じく空想の産物でしかない巨大な人型ロボットももしかしたらという淡い願いでもあった。


「気になるとすれば、なんでここまでできるのに先に行かないのかだな」


 こんな副産物があるのに世界規模で技術は停滞している。

 大砲もあるし、大航海時代のような大型船もあるし、しかも空まで飛べる。

 正確には浮かんでいるだけで、進むための推力はまた別に用意する必要がある。

 とにかく、それだけの事が出来るのに、それ以上を必要としていないとでも言うのだろうか。

 魔法がいわゆる蒸気エネルギーなどの代わりを果たしていて、魔力を用いた動力炉のようなものは存在する。

 大がかりなものではないが、火の魔石を使った暖炉などは貴族は普通に持っており、平民でも少々お高くつくが、持てないことはない。

 それだけの事が出来るのに、である。


「別に技術の発展が禁忌というわけでもないし」


 でなければ、大砲も船も作らない。

 この国、世界の宗教がそこまで閉鎖的というわけでもない。


「まぁ、そこは置いとくか。とにかく、この世界でロボット作るなら魔法の存在は欠かせないな」 


 かなりおおざっぱで、解決しないといけない事は多いがそこを悩むのは後回しだ。

 というよりは、バルカは早く次の考えに移行したかった。アイディアというよりは、思い付きを次々と羅列していく作業が楽しかった。

 やはり自分の好きな事になると、人間は活発になる。


「さて、魔法を使うとなれば利用方法は色々……だが」


 ここで、バルカは確実にこれだけはすまいと思っていることをでかでかとノートに書きこむ。

 それは『ゴーレム禁止』というものだった。


「はい、ゴーレムをそれっぽい見た目にしました。完成。ふざけろ」


 魔法で土や岩を操り、人型として使役する。

 これらをゴーレムと呼ぶのだが、バルカはその技術はさておき、それをイコールロボットに結び付けるような真似は許さなかった。


「ゴーレムの操作技術は目を見張るものがあるが、ゴーレムはない。もちょっと神秘的なパワーが宿るのなら一考するけども」


 例えば神様などを模した石造が不思議なパワーでロボットになるというのであれば、認めるというものだ。

 が、どうやらこの世界にはそういった例もないらしい。石像などは至る所で見かけるが、それが動き出すという話は聞いたことがない。

 もし存在するなら、今頃自分は飛びついている。


「使い魔の使役ってのは重要だな。機械的な操縦が不可能なら、これを利用できる、はず。ゴーレム動かせるなら、ロボットの操縦の代わりぐらいは務まるだろうし」


 バルカはゴーレム禁止の真下にそれを付け加えた。

 もちろん、いずれはレバーだスティックだペダルだ、そんなもので動くようなものを目指したいが、現状で不可能なものは目を瞑り、代用できるものを使うしかない。


「確か、マリオネットってのがあったな……」


 ゴーレムに連想する形で、もう一つの魔法を思い出すバルカ。

 マリオネットと呼ばれるその魔法の語源は、糸を使った操り人形劇からきている。

 魔力を通した糸、もしくは魔力そのものによる思念操作で物体を自在に操る魔法だ。

 魔法ゆえに操る物体は人形だけではなく、空っぽの鎧や等身大の人形、やろうと思えば人間すらまさしく人形のように操る事が出来る。

 しかし、これらはかなり高等技術を用いた魔法であり、実際はおいそれとマスターできるものは少ない。

 かくいうバルカも手習い程度に練習はしてみたが、複雑な動きを再現するのは難しいものがあった。


「ま、これは候補の一つだな。それよりも……さて……次は一番厄介な、でも避けては通れない所だな」


 ほんの少し悩みつつも、意を決したようにバルカはノートをつづる。

 項目欄のタイトルは『利点』。

 


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