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第13話 風変りな三人

「まぁ、バルカさんは第二工場の? 私も少しだけは話に聞いていましたが、このような偶然もあるのですね」


 大人しそうに見えても、女子というものはお話が好きなのだとバルカは改めて思い知らされた。

 自己紹介ですらあたふたしていたゼタは話し出すと結構、饒舌で、時折笑顔も見せる余裕もあり、それはどことなく上流階級の空気を感じさせた。


「こちらも驚きました。いえ、なんとなく察しはついていたのですが、ゼタ嬢のバーバヤーガ樹が新造戦艦に使われているのですよね?」


 会話の中で確認が取れたことは二つ。

 ゼタが戦艦側の木材担当であり、ラーゼとは一族同士の付き合いが深い、いわゆる幼馴染であるということだ。

 二人して、各々が担当する現場の視察にきていたのだという。

 示し合わせていたわけではなく、偶然、ばったりタイミングが重なっていて、二人ともが驚いていたようだった。


「でも、よかったです。ラーゼは体が弱いので、倒れた時に私が近くにいて本当によかったわ」

「……少し休めば元に戻るわよ」


 だいぶ顔色が戻ってきたラーゼであったが、気恥ずかしいのが残っているのか態度はまだつんけんしていた。拒絶という程でもないのだが、プライドが邪魔をするのだろう。

 それでもぼそりと「感謝してる」というあたり、悪い子じゃないのはバルカも理解する所である。


「しかし、本調子とは思えないな。魔女の森に帰るにしても、大変じゃないのか? 馬車とかはあるんだよね?」

「えぇ、外に。ですけど、私たちはしばらくは王国の方に滞在するんです。もともと、そういう予定でしたので」

「別荘があるのよ」


 おしゃべり好きなゼタが答え、ラーゼがぼそりと付け加える。

 大体、そんな会話が続いていた。

 ラーゼは細かく切り分けられたフルーツを一口ほおばってから、


「例の、作ってるものの関係もあるし。私たち、一応スポンサーだし。一族の代表だから、完成までは残っておかないといけないわけ」

「えへへ、実は私たち、一族の長なんです!」


 その時だけ、ゼタはえへんと胸を張っていたが、すぐに恥ずかしくなったのか縮こまって、


「といいましても、魔女の森そのものの領主様は別にいらっしゃるんですけどね」


 魔女の森は少々特殊な内情である。インバーダン王国の統治下にあり、領地ではあるが、立場としては同盟国のような扱いを受けている。これはかつてのインバーダン王妃が魔女の森出身であったことに起因する。

 同時にインバーダンの栄光を支えてきた重要な土地でもあり、待遇は当然よくなる。

 領主を設けられるが、それは代々森を管理してきた魔女一族たちの中で、最も歴史が古いものたちが担当していた。とは言っても、一族同士の格は同等であり、いうなれば代表として表に出るのが誰かという話でもあった。


「見た所、自分と歳が変わらないのに、長として働いているのですか。凄いですね、僕は一族の末っ子ですから、その辺りはまだ悠々自適で、恥ずかしい限りですよ」

「代表なんて形ばかりよ。矢面に立たされる面倒を押し付けれるだけ。なんで私が好き好んで騒がしい外界に出ないといけないのよ……」

「もう、魔女一族も外に進出する時代なんですから。引きこもってばかりじゃ、いけません」


 もう一つ意外なのは、どうやら彼女たち、性格とは裏腹に行動力は正反対のようで、勝気そうなラーゼはどうにも引きこもり気質らしく、大人しそうなゼタの方が外へのあこがれが強いらしい。

 この辺りは当人たちの性格なのか、それとも魔女の森の気風なのかはバルカはわからなかった。


「それより、驚きといえば、バルカさんもですよ。その、陸軍の方の計画を発案されたそうですし」


 ゼタは若干、言葉を濁して話題を広げた。

 陸軍、空軍が新兵器を作っているという事実は既に広まっているが、それが具体的になんであるかは一応、秘密であった。

 とは言いつつ、空軍が作っているのは戦艦であるというのは誰もが予想できる事ではあるのだが。

 その点、陸軍は何を作るのかは、実情を知るもの以外は全く想像できていないらしく、国民の関心も強かった。


「そうですね、自分でも驚きです。思い付きがいつの間にか一大プロジェクトですから。とはいえ、これは僕の夢でもありましたから、それはそれで満足していますし、本気で取り掛かろうとしていますよ」

「ねぇ……」


 突然、ラーゼが割り込んできた。


「その、喋り方なんとかならないの? 無理してるっていうか、作ってるようで気持ち悪いんだけど」

「え?」


 その指摘はどきりとするものであった。


「ラーゼ、なんてこというの」

「だって、そうじゃない。あなた、時々、口調がおかしいわよ。どっちが本当なのか知らないけど、話しやすい方で話したらどうなのよ」

「もう! す、すみません、ラーゼが失礼なことを……!」

「いや……構わないよ」


 ぺこぺこと頭を下げるゼタに笑みを向けながら、バルカはちょっとだけ深呼吸する。


「あぁ、そうだな。うん、俺も普通に自分の口調がいい。疲れない」


 俺と発した瞬間、ゼタだけは少し驚いていたが、ラーゼは小さく笑みを浮かべていた。


「ほら、やっぱり。なにさっきの。良い子ちゃんぶってたの?」

「処世術って奴。それに、フォーマルな場所じゃ敬語は基本、礼儀でしょ? 俺、そういう所は守りたい方なの」

「ふぅん、ま、歴史と礼儀は順守するべきものだし、それはいいんじゃないかしら。だから私は古き良き、魔女の風習にのっとりたいのだけど?」

「駄目よ、新しい時代に入ったのなら、新しいものに挑戦していかないと。守るべきは守っても、不必要なものは変えていかなきゃ!」


 こういう場面でも二人の考え方は反対なようだ。


「ふるーい因習と掟ばかりに目を向けてるから、いつまでたっても魔女は暗いとか、薄気味悪いとか、変な目で見られるの。私、そういうの駄目だと思う。かつてのお后様のように外にでて、見識を広げなきゃ。そういう意味じゃ、私、ラーゼが羨ましいわ! 陸の方では全く新しいものを作ろうとしてるのでしょう?」


 ゼタは目を輝かせながら語った。


「新しいといっても、なんの役にたつかわからないでくの坊だったけど」

「ラーゼ!」

「あぁ、いいんだよ。実際、自分もあれがどれだけの効果を及ぼすのかは出来てみないとわからないし」


 ゼタの革新的な考え方はバルカにとって好ましいものだが、ラーゼのようなどことなく現実的な視点も大人という観点から見れば頷けるものだし、そういう部分を見ればラーゼの方が大人びているとも思えた。

 どちらかが劣っているというわけでもないが、この二人の見事な正反対ぶりはある意味で相性が良いのだろう。


「でも、夢は夢。実現させたいし、させる。その為に、チャンスは活かしたいし、協力してくれるというのなら誰だって受け入れる。これは暇つぶしから始めたことだが、それで終わらせるつもりはなくなったからな。俺は見てみたいんだよ。この世界で、巨人が動くその時をね?」

「大層な夢ね。付き合わされるこっちの身にもなって欲しいけど。領主様の指示と将軍の懇願がなければなぁ」

「もちろん、現実的な意見も求める所だ。むしろ、そういう視点がなきゃ、前には進めない」


 偉そうな風に言って見せるがこれは精神的には自分が年上であるという無自覚のプライドから出るものだった。

 だが、それは同時にバルカの言葉に妙な説得力を持たせるようで、少女二人はなんとなしにバルカを関心していたようだ。


「夢見がちな子供ってわけでもないのね」


 その言葉は、素直にほめてくれてるように聞こえた。


「夢を見なきゃ、現実は彩りに欠けるでしょ?」


 バルカはそれに対して、うまいこと言ったつもりになっていた。

 かっこうをつけるのも、悪くはないと思ったから。それが、精神的には年下であったとしても。

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