面倒な客のお帰りです
「じゃ、この世界のチュートリアルを始めようか。
この世界は色んな奴が流れてくる。種族は多種多様で人だけじゃなく、獣人やら魔族やら異形やら大量に流れ込んでくる。そいつらに共通するのは何かしらの強力な能力をもっているということだ。他の世界で神共の手に余る奴らが流れ込んでくる世界だと思えばいい。この世界ではレベルといった概念は存在しない。だからどんなに敵を倒しても強くは…技術とかは上がるかもだけどステータスが上がるわけじゃない。それはもう自分の能力で上げるか筋トレで上げてくれ。」
「魔王は?魔王は?」
「あー、さっき言った異世界から来てるやつの中に何人か居るんよ。」
「居場所は?居場所は?」
「待て待て落ち着け。今度は首だけにするぞ。」
「サーセン」
「解ればいい。それで魔王ってのはそれぞれに天敵である専用の勇者が居るんだよ。そいつらじゃなきゃ魔王は葬れんよ。あと普通に生活してるから手を出さないでやれ。」
「もし、この世界を滅ぼそうとしたら終わりじゃないですか?!」
「あぁ、それは大丈夫」
「え、なんで?」
「SAN値削って発狂させた後、勇者呼ぶと脅したからもうやらんでしょ。」
「うっわぁ…」
「他に質問は?」
「この世界での稼ぎ方は?」
「基本的に自給自足だけど、ギルドに納品したり、依頼をこなせば金が貰えるよ。あ、最初の10日間だけは無料でギルドの寮舎に止まらせて貰えるから。」
「あ、あと…」
「だいたい説明は終わっから、これ持って街へ行きな。街に入る前にこれを刀に巻いとけ。」
そう言ってオレナイの手元にテープとグローブを投げた。
「え、あ、うん、ありがとう!」
そういってオレナイはこの店を出ていった。
それが1時間程前の事だ。
「刀取られたぁぁぁぁぁ…」
今は店に戻ってきて泣きついてくる。
この報告で3回目だ。
泣きながらすがりついてくるのホントにウザイな。
「さっき渡したやつあったろ、刀にテープ巻いたか?」
「巻いた…」グスッ
「グローブつけて、剣を握るフリをしてみろ。」
言われるがままに手を前に出して握る様にポーズをとった。
もう少し反発して来るかと思ったが、藁にもすがる思いなのかかなり素直だな。
少し可哀想になってきた。
いや扱いやすいからずっとこのままの方がいいかもしれんが。
オレナイの手元に光が集まり、数秒ほどで彼の持っていた剣の形を作った。
「お、おぉ…おぉぉぉぉ…」
「これは、レプリカを作るとかじゃなくて巻いた奴を好きな時に手元に呼び寄せるグローブなんよ。この街そこまで治安が言い訳じゃないからな。」
「やった、やった、ありがとうございます!」
こうして彼は涙を目元に残しながらも笑顔で街へ赴いて行った。