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僕の愛した妻

作者: なぎさ

僕には愛していた妻がいた。

享年24歳。事故死だった。

君が死んでも僕は一人きりにはならなかった。

君が死ぬ前に可愛い息子と娘を遺してくれたからね。

僕はそれから、仕事と家事を両立させるため頑張った。

仕事?そりゃそれなりには大変だった。でも息子と娘のためだと思ったら苦では無かった。

君と付き合う前に入ったあの会社。僕が26の時に潰れてしまってね。

もうだめかと思った。でも娘と息子が励ましてくれた。僕が帰ると二人とも僕にお帰りって、言ってくれるんだ。まだハッキリ言葉は言えないんだけどね。

家事は本当に大変だった。君はこんな事を毎日、休まず、やってくれていたんだね。ありがとうっていう気持ちがあふれ出しそうだよ。

…それから月日が流れて息子と娘はそれぞれ小学校に入学してね。ランドセル姿の写真、仏壇に置いておいたけど見たかな。凄く可愛いだろ。なんたって自慢の子供たちだからね。

それから僕は仕事が忙しくなって中々家に帰ってこられない日が続いた。

その間娘が家事を頑張ってくれたよ。娘には感謝してる。そうそう、それで息子のほうはね、小学校から野球を始めたんだ。ユニフォームが似合ってたよ。何でもピッチャーをやるんだってさ。

それからも月日は過ぎて、息子と娘は中学生になってね。息子は部活で家に中々帰らなくて。それに息子の方は反抗期が凄くてね。この間何でお母さんがうちには居ないのかって言われてね。僕、泣いちゃったよ。君の事を思い出してね。でもそのあと息子はすぐに謝ってくれた。優しい子に育ってくれたよ。娘は段々君に似てきたよ。娘は相変わらず家事をよくやってくれてる。ありがたいことだよ。

でも、時間が経つのって凄く早いんだね。中学校に入学したと思ったら今度は高校だってさ。息子はまだ野球を続けてる。でも息子は寮に入ってね。僕は娘と家で二人きり。ああ。それでね。娘はこの間試験の結果が良かったんだ。だから娘と久しぶりに外食してね。凄く楽しかった。あと息子なんだけど、息子が高校3年生の時。甲子園に出たんだ。チームのエースピッチャーとして。僕と娘は甲子園まで見に行ってね。凄く息子は堂々としてたよ。でも息子の高校は決勝戦敗退。息子、泣いてたよ。僕も泣いた。娘も泣いた。

でも、すぐ泣き止んだ。息子が凄くやり切ったというか、清々しい顔をしてたから。嬉しかったな。あの時は。それで娘は高校卒業後就職。今や結婚して三児の母。君に似ていてとてもやさしいお母さんになったよ。息子はあの後、ドラフトで指名されて何とプロ入り。凄いだろ。流石僕たちの子だね。

息子は今や日本が誇るエースピッチャー。世界大会にも出て何と世界一を決めたんだ。日本を世界一に導いたんだよ。チームの一員として。日本人として。そして…何より君の息子として。

…最近はこんなものだね。後僕は、再婚しなかった。娘にも息子にも再婚を勧められたんだけど。君にかなう人なんかこの世には居ないさ。絶対に。それに僕は君をまだ愛しているんだ。…何だか眠くなってきたな。多分…もうすぐ君に会えるよ。待っててくれているかな。そっちにいい人が居たのなら仕方がないけどね。…………


やあ、久しぶり。元気だった?…というのはおかしいかな。いい人は居たかい?



…居ませんよ。あなたにより良い人なんてこの世にもあの世にも居ませんよ。

それに…私もあなたを愛しているから………。


「…親父、凄く幸せそうだよな。姉ちゃん。」

「うん…多分今頃お母さんと幸せに話でもしているんだと思う。」

「そうだろうな…親父、ありがとな。色々…俺…何も親孝行できなかったかもしれないけど…。」

そういえば、息子さんと娘さんに渡すようにと生前お預かりしたものがあるんですよ。はいこちらです。

「親父から?」

「お父さんから?」

……一言だけ?


「僕はいい親ではなかったかもしれないが、君たちを一生愛しているよ。」



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