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異世界契約 ― ROCKERS ―  作者: 一水 けんせい
カナルの章
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第8話 大収穫

俺は、午後からギルベルトの作業場へ行く事になった。食事を終えるとギルベルトが席を立つ。


「よし! それじゃ行くか」

「うん」

俺を見るギルベルトに答え席を立つ。するとアバナ婆さんが声をかけてきた。


「行っといでケイゴ でも無理はするんじゃないよ ギルベルト ちゃんとケイゴの事 見とくんだよ」

「ああ 大丈夫だ 心配すんなお袋 ちゃんと側に居させるよ」


こうして俺とギルベルトは家を出た。ジグザクした下り道を降りて行くと道幅が広くなり横切る街道に突き当たる。すると目の前には海が見えた。


「おお 海だ」

「おう 海だ 向こうがカナルの町だ」

ギルベルトはそう言うと、突き当たった街道沿いを左に曲がり、歩く方角を指差した。

「夜も賑やかだぞ 酒場や飯屋もあるしな ほとんどの住人が漁で稼いでる朝は高級魚の一本釣り 夜は烏賊の『フラッシュ漁』をしてる」

「フラッシュ漁? なんだか眩しそうだな ハハハ」

「ああ 大抵十人くらいで一隻に乗り込んで一人三つのフラッシュを垂らしてるもんだからそりゃ眩しいぞ」

「ギルベルトさんは漁師になろうと思わなかったの?釣竿も持ってるし好きなんだろ?」 

「随分前だが漁師してたさ ……親父が倒れて石切りに転職だハハハッ 元々、俺は好きな釣りをしたくて漁師になったんだが… 自分の思い通りにならないってのが人生ってもんだな ハッハッハッ」


(……本当そうだよな… 人生思い通りになれば どんだけ気楽だか……)


街道を曲がった辺りから歩いて五~六分くらいだろか、ギルベルトが言った。

「ついたぞ この下だ」

そう言うと、街道を右に曲がり下に下った。そこは広い敷地に休憩所だろうか、建物があり馬が数等と馬車の荷台が置いてある。


コンコンッ  コツコツコツ ゴリゴリゴリ

二~三ヶ所から石を道具で叩いたり削っているような音がする。ギルベルトは職人達の近くまで行き、何やら声をかけている。話が終わったのかギルベルトがこちらに戻ってきた。


「せっかくここまで来たんだから すぐ下の洞窟に行ってみるか? ケイゴが倒れていた場所だ」

「仕事は大丈夫かい?」

「ああ 朝一番で切った石は荷台に積んで 注文先に届けに出たから問題ない」

「じゃあ 案内してもらおうかな」

こうして俺は倒れていた場所に案内してもらう事になった。何か分かるかもしれない。この作業場を下ったところに洞窟はあるらしい。すぐそこは海だ。二~三分下ると浜辺に出た。左に行けば『カナル』の町だが、今度は町とは逆の方向に進んでいった。しばらく歩くと洞窟が見えてきた。


「リベイション フラッシュ」

ギルベルトは作業場から持ってきてたフラッシュを使い明りを灯した。途中二手に分かれる道があり右は海沿いで、すぐに洞窟は終わるらしい。左に入ると奥は行き止まりになっていると言う。ギルベルトは左に入りすぐに止まった。


大きな岩があった。その岩の下を指し人の気配を感じたという。

「あそこだよ ケイゴ あそこでお前は倒れていたんだ  うなされてとても苦しそうだったぞ」

「……」


(…ここに倒れていたのか……)


俺は、岩のすぐ側まで近づき手がかりが無いか確かめる事にした。フラッシュを借りて周りを確認する。


(……うーん 壁や天井には何も無いな)


今度は岩の裏を調べてみた。

(あった! これだ! 長島さんが言ってたとおり 指輪と同じ模様があった)

模様が確認できただけでも大収穫だ。詮索はされたくないので、誤魔化してこの場を去る事にした。


「……うーん ちょっと… 思い出せないな…… ありがとう案内してくれて」

「…そうか 何か思い出せたらよかったのにな まあ、あせるな ケイゴ」


俺達は作業場へ戻る事にした。来た道を戻り、作業場に着くとギルベルトは建物に入っていく。俺も後について中に入った。


「ケイゴはここで休んでろ 俺は少し明日の準備をしちまうから」

そう言うと表に出て馬車の荷台の方へ向かっていく。俺は椅子に座ると建物の中を見渡した。特に変わった様子は無い。普通に、工事現場にある休憩所みたいな作りをしていた。


(…さて、どうしたものか 帰りは洞窟にある模様に指輪を翳して帰れるが、それまでどうする……一ケ月はここで働きながら世話になり、旅の資金集めと情報収集に専念するか…雇ってくれるかどうかは話次第か……)


俺は立ち上がりギルベルトの元へ向かった。ギルベルトは馬車の荷台の移動をしようとしていた。結構な重さだろう。


「手伝うよ じっとしてるのも飽きちまう」

「おおケイゴ ハッハッハッ そりゃそうだな」

後ろから荷台を押し石を積む場所に移動させる。

「そこにあるコロを板の上に等間隔で置いてくれ」

一段高くなって荷台と同じ高さに板で作られているコロ道に、コロを三十センチ~四十センチ間隔に置いていく。てこの原理で大きな石を移動して荷台に載せる仕事だ。

俺は作業をしながらギルベルトに言った。


「ギルベルトさん 明日から俺も雇ってくれないか? 何から何まで世話になっている身分で…頼める義理じゃないんだが……」

「それはかまわんが……何か欲しいものでもあるのか?」

「……そういう事じゃないんだ 自分の記憶を取り戻すにしても一ヶ所で留まっているより他の町や村へ行って何か手掛かりを掴みたいんだ……」

「…そうか そりゃ自分の記憶が無くなってりゃ不安にもなるし居ても経ってもいられなくなるんだろうしな……ああ わかった 明日から一緒に働こう 俺も出来ることは協力するからな ハッハッハッ」


こうして俺は、石切りの仕事の手伝いをする事になった。

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