第12話 ボム
昼飯を食った俺とギルベルトは、馬を小屋に入れ今度は歩いて作業場へ向かった。
「どうだ 『カナル』の町は凄かったろ?」
「ああ 真っ白い建物が見えた時は息が詰まりそうになったよ 他の町もあんな感じなのか?」
「いや 一番近い『トヨスティーク』は元々鉱山都市でな『カナル』ほど洒落てない」
「鉱山都市か……」
「ここ一~二年では『トヨスティーク』が一番賑わっているがな セーブストーンが『トヨスティーク』近郊のライザー鉱山から採掘されるようになってから激変した」
話を聞いてるとあまりギルベルトは『トヨスティーク』を好きじゃないらしい。
そんな話をしてる間に作業場についた。職人達はすでに仕事をはじめてた。
「おお すまんな ちと遅れた」
ギルベルトが職人達に近づいて、そう言った。
「ギルさーん そろそろ加工する石が少なくなってきてるよ」
ゴーグルを装備し作業していたハンスが言ってきた。サバサバしてる三十歳くらいの職人だ。
「そうか んじゃ 石切るか ハンス二発いけるか?」
「ああ 予備はいつも持ってるよ じゃあ用意するか」
ハンスはそう言うと自分の馬に積んである、荷袋から土色をしたセーブストーンを二つ持ってきた。今度は少し離れていたブルーノにギルベルトが声をかけた。
「おーい ブル 石を切るから二つ用意してくれー」
ブルーノはギルベルトの二つ下の幼馴染みだ。寡黙な既婚者。
意味が分かったのか、ブルーノは手を挙げ自分の馬の方へ歩いて行きハンス同様、セーブストーンを二つ持ってきた。
「よし やるか ケイゴ休憩所から縄もってきてくれ」
「了解だ」
俺は縄を取りに休憩所に向かった。その間、ギルベルトは梯子を使い上のほうで作業をはじめた。石の上から錘のついた糸を垂らし、静止したとろで印をつけていく。次に縦長に道具を使い溝を掘っていった。横三等分にした位置に穴を造っていく。
「ケイゴ 縄をくれ」
俺は縄を上に放り投げる。ギルベルトは上の部分で石に縄を固定して俺に引っ張ってるよう指示した。
各自のセーブストーンを一つづつ預かったギルベルトは、自分の分のセーブストーンを含め計三個のセーブストーンを穴にはめた。同じく下の穴にも三個はめ、五メートルほど離れた。セーブストーンの発動距離が最長五メートルらしい。
「いくぞ! 三 二 一 リベイション ボム」
「リベイション ボム」
「リベイション ボム」
三人同時に、呪文を称えると設置したセーブストーンから爆発音がした。
ズドーン
煙をあげ、縦にスジを入れた部分に亀裂が入った。職人はさっと、その場を離れる。それを見ていた俺にギルベルトから指示が来た。
「ケイゴ! 縄を引っ張れ 石が手前に倒れたら縄をはなせ」
俺は、言われたとおり縄を引っ張った。石は手前に倒れだした。と同時に縄を緩める。
ズドドドーン!
石が倒れるといくつかに分散された。これらを加工して運搬していく訳か。昔は全て手作業でスジを入れ、鏨を使いハンマーで何箇所も楔を打ち込んでいたらしい。
「みんな怪我は無いな? 大丈夫か?」
「ああ」
「こっちも大丈夫だ 仕事に戻るぜ」
「ケイゴ ケイゴは落ちてるセーブストーンを拾って休憩所のテーブルに置いといてくれ」
俺はみんなが使ったセーブストーンを拾い集め休憩所に持っていった。セーブストーンを見ると何処も損傷がない。不思議な石だ……
テーブルにセーブストーンを置き俺も仕事の手伝いをはじめた。
「ケイゴ お茶にするから井戸の水を鍋に汲んどいてくれ」
言われるままギルベルトが朝やってたとおり水を汲んで準備した。セーブストーンは熱を発したままだった。湯が沸騰しはじめた頃、職人達も休憩所に集まってきた。
ギルベルトはボムをハンスとブルーノに二つづつ返した。返してもらったハンスは、一つだけ床に置き呪文を称えインストールした。
「あとは明日だな 帰って『フラッシュ』もインストールがあるから残しとかないと」
そう言うとハンスは、空の『ボム』とインストールした『ボム』を持ち馬の方へ歩いていった。
(電気があればもっと楽だろうな……)
俺はそんな事を思いながら、お茶を啜った。―――
「よし! 明日は休みだ あとちょっと頑張ろうー」
ギルベルトが言うとみんな立ち上がり仕事を再開した。
今日の仕事が終わり家に着く。
「おかえり」
「ただいま」
「手を洗って中へお入り ご飯できてるよ 今夜は焼き魚だよ」
「お袋 明日はケイゴ連れて買い物してくる」
「何買うんだい?」
「着替え無いとな 昼に買いそびれちまった」
「そうだねえ 着替えが無いとねえ お前のじゃ大きいだろうし あっはっはっ」
「そうだ!ケイゴ 明日買い物のついでに釣りでもするか? 釣り」
「釣りか…しばら……しばらくやってないような…やったような…」
(危ねえええええ ポロッと言いそうになっちまった……)
「おっ 何かヒントになると良いかもな 釣り ハッハッハッ」
(なんだか…ギルベルトは釣りの話するだけで楽しそうだな)
「ああ 釣りしよう 釣り!」