表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界契約 ― ROCKERS ―  作者: 一水 けんせい
カナルの章
12/66

第11話 カナル(挿絵)

俺達は頼まれた魚を買いに『カナル』へ向かった。はじめての町、どんな町なのか少しだけ胸躍らす。馬車に揺られながらそんな事を考えていた。

挿絵(By みてみん)

作業場から街道を走ること十分くらいか、『カナル』の町が見えてきた。凄い景色だ。奥の建物は真っ白で、まるで地中海に浮かぶ小島のようだ。少し行くと道をそれて海岸道を走る。すると、馬車や馬がたくさん繋がれている。スピードを緩めた俺達が乗る馬車も端に寄せ、手綱を柵に引っ掛ける。


「ここから歩くぞ 馬車は漁業関係者と町の中の商売人や業者しか入れられないんだ どうだ 凄いだろ ハッハッハッ」

確かに凄い。こんなに人が行き来し、街中の活気がここまで伝わってくる。

「ああ 凄いなカナルは…驚いたよ ハハハ」

「そうだろ ハッハッハッ さあ 飯も食わなきゃならんし さくっと買い物しちまおう おっそうだ ケイゴ 何か欲しい物はあるか?」

「いや 今のところ何も無いかな しいて言えば 着替えくらいかな」

「おっ 着替えが欲しいな 俺のじゃ合わないし あれば買ってこう」

そう言うとギルベルトは、ズンズンと町の中に入っていく。魚屋を目指しているのだろう途中、何人か声をかけてくる。ギルベルトは気さくに挨拶を返す。


「ようギルベルト! なんだ今日は? 魚か?

「おう!ジャン そうだ お袋に頼まれてな 何処行けばいい?

「今日は シグリッドのところに行け」

「ありがとうな!」

そんなやり取りをすると、話に出たシグリッドの店に向かう。その途中も何人かに声をかけられていた。


「ギルベルトさん ここの顔だな ハハ」

「ケイゴ 俺はここで働いてたんだぞ 最近は新顔もいるが 大抵 顔なじみだ」

シグリッドの店に着いた。

「おう シグリッド 魚くれ どれだ んー それ三匹に そっちの三匹だ」

「おう ギルベルト 良いやつ持って行きすぎだ! ハイ たこオマケな」

「いつも悪いな また来るからよ ハッハッハッ じゃあな!」


(ここはギルベルトの庭か?でも、誰一人 嫌な顔しないな)


「よし 次はイカ行くぞ イカ」

そう言うとイカだけがずらっと並ぶ店の集合地にきた。ここでも同じくギルベルトに声がかかる。


「ようギルベルト 調子はどうだい?」

「おっ親方! イカいいのあるぜ!」

ギルベルトは挨拶だけしてイカを見ながら通り過ぎていく。

「なあ ギルベルトさん買わないのか?」

「ケイゴ すぐ飛びつかなくても大丈夫だ ウマいイカを探してる」

目が真剣だ……。するとギルベルトはビタッと足を止めた。

「イカくれ それとそれ それとあそこの三杯な」

「あいよー さすがだなギルベルト」

店の店主だろうかニコニコしながら袋に包む

「またよろしくな ギルベルト おまけ入れといたから」

「ああ また来るよ ありがとうー」

ギルベルトは町の中心まで戻ると急に言い出した。


「ああ!やっちまった 『アイス』忘れちまった!」

なるほど、『アイス』で冷やして持って帰る算段だったのか。

「……値は張るが『蓄積屋』に頼むか 空のセーブストーン取りに行ってる時間も無いし今回はしょーがないな クー! 失敗した!」


なんだ『蓄積屋』って? それに何時もと様子が変だ随分悔しがっている。広場の一角にある漁業組合に向かうとギルベルトは受付に注文した。


「…『アイス』一つ頼む」

「はい 『アイス』だね 持ち込み?」

「いや 購入だ」

そう言うと受付のおばさんは後ろを向いて

「誰か『アイス』あるー? あれば一つお願いね 購入だよー」

すると奥から、お婆さんが出てきた。そのまま受付のおばさんの横に立ちギルベルトにこう言った。

「『アイス』一つ購入でいいね? 金貨二枚と銀貨三枚だよ」

「ああ」

ギルベルトは金貨二枚と銀貨三枚を渡すと、お婆さんは腰に巻いたポーチからインストール済みのセーブストーンを取り出し、机の上に置き呪文を称えた。


「リベイション アイス」

家で見た貯蔵庫にあった『アイス』だ。ギルベルトに聞いたシステムはこうだ。自分の手元にセーブストーンが無い場合や魔力を使った、または使う予定がある場合こうした『蓄積屋』と呼ばれる人達が、代わりに蓄積し発動させたセーブストーンを売る。効果が無くなったセーブストーンはそのまま買った人の物になる。

セーブストーンの発動はインストールした人じゃないと発動しない、という事だ。空は金貨二枚で大抵の種類のセーブストーンが買えるらしい。セーブストーンの持ち込みも可能らしく、インストール代+リベイション代だけだという。ただし、辺鄙な場所だと割り増しにしてくるらしい。

ここでは仲介料として漁業組合が銀貨一枚、インストールしリベイションしたお婆さんが銀貨二枚と空セーブストーンの代金の金貨二枚、計金貨二枚と銀貨三枚という訳だ。まっとうな商売といえばまっとうだ。仕組みが分かれば頷ける。しかし、魚を売っている場所で氷が無いって事は『蓄積屋』を利用させるために「誘導」してるんじゃないか? 上手い事やりやがる。


老いて、働き口が無くなった人にとっては助かるシステムなのも事実。お婆さんが出てきた受付の奥を覗くと老人達がニコニコお茶を啜ってた……

(…井戸端会議かよ…ハハ でもまあ、小銭稼いで孫に菓子や服買ってやったりすんだろな)


何はともあれ、『アイス』を確保した。魚を冷やし馬車に戻る。

「あ……着替え買うの忘れたな……」

「いや俺はいいよ さあ帰ろう腹減っちまったよ」

「そっか 悪いな 明日は仕事休みだ 何も無きゃ明日またこよう」

ギルベルトはそう言うと、馬車を走らせた。


家に着くと魚を貯蔵庫にしまう。 

「おや おかえり 時間かかったね」

「ただいま」

「ああ 『アイス』持っていくの忘れてな 『蓄積屋』に頼んだんだ」

「あら忘れたのかい あっはっは たまにはそういう事もあるわ」

そう言うとアバナ婆さんは食事を出してくれた。

「さあ お食べ」


俺達は飯にかぶりついた。

挿絵つけました(著作権フリーの風景写真を加工したものです)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ